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海外ビジネス コラム

時事 2012年09月25日

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【「尖閣問題」緊急特集】現地で肌で感じた「影響なし」。過熱報道とのギャップ

川添 英起(株式会社リバーサイドシンク)

【上海行き】

柳条湖事件から81年を迎えた9月18日の翌日である9月19日から、仕事で上海に行く予定であった私は、日本のテレビでの尖閣諸島反日報道を見て、上海入りを躊躇していました。
しかしながら、この目で現状を見てこようという気持ちもあり、スケジュール通り19日に上海に飛ぶことに決めました。

往きの9時40分成田発JAL873便は、いつもと異なり閑散としていました。
ざっと見たところで、乗客は60~70名程度。ボーイング767-300の客席数を考えると、乗機率は2割程度といったところでしょう。

不思議に思った私は、CAさんに「今日はすいていますね。尖閣問題のせいですかね?」と聞いたところ、
「そうだと思います。問題発生以降、連日キャンセルが相次ぎ、フライト当日のキャンセルが40名もあった」ということです。
日本人は中国で発生している反日行動に、多大な恐怖感を持っているのだなと感じました。

 

【本稿のテーマ】

問題の本質、尖閣諸島の領土問題については、ここでは論評をするつもりはありません。
このコラムは尖閣問題によって生じている、中国の(上海の)反日行動の状況、それらを取り巻く環境、人々の生の声などを、私なりにまとめてお伝えするつもりです。

 

【空港で】

2時間半のフライトののち、いささかいつもと違う緊張感で上海浦東空港に降り立ちました。
入管でどのような反応があるかと思い、恐る恐る窓口へ行ったところ、研修生でしょうか、上席の指導を受けながら入管手続きをする若い男性は、いつもの無愛想な係官と違い、とてもにこやかに対応してくれました。
まず一安心でした。

空港でのタクシーサービスも普段と変わりなく対応してくれました。
一部の噂によるとタクシーの中には日本人とわかると目的地まで行ってくれないタクシーもいるという話でした。
しかし、これは今の状況でなくても時々あることです。
私も何回か経験があり、タクシーの運転手と喧嘩をしたことがあります(こちらは日本語ですので喧嘩にならないのですが)。
これは私の方にも悪いところがあり、目的地の表示が不明確だったり、進入禁止の道を入れと要求していたりしたことが原因でした。
つまり、そういうことは、今回の反日が原因ではないということです。

 

【上海市内にて】

空港からタクシーでマンションまで向かう車窓から見る限りは、いつもと何も変わりなく平穏な空気でした。
浦東空港からマンションまでの道のりは、浦東地区と言う新興開発区です。
日本人が多く住み、反日デモもあった古北地区は私の住んでいるところとは、川を挟んで反対側にあり状況はわかりませんでした。

この日の午後は、いくつかの打合せがあり、市内の中心地や古北地区に近いところへ行って来ました。

市内中心地では反日の様子はほとんどなく、いつもと変わらない情景でした。

ただ、地下鉄2号線(市内を走る幹線)は、いつもなら1車両に1~2組の日本人がいて、日本語の会話が聞こえてくるのですが、さすがにまったく日本語会話は聞こえてきませんでした。
そのような中で、中山公園の地下鉄の駅には、ほとんどの壁と柱に、宮崎あおいさんが写っている大きなオリンパスの宣伝ポスターが貼ってあり、とても印象的でした。

上海市の中心にある、むかし「そごう」だった、日本製品を多く売る、「久光」というデパートの地下へ行きました。
15時ころでしたが、地下の食品売り場のレジは多くの人が並んでいました。
ここでは今回の尖閣問題の影響はなさそうです。
ただ、やたらと中国国旗を掲げている場所が多く、これも営業防衛なのかなあ、と感じました。

