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海外ビジネス コラム

時事 2013年07月29日

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【特集 海外ビジネス失敗例】なぜ、ミャンマー携帯電話事業参入への入札で日本勢が負けたのか?

池田 尚功(株式会社セールスモンスター)

ミャンマー人は日本が好きだから有利、は本当か?

ミャンマーへの注目は、未だに増加傾向にあると感じていますが、最近、弊社に頂くお問い合わせやご相談内容の傾向が少し変ってきている感じがします。

以前よりは、ミャンマーに関する情報や、取り扱う会社・メディアも増えてきているので、ミャンマー進出や事業展開、活用を検討されている皆さんが事前に把握できる情報が増えたが故だとは思いますが、それでも、現地事情や進出方法について誤認識されている場合も少なくありません。

さて今回は、「失敗例から学ぶ海外進出」をテーマに、対ミャンマーについてふれてみます。

失敗例という表現が適切ではないとは思いますが、先日6月下旬に、ミャンマーの携帯電話事業への新規参入者を決める入札で、日本関連の2陣営(KDDI・住友商事連合/丸紅・フランステレコム連合)は落選しました。今回の入札では、最終的に11の国際企業連合が応札し、テレノール(ノルウェー)とカタールテレコム(カタール)が落札・事業免許獲得となりました。テレノールなどは今後、通信回線や基地局などのインフラ整備を進め、2015年までにサービスを開始する計画です。

尚、丸紅・フランステレコム連合は次点となっており、落札した2社が事業免許を返上した場合、繰上げ当選となる可能性もあるとされています。

弊社セミナーや、個別のご相談に対し、他国の取組みや動向も注視すべきだと以前からお伝えさせて頂いておりますが、いくら日緬関係が強固(“日本好き”“日本びいき”と言われることもあるようですが)とはいえ、やはり他国のミャンマーに対する同分野・同業種との差別化や、考慮・対策が必要であることを示す結果になったと思います。

実際に現地企業や政府関係との商談に直面された方は、容易にご理解頂けると思いますが、「日本優位」ということは必ずしも通用しません。それはODAや現地側が費用等を負担する必要が無い商談に限った話のように感じます。

ちなみに、ミャンマーとの商談や事業展開、進出での失敗例や、そこから学ぶ項目としては、以下の点が挙げられます。

(1)   現地の商談方法・現状を理解していない
(2)   全て自前や自力による、事業展開や進出にこだわりすぎる
(3)   近隣も含め、他国のミャンマーに対する取組みや動向を重要視していない

 

「ミャンマースタイル」を加味し、現地人に響くキーワードを活用するのがカギ

上記(1)については、2011年からの中古車関連事業もしかり、重機や農機の輸出、アパレル関係、農作物の栽培や加工・輸出などが含まれます。

特に、ミャンマー向けの貿易・中古機械等輸出については、何度も商談が頓挫することがありました。もちろん、弊社からもアドバイスはさせて頂きましたが、たとえ商談が上手くいきそうな段階に至っても、最終的に日本側(売主)が、支払方法や価格の妥協・販売後のケアに関する調整をできなくて、中国勢や、インド勢に先手を打たれて機会損失を招いた事例は少なくありません。

ミャンマー現地側には、当然、「日本製=高品質=良い」というイメージがありますし、需要は顕在です。ただ、支払方法や、他国との価格比較を踏まえた価格設定をしないと、現地側は、いくら日本製が欲しくても購入には至りません。日本製中古と他国の新品と比較されても勝ち目はないことは明らかです。また、従来の欧米諸国による経済制裁の影響からか、他国の製品を目にする機会が多くはなかったが故、実際に物を目にしないと、中々安心して新たな製品には手を出しません。再販の可能性(流行りや評判)や、メンテナンス・保証も、重要なキーワードです。

そこで、「ミャンマースタイル」を加味し、寄附・寄贈、保守やメンテナンス、スペアパーツなどのキーワードを上手く活用された方は、商談成功されていると感じます。

ちなみに、今月7月に、韓国・サムスン電子(Samsung)社は、ミャンマーで販売中の家電製品に関して現金分割払いを導入すると発表しました。もちろん適用条件はあるようですが、ミャンマー現地側が購入・支払をする側の様々な商談において「installment(分割払い)」は、昔から、一番耳にする言葉ですので、この点を加味できるか否かが重要です。

