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海外ビジネス コラム

市場動向 2015年09月16日

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アセアンの中心地・タイにおける和食ビジネス その1

水野 聡子(Infinitie Wings BP(Thailand)Co., Ltd)

もともと親日国であるタイには以前から和食店はいくつかあった。ただほとんどが在住日本人向けの価格高め設定店、またはローカル向けのいわゆる「なんちゃって和食店」の二極化した状態であった。

しかし、10年ほど前からの政府間経済協定によって、関税をはじめとする様々な規制緩和が行われた。そして、2013年からの短期訪日ビザ免除により日本を訪れ和食の良い点に接し、タイ人も「本物の和食を食べたい、和食の良い点を日常生活に取り入れたい」という要望が高まったこと、また、日本企業としては国内の少子高齢化で海外へ市場を求めようとする潮流、このほか複数の要因を背景にして現在バンコクには様々な工夫を凝らした多様な和食店が豊富にできている。そこで、そうした事例をいくつか取り上げ、バンコクにおける飲食ビジネスおよび食材ビジネスのチャンスを探りたい。

和食店経営者に聞く、飲食ビジネスおよび食材ビジネスのチャンス

多様な和食店とは言ってみれば競合が非常に多いともいえる環境だ。和食店経営者は常に「いつ使ってもらう、誰に使ってもらう、何を楽しんでもらう、どういう風に維持運営する」を意識している。2015年現在の人気店を訪問し、長年の人気の秘訣と進出する際に考えておきたいこと、そして店舗運営上重要事項の一つである食材の調達について聞いてみた。第一回は『黒田レストラン』を取り上げる。

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タイで和食食べ放題文化を築いた田中社長


本店だけでも600席以上ある大規模和食店

「元々は養鶏場から始まった会社だ」と喜寿を超えてもなお、農場とレストランの現場で采配を振るう田中社長。和食がブームになるずっと以前からタイ人向けにきちんとした和食を提供し「タイの和食食べ放題文化の元祖」ともいうべきこの黒田レストランは現在農場も含めタイ国内で7拠点で活動している。

現在の客層について

95%がタイ人、普通の勤め人から某政府高官とその家族まで、長年和食を提供しているので客層は幅広い。一人499バーツの食べ放題というのは好きなものがおなか一杯食べれるという満足感の上にあとでお勘定を見て冷や汗、ということがない安心感で支持されていると思われる。

現在の食材、飲料などの手配について

価格で勝負、かつ回転はとても速いので食材はほぼタイ国内での手配。鶏肉、豚肉、牛肉は自社農場で育てたものを提供している。飲料は食べ放題料金込みの緑茶のほかに、別料金でビール、日本酒、焼酎などがある。日本酒は輸入物を取り入れているがビールはタイ国内で作っている日系タイ系メーカーを採用。
食材および飲料に関しては自分でも展示会へ足を運んだり新しい卸商が営業に来たときに見本を食べたり調理したりして積極的に取り入れている。

特に人気のメニューについて

当社ファームで育てた鶏肉は、おいしいと評判で非常によく出ている。広く受け入れられる理由には、自分自身が日本で養鶏を専門として働いていたこと、日本と違いしっかり運動する場を与えられる農場設計が可能なことがバックグランドにある。そしてさらに、タイ人は古来から鶏を日常食としていたこと、鶏肉への親しみがあり味に敏感だったことなどその理由は多岐にわたる。
もう一つ、15年ほど前にタイ全土が鳥インフルエンザにみまわれ、日本向け鶏肉輸出停止などの措置が取られた時も当社の農場では病気は全く発生しなかった。時の首相の秘書がバンコクからヘリコプターで視察に来たほどで、その際はこのことが報道されさえした。おかしなもので、この病気が流行り視察の姿が報道されたことで、当社の専門性や育成上での健全性などが認知され「黒田の鳥は安全安心でおいしい」とさらに来客数が増加した。


自社農場で育てた鶏の炭火焼

バンコクで和食店を展開するにあたって必要なことについて

当社の場合、農場開始が先で、そこで育てたものを販売するパイロット店として和食を始めた、という経緯がある。そしてその鶏肉は和食店開始後20年以上たった今も「黒田の鶏はおいしい」と多くの人に支持され店も回転している。
現在確かに多くの和食店がバンコクにあるが、何がポイントか、どこで差別化できているのかが見えてこない。どこにでもある似たようなお店、今バンコクでは和食がブームなのでとにかく出店、とせず自分たちの強みや差別化できるポイントをきちんと考査することが、内装やスタッフ雇用よりも大事なのではないか。

バンコクで和食店向けに食材ビジネスを展開する上でのアドバイス

経営者からすると「それを採用してどれだけ利益になるか」は重要事項の一つ。
食材だと、たとえば新鮮な日本産の刺身や寿司を売りにする和食店向けの営業トークとして、鮮度を保つハイテク運輸法などを売りにすることが多いようだ。しかしそれで利が出るかどうかは店それぞれ、経営者それぞれ。そのことだけに頼らず、並行してほかの提案もしないとなかなか厳しいのではないか。

輸入飲料だと、最近の規制緩和で輸入代理店が増えたのは確かだが、販売担当者がその商品を飲んだことがない、その商品のバックグランドを把握していない、説明ができない、ということが非常に多い。買う立場からすると、こちらも困るのでまずは社員へのトレーニングを施すのも大事だ。こうなると利益考査以前の問題。「とにかく売ってこい」ではない指導が必要だろう。

タイでビジネスをされたい方へメッセージ

20年以上経営する中で政治動乱や経済不況などが起きた際も、タイ人がメイン客層であればその時多少客足は落ちるががっくり減るとまではいかない。和食だと最初から「在住日本人がターゲット」という店も多いが日本人は政治動乱や経済不況の時には接待や外出を控えるように言われるため、目に見えて売上に響く。海外へ出てきたのであれば「在外日本人がターゲット」でなく地元の人が足繁く通う人の集う店にしてほしい。そうすることで食材業者からも「何があっても安定して回転している店」としてより良いビジネスの会話が生まれることがあるだろう。

このコラムの著者

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水野 聡子

(Infinitie Wings BP(Thailand)Co., Ltd)

<タイ産業調査の専門家>

IWBPではタイの一般市場調査および産業調査、コーディネート業務、メディア対応業務などを承っております。

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