夕刻になり、普段は若者でにぎわう、(日本でいえば渋谷のようなところでしょうか?)中山公園というところに行きました。
最近できた人気の地下街へ行ってみました。
日本食(居酒屋風)や寿司店、日本製食品店、日本製雑貨店などの店が並ぶ地下街です。
ここでも、日本食は根強い人気で満員でした。
ほとんどのお客さんは中国人です。
尖閣問題はまったく感じられません。
ただし、古北地区の日本領事館に近い讃岐うどんがある日本料理のお店は18日まで休業していて、19日に再開しましたが、ガラスには破損散逸防止シートが張られたままの営業です。

上海市内のその他の状況では、一部日本の報道で、上海市内で日本人が殴られたとか蹴られたとありましたが、地元の情報通に聞くと日本人がキャバクラ帰りに喧嘩をしたのだということで、喧嘩の原因は尖閣問題であったにせよ、あまり政治色の強いものではなかったように思えます(ちなみに、上海人は喧嘩をしても絶対先に手を出さないと聞いています)。

 

【インタヴュー】

上海在住の何人かの方に状況を聞いてみました。

1. 最近上海に設立された内装工事会社の日本人駐在員の方
あまり反日の雰囲気は感じていない。
ただ、一部暴動も報道されているので、気にはなっている。

2. 日本製品の輸入販売、化粧品の許認可代行をやっている中国人の方
日本からのウコンドリンクの通関が止まっている。尖閣問題の影響だ。
(しかしよく聞いてみると、SFDAという食品医薬品衛生許可が未取得で止められているというのが原因らしい)
10月から日本製醤油の輸入を始めるが、売れ行きが心配。
中国政府は、今回は強硬だ。
日中戦争が起きたらどうしよう。
とにかく早く収束してほしい。

3.  中国在住の商業物件サブリース業の日本人
18日までの中国政府の対応と異なってきた。もう大丈夫だと思う。
中国国内の不満を反日に向けているのではないか?
2005年の反日活動と同じ。一過性のもので大勢に影響はない。

4. 日本人内装工事会社社長
古北地区は日本人が多いから注意が必要、大体おさまってきているが、一部これに乗じた悪い連中が動いている。

5.日本に帰化した上海在住の会社社長
(同人とは10月16日に私が主催するビジネスマッチングプレゼン会の運営パートナー⇒開催を延期するか相談)
まったく問題ない、今回の尖閣問題は一過性のもので中日の関係は悪化しない。
特に経済関係、民間のビジネス関係はまだまだ発展するので、躊躇なく開催するべき。

6. 知り合いの中国人女性
どうして日本は尖閣諸島がほしいのか?魚がたくさん取れるからか?
戦争になったらどうしよう?

 

【所感】

上海を見る限り、今回の問題はさほど大きな影響をもたらしてはいないと思われます。
しかしながら、長沙での平和堂襲撃、蘇州でのパナソニック工場襲撃など、中国国内各地で過激な反日行動が起きているのは事実です。

日本人がどのようにこれに対応していけばよいのか? ……やはり自分の身は自分で守るしかないのではないでしょうか? 多くの日本人経営者はその努力をしています。

中国で長年行われてきた反日教育が、いわば中国の規範とされ、表面的には反日が一つの常識となっています。
そして中国人民は、中国政府が本気であり真剣であると考えています。
だから本当に日中戦争が起きるかもしれないと考えているようです。
尖閣問題でいえば歴史上の事実や経緯などは関係なく、日本が主張すること自体が中国政府の主張にそぐわないと考えているようです。

しかしながら、日常では(本音では)反日で、本気で日本と喧嘩をしたいと考えている人は少ないのだと思います。
また、考える以上に、日常的にも、ビジネスでも、経済上でも日本との関係は深いものだと感じているようです。

日本側も中国側もほとんどの人が、関係改善を望んでいるように思えます。

両国がどのようにして歩み寄り、問題解決していくのか、見守っていく必要があるように思います。

このコラムの著者

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川添 英起

(株式会社リバーサイドシンク)

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