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海外ビジネス コラム

法律・制度 2013年08月12日

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マレーシア進出のために理解しておくべき独特な労務用語とは?

鵜子 幸久(桜リクルート社(マレーシア))

マレーシアの雇用契約書はどのようなものか?

 

今回はマレーシアの労務制度において、覚えておきたい基本用語について解説します。同じ言葉でありながら、日本とマレーシアではその意味することが異なる場合もあり、トラブルを避けるためには事前に理解しておくことが必要です。

この国における労務制度は日本のそれとはかなり異なります。当地に進出してきた日系企業の日本人幹部の方々が、戸惑うことも多々あると思われます。
例えば、雇用契約についていえば、日本では雇用主主体の手続きに終始し、雇用される側は基本的に受け身の立場といえますが、マレーシアでは雇用者と被雇用者が完全に対等の立場に立ち、サインをもって雇用契約を交わします。
雇用契約書はアポイントメント・レターと呼ばれ、契約の前段階で給与・ポジション・具体的な職務項目・休日などの細目が定義されていないといけません。アポイントメント・レターに記載されるべき項目は以下の通りです。

  • 役職名
  • 勤務開始日
  • 月給
  • 手当項目、金額
  • 試用期間と延長規定
  • 辞職または解雇の通知期間(試用期間、本採用後)
  • 勤務時間、シフト、残業
  • 休日・休日出勤ルール
  • 祝日・祝日出勤ルール
  • 転勤
  • 年次有給休暇日数
  • 病欠、産休日数
  • EPF(被雇用者積立基金)、SOCSO(被雇用者社会保障機構)
  • 守秘義務
  • 定年退職年齢
  • 副業の禁止
  • 就業規則の順守

アポイントメント・レターを作る上で必要なのは、正しい労務用語の解釈と理解です。日本に全く無い概念の言葉もあれば、同じ言葉なのに意味するところが異なるものもあります。これらの用語の解釈が労使双方で異なったまま就業を開始してしまうと、後々大きな労務トラブルに結び付く可能性があります。

 

理解しておくべきマレーシア独特の労務用語

ここでは理解しておくべき幾つかのマレーシア独特の労務用語を挙げて解説していきます。

「Executive」
西洋では「重役」や「高級幹部」の意味で用いられることが多いポジション名ですが、マレーシアにおける職位としての「エグゼクティブ」は、高級幹部ではなく「一般社員」を指す名称です。一定以上の給与額と学位もしくは職務経験を持つ、しかし役職がつかないレベルのスタッフは総じてエグゼクティブレベルであり、さらにジュニアレベル・シニアレベルに分けることもあります。管理職予備軍ともいえます。

「Probation Period(試用期間)」
マレーシアでは雇用契約時に試用期間を明示します。通常は入社日から3カ月間を試用期間とし、雇用主・被雇用者双方にとって、正式契約を結ぶまでの様子を見るための猶予期間として設けられています。マネジャーレベルになると6カ月以上、最長で1年というケースもあります。勤務評定や実績次第で延長される場合もあります。
重要なのは、この試用期間が労使双方においての形式的な制度だということです。試用期間内ならば、容易に雇用契約を解除(解雇)できるかというと、そうではありません。実際のところ、雇用法には「Probation」という語の記載が無く、試用期間という考え方は法律上には存在しません。従って、企業におけるProbationの有無や期間にかかわらず、解雇は解雇と見なされる恐れがあり、注意が必要です。

「Annual Leave(年次有給休暇)」
Annual Leaveはいわゆる「年休」のことです。法律上、2年未満の勤務に対し最低8日間、2年以上5年未満の勤務に対し最低12日間、5年以上の勤務に対し最低16日間が与えられ、日数の上限は企業の裁量次第です。
マレーシアでは、年休を消化することは被雇用者の権利であると考えられている傾向があり、年末になると年休消化の休みを取るスタッフが多く、仕事が滞ることもあります。もちろん、承認の可否はあくまで会社の判断に委ねられますので、申請を拒否することも可能です。また、一般的に次年度への繰り越しは不要ですが、従業員にとっての有利性として繰り越しを認めている企業もあります。

「Emergency Leave(緊急時における有給休暇)」
有給休暇取得の際には、企業により3日から7日以上前の申請を条件としていることが多いのですが、緊急事態発生時には当日の申請も受理されることがあります。その場合は名称が変わりEmergency Leaveと呼ばれますが、結局はAnnual Leaveの残日数から差し引かれます。

「EPF」
EPFとはEmployees Provident Fundの頭文字で厚生年金のようなものです(日本人も任意で加入可)。通常は会社負担12%、本人負担11%が給与から差し引かれ、掛けた分は必ず、しかもなかなか良い利息付きで戻ってきます。利率は変動し2010年は5.8%でした。現役世代がリタイア世代を支えていかなければならない現在の矛盾の多い日本の年金制度と比較すると、非常に理にかなったシステムだといえます。

「Allowance(諸手当)」
業種や職種を問わず、共通して支給されるのは通勤手当です。月額定額制やマイレージ計算、高速道路代の有無など各社によってさまざまです。職種により、外回り営業には交通費と通信費、工場従業員には食事代補助、また、役職手当や皆勤手当が付くこともあります。マレーシアの求職者は、基本給以外にこれら手当の有無や額にこだわったり、転職活動時の比較材料にしたりする傾向があります。

「OT(残業)」
OTとはOvertimeのマレーシア的省略であり、分かりやすく言うとOvertime Workつまり残業のことです。残業手当はOvertime Work Allowanceになりますが、通常はOT=残業手当として使われることが多いです。
マレーシアの雇用法では、基本給1,500リンギット以下の低賃金の労働者や運転手などには必ず残業手当を支給しなければならないと定められています。一方、エグゼクティブレベル以上の従業員には、基本的に残業手当を支給しない慣習があります。

「MC(病欠)」
MCとはMedical Certificateの省略、つまり医療機関が発行した「傷病名と休む必要のある日数の証明書」のことです。通常はMC=病欠という意味で使われます。上記のAnnual Leaveとは別枠での有給休暇が保証されています。しかし社員のずる休みを防止するため、あらかじめ会社が契約したパネルドクター(指定医師・指定病院)の診断書をもって承認するケースがほとんどです。

「Employment Pass(就労ビザ)」
就労ビザは雇用主が外国人幹部従業員のために申請するものです。求職者から「自分で就労ビザを取れば働けるのか?」という質問がよくありますが、答えは×です。運転免許証のような「持っていれば働ける」というライセンスではありません。申請条件として、月間報酬が5,000リンギット以上、学歴は大卒以上といった項目をクリアする必要があります。

 

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鵜子 幸久

(桜リクルート社(マレーシア))

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