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海外ビジネス コラム

市場動向 2013年04月16日

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ベトナム進出成功のために知っておきたい現地情報! 「ベトナムにモダントレードは必要か?」

吉田 雅之(株式会社マックアンドサンク)

情報戦を制するもの、買い物に勝つ

サイゴンの街中、何処にでもよく見られる風景

幅2m弱の歩道が、毎朝ちょっとした市場となります。売られているものは、野菜・果物・魚・肉といった食材から日用雑貨・洋服まで様々で、毎日の買物に不自由はしません。

どの店にも正札は無く、高い、安い、の値段交渉があった後、買う客もいれば他の店を覗きに行く客もいます。これが毎日朝から晩まで繰り返されます。

売る側は毎日同じ場所に店を広げ、買う側も毎日同じような品物を買いに来ているにもかかわらず、毎日高い、安い、の一悶着。なぜでしょう? それは、「毎日同じ値段とは限らないから」です。

食材以外でも仕入先の価格は、需給バランスにより毎日のように変わるため売値も変わります。

店に立つ人も毎日同じとは限りません。いつものお母さんに用事があれば、親戚の娘に入れ替わり、普段仕入に専念しているお父さんも売子として店に立ちます。

同じ場所の同じ店、同じ品物でも微妙に値段が違うことはよくあるため、毎日のように同じ問答が繰り返され、サイゴンの日々の暮らしが進んでいきます。

「なんと面倒くさい」「なんと非効率な」と思う方も沢山いるでしょう。お店の人と会話を交わすことなく、レジで決められた価格を支払うという日本での生活からはほど遠いため、ベトナムの暮らしに馴れない人にとって、ここでの買物は簡単ではなく、しばしば「ぼられた!」という言葉を耳にします。

確かに事情の分からない外国人だと見ると法外な値段をふっかけてボロ儲けを企む卑しい性根の商売人もいますが、その一方で多くの商売人達は、たとえ店は路上の敷物一枚の上であろうと、矜持と誇りを忘れてはいません。

そうは言っても毎日の買物に値段の交渉を一つずつしなければならないのはストレスのもと。だからこの国の女性達は、顔を合わせれば色々な品物の値段の情報を飽くことなく話しあっています。曰く、あそこのエビは安いけれど新鮮さではここの店のほうが良い、あそこの肉屋で売っていた豚肉はどうも中国からの輸入品らしい、時間のある限り買物情報の交換。しかし、その情報なしでは売手との交渉は不可能、情報戦を制するもの戦いに勝つ、これが世の習いとなっています。

 

発展するモダントレードと昔ながらの路上店舗

そんなベトナムにも今では外資のモダントレード、地場のモダントレードが次々と新規出店を重ね、コンビニも都市部では当り前になってきました。独・仏・韓国・マレーシア、そして日本と小売業のベトナム進出は花盛り。

METRO Cash & Carry, Big C, Lotte Mart, Parkson, Aeon, Family Mart, ごく普通の人が毎日、日用品、食材を求めて店内はかなり賑わっています。

ベトナムでは、地場小売、伝統的な市場、家族経営のパパママショップが小売業の主体で、流通在庫のないこの国では売る場所がそのまま倉庫であり事務所であり会社です。後方の体制と現場である店舗という図式がないため、進出する外資は大手小売業として仕入先開発・物流組織・在庫管理システム・品質管理・従業員教育などの体制を全て自前で作り上げる事が必要となります。

モダントレードといわれる業態は、店の背景や後方に膨大な量と質の仕事を併せ持ち、関係する全てが一つの店を支えているからこそ、買う側は品物の安全性や品質を信じ、安心して店が提示する価格を疑うこと無く、満足して買っていくこととなります。

さて、毎日買い物をする人達は何を決め手に売手にお金を払うのでしょう?

値段の安さ・品質の良さ・安心感・家から近い・店が清潔・売手をよく知っている・店の歴史が永い・アフター・サービス・売り子が美人で愛想が良く親切、等々。

それぞれの理由から決めているはずですが、そこにあるのは自分のお金を払い、品物を手にしたことで得られる充足感や満足感。売手の顔と仕事の中身がよく見えれば見えるほど、自分の決定に自信が持つことができ満足できるのではないでしょうか。

メコン・デルタに住む親戚が育てたジャック・フルーツは、毎朝、サイゴンに来るバスに載せられ、昼前に近くのバスターミナルに到着、おばさんはそれをセ・オム(人力車)に乗せて通りまで運び、皮を剥き、道を通る人たちに売りさばきます。収穫から販売まで全ておばさんの手の内で成り立っています。

同じく、エビを金盥(かなだらい)の中で売りさばくおばさん。生まれ故郷の海辺で捕れたエビはトラックの荷台に据えられたドラム缶の中で酸素を与えられながら生きたままこの通りまでやってきます。生産から販売まで全て自前の商売です。

この国の小売で生きる人達の商売のほとんどは似たり寄ったりの体制で、旧正月の休み以外年中無休、毎日毎日狭い商圏の人達の身の周りに欠かせない品物を提供し続けています。買う人達は売手のそんな背景、事情を毎日の買物の中の会話で解き明かしながら相手を信用してお金を払い品物を手に入れていきます。売手は自分が扱う品物の価格と品質に自信を持ち、もし何か問題が起これば全ての責任を取る覚悟で毎日決まった道路傍に店を広げています。

 

ハイブリッドな形で盛り上がっていくであろうベトナム小売市場

モダントレードが、その大規模な組織と豊富な経験から、良質の品物を安い価格で、衛生的で魅力的な店舗環境とともにベトナム全土に拡がって行くことにより、消費者が得る利益は計り知れないことでしょう。しかし、同時にこのベトナムの小売のおばさんたちが提供している、魅力的な「顔」のハッキリと見える商いの持つ楽しさと価値も残っていくものと確信しています。モダントレードが発展しようとも、売り手と買い手が顔を合わせ、直接に触れ合い、言葉を交わす小売という商売が如何に重要であるか、本当はベトナム人が一番よく理解しているのではないでしょうか。

毎日、朝早くから道の傍らにビニール・シート一枚のお店を拡げるおばちゃんたち、今日も元気で沢山売れますように!

このコラムの著者

吉田 雅之

吉田 雅之

(株式会社マックアンドサンク)

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