日系では、イオンが、イオンフィナンシャルサービスのタイの小会社により、ヤンゴンに金融会社「イオンマイクロファイナンスミャンマー」を設立し、ミャンマー政府から割賦販売事業の免許を取得されました。個人向けに家電や携帯電話などの分割払いサービスを始めるようです。

両件共に、現地の商談方法・現状を理解し、現地側購買層が求めるサービス(installment)を提供しますので、今後の事業展開は、前途洋洋ではないでしょうか。

 

現地パートナーの有効活用を積極的に考えるべき

上記(2)については、出資者(日本の本社か、海外子会社経由か、個人か)などによりますが、現地企業とのJVや、協業、合弁について懸念される方も少なくありません。信用できない、と二の足を踏んでしまうのです。日本側の会計やブランディングなど対外的な理由、パートナー候補の未確保などにも起因するかと思いますが、もう少し、現地側企業とのJVや協業を、活用された方がいいと感じる場合があります。

確かに、他国の例で、ベトナムでは、日系コンビニエンスショップの場合、協業していたベトナム側の大株主が、タイの会社に全株奪われるという失態を招き、日本側(本部)が手を引く事態に発展しました。結局、日本人街の1店舗を残し店舗消滅に至ったようです。他の事業や店舗も同様のリスクはあります。

このように、協業相手との取り決めや、契約が反故にされ、事業展開に支障をきたすこともありますが、それでも「郷に入っては郷に従え」です。現地に一番精通している現地パートナーの確保と活用、協業展開は考えるべきだと思います。

 

競合情報を制するものが海外進出を制する

上記(3)については、ミャンマーへの事業進出や事業展開を検討・着手されている方ですら、あまり重要視されていないように感じます。しかし、現地での雇用や、許認可も含めた政府関係、現地側企業との商談、事業の仕掛け・仕組み作りにおいて、一番重要なことだと思います。ちなみに、現地視察などで、よく日系企業への訪問アレンジを依頼されますが、他国の動向や取組みは、現地企業や現地政府関係から情報を得ることが多いので、そうした訪問は重要視すべきだと思います。今までの商談において必ずと言っていいほど、ミャンマー側は日本企業の提案を、関係の深い近隣の中国・タイ・インド・韓国などと比較してきています。冒頭の、ミャンマーの携帯電話事業の入札も、その一例とも言えるかと思います。

また、以前にも増して多くの日本食店を、ミャンマーで目にします。弊社にもお陰様で多数の飲食店開業や展開のご相談を頂くのですが、現地の店舗物件高騰などにより予算が見合わなかったり、設立と開店には至れるものの、海外事情の理解不足や、日本での経験・固定観念に必要以上にとらわれ過ぎ、若しくは、飲食店未経験による投資などを起因として、その後の運営や、味、スタッフの人事労務も含めた管理、価格設定などの点で、その他日系競合他店舗との差別化が図れず、うまくいかない場合も少なくありません。

失礼ながら、昨年辺りから店舗をかまえ、飲食店を開業されている方ですら、既に“閑古鳥”が鳴いており、集客に苦労されている様子もお見受けします。

いかなる案件や商談でも、「何をしたいのか」「何ができるのか」「どこまで現地を理解・把握できているか」「他国の同分野に関する動向を掴んでいるか」「現地側の本当のニーズを把握しているか」「どこまで日本側の責任者やキーマンが関与できるのか」などを考えることが、失敗しないミャンマー進出・事業展開のポイントではないでしょうか?

いずれにしましても、ミャンマーは、まだまだ各分野で活用・事業展開の可能性もありますし、確実に魅力を保持していると感じます。

是非、ミャンマー側の目線に立ち、各種サービスも含め、現地側が求める物を、日本ならではの品質や技術、取組みで、現地側に喜ばれるように事業展開・活用されることをおすすめします。

 

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池田 尚功

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