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海外ビジネス コラム

商習慣 2013年11月21日

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中国から日本へ来て感じた「世界の常識、日本の常識」

范 云涛(亜細亜大学アジア・国際経営戦略研究科教授)

日中間のビジネスをお手伝いすることになった経緯

留学生として初めて京都大学に来たときは、1年で中国に戻るつもりでした。それが思わぬ縁あって、日本で学問とビジネスを頑張っているうちに、あっという間に28年が経ちました。このような人生を歩むことになった最大のきっかけは、京大時代の恩師・高坂正堯教授との出会いにあります。

私が日本に来たのは1985年。当時、日中両政府の文化交流プロジェクトとして、優秀な日本語教員日本語を全国から10名ずつ選抜し、互いの国の大学に1年間留学させる制度がありました。私は首席でそのメンバーに選ばれ、京大法学部に国費留学したのです。

最初は言葉の壁に悩みました。上海復旦大学で日本語と日本文化をみっちり学んだつもりでしたが、やはり生きた言語は違います。しかも京都弁が理解できず、たとえば酒屋でビールの小瓶を買って、店員に「おおきに」と言われたときなど、「なぜ小瓶を買ったのに『大きい』と言われるのだろうか」と首をひねるような始末でした。

それでも幸い、当時日本で著名な最高の国際政治学者として活躍していた高坂先生のゼミに入ることができました。必死で勉強し、1年間の留学期間が終わる少し前になって、先生はある日突然、優しい口調で私にこう言われました。

「君くらい日本社会を理解している人は、もう少しここに残って、日本の政治や法律、外交、行政を深く研究した方がいい。知識人が中途半端な理解のまま中国に戻って指導層になっても、両国の国益のためにならないと思うのや」

私は感激して、日本に残ることに決めました。国費留学でなくなるので金銭面の苦労はありましたが、そのまま法学部を卒業して京大法学部の大学院に進み、95年に法学博士号を取得しました。

その後は学者の道に進まず、実務家を目指しました。学生時代、京都や大阪の渉外弁護士たちからよく法廷通訳を頼まれ、親しくなるうちに、「君は研究者よりも、政治やビジネスに関連した法律の実務の方が向いている」と薦められるようになったのです。自分でも「そうかもしれない」と思い、いったん上海に戻って中国弁護士の資格を取ると、東京に移ってあさひ法律事務所(現・西村あさひ法律事務所)や東京青山法律事務所BAKER&MCKENZIEに勤め、主に日中間の投資紛争案件に携わりました。

90年代後半から2000年代にかけて、多くの日本企業が中国に進出したせいで、私のクライアントも急増しました。守秘義務があるので具体的なことは言えませんが、日中間のビジネスにおける丁々発止の交渉や、大小さまざまなトラブルの処理をこなしてきた件数は、おそらく中国弁護士の中で私が最も多いと思います。その後独立し、2005年からは亜細亜大学大学院でMBA大学院で国際経営戦略を教えています。

 

外から見た日本人の長所と弱点

日本人の正直で礼儀正しい国民性の素晴らしさは、すでに多くの人が指摘していますが、それに加えて、物事がうまく行っているときに危機意識を忘れない点も大きな長所だと思います。他の国民だとすぐに楽観的になって改善の気持ちを忘れ、躓いてしまいがちなのですが、日本人はそういうところが比較的少ない。

また、職人的なこだわりの強さも、日本人の美点でしょう。数字や技術の正確さを追求する姿勢ですね。それが、日本の底力の一つになっています。

ただ、その真面目な部分が弱点に転じてしまう場合もある。たとえば日本人は、マスコミが報じることを鵜呑みにしすぎです。新聞やテレビが「中国で激しい反日デモが起こっている」と報じると、まるで中国全土で日本人や日本企業が,木っ端みじんに

ずっと襲われ続けているかのように受け止めてしまう。しかし実際は、残念な出来事ではありましたが、中国のごく一部で短期間起こった突発事件というのが真相でした。

その点、日本人は中国人の懐疑精神を少し学ぶといいかもしれません。何しろ中国人は「新聞に書いてあることは日付以外信じない」と言われているくらいですから(笑)。

私は今後、反日デモ騒動や領土問題など、日中間の不協和音を少しでも解消して、信頼友好関係を構築することに尽力したいと思っています。法律の実務やビジネス、文化教育を通じて、両国が共に繁栄することに貢献できれば、それに勝る喜びはありません。

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范 云涛

(亜細亜大学アジア・国際経営戦略研究科教授)

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