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海外ビジネス コラム

市場動向 2015年10月07日

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アセアンの中心地・タイにおける和食ビジネス その3

水野 聡子(Infinitie Wings BP(Thailand)Co., Ltd)

もともと親日国であるタイには以前から和食店はいくつかあった。ただほとんどが在住日本人向けの価格高め設定店、またはローカル向けのいわゆる「なんちゃって和食店」の二極化した状態であった。

しかし、10年ほど前からの政府間経済協定によって、関税をはじめとする様々な規制緩和が行われた。そして、2013年からの短期訪日ビザ免除により日本を訪れ和食の良い点に接し、タイ人も「本物の和食を食べたい、和食の良い点を日常生活に取り入れたい」という要望が高まったこと、また、日本企業としては国内の少子高齢化で海外へ市場を求めようとする潮流、このほか複数の要因を背景にして現在バンコクには様々な工夫を凝らした多様な和食店が豊富にできている。そこで、そうした事例をいくつか取り上げ、バンコクにおける飲食ビジネスおよび食材ビジネスのチャンスを探りたい。

和食店経営者に聞く、飲食ビジネスおよび食材ビジネスのチャンス

多様な和食店があるということは、言ってみれば競合が非常に多いともいえる。和食店経営者は常に「いつ使ってもらう、誰に使ってもらう、何を楽しんでもらう、どういう風に維持運営する」を意識している。2015年現在の人気店を訪問し長年の人気の秘訣、進出する際に考えておきたいこと、そして店舗運営上重要事項の一つである食材の調達についても聞いてみた。

第3回は「しゃかりき432“」

「ミャンマーにも2016年3月に出店する。競合が少なくビジネスチャンスが大きいこともあるが、何より今働いているミャンマー人スタッフへの恩返しという気持ちが強い」と話すのは『しゃかりき432“(しみず、と読む)』の清水社長。進出3年目で現在9店舗、今後タイでの新規店2店、ミャンマーでの1店と急速に拡大している日本食店だ。大規模資本による経営でないにも関わらず、急成長している企業の成功の秘訣を探った。


(「お客さんが楽しくなる、わくわくする」を追求する清水社長)

現在の客層について

9店舗あり、それぞれ違う客層をターゲットにしている。第一号店は日本人が多く勤務する地域にあるため、9割が日本人客。一方タイ人居住区にある築5-6年ほどのモールに入っているバー的な店舗は、ほぼ100%タイ人。全体ではタイ人7割日本人3割というところ。

採用している食材・飲料について

すし刺身用魚介類は日本産空輸品を採用している。日本国内での購買とほぼ変わらない鮮度を保つ運搬法があるため、高い品質のまま到着する。すし刺身の決め手は魚であり、そういう食文化のなかったタイの魚では和食本来のうまさを表現するのに限界がある。おいしいものを食べてもらうには、やはり適正な食材を、と考えている。それ以外の用途の魚介類、肉類、野菜などは基本的に地場のものを採用。9店舗分まとまった量で交渉している。飲料は一番出ているのが、タイで生産している日系ブランドの生ビール。焼酎や日本酒なども日系の輸入兼卸業者から仕入れている。

料理や飲料の販売量向上策について

当社は居酒屋であり酒類を出して利益を得る、ということを心得ている。効率よく大量に注文してもらうためにはどうするべきか、という根源的な課題への対処、また昨今の急速なSNSの発達で今まで通りの広告では市場へのアピールがしにくいという現状、そして和食激戦区でどうしたら店名を覚え、再訪問してくれるのか、といったことを考えて策を売っている。成功例は、名物メニューとなっている、2リットルおよび5リットルのモアイジョッキで飲む生ビール。


(様々な効果を生み活躍中のモアイジョッキ)

5リットルジョッキはストローを指して複数で吸うというスタイル。面白いジョッキでみんなで楽しく飲んでいる、という姿を写真にとってSNSでアップ、それを見て「なんだか面白そうな店」とご新規さんが訪問する流れになっている。店名はうろ覚えでも「面白いジョッキのところにまた行く」とリピートしてくれる。5リットルなのでいくつかのグループが注文したらすぐ20リットル樽が空になる、と回転も速い。この商品は現在売上向上、新規向け広報、再訪客獲得、3つを何とか充当している。しかし、現状に甘えず、もっとお客さんが面白いと思ってくれ、売り上げが向上するものをどんどん採用していきたい。

料理ではお客さん自身が作るたこ焼きが人気メニュー。くるくる回しながら作る過程が面白く、1-2口で食べられる小さいサイズで、複数の人で分けやすい、というところが人気のようだ。

急成長の秘訣について

背水の陣であること。大阪で店を4軒経営していたが全部手放して来た。タイで得た利益はすべて新店舗開店として再投資している。現9店舗と今後3店舗追加するが、基本的な姿勢は同じ。常にこちらが前進していく必要を感じている。そういう風に自分を追い込むためにも退路を断って来た。

もう一つは人材。当社スタッフは日本人が少し、タイ人30%、ミャンマー人70%の構成だが、日本人は基本的に裏方である。スタッフは区別はなく、実績があがったスタッフには給与、待遇、長期休暇などわかりやすい褒章を与えている。人間褒められればやる気が出るもの。うまく刺激し、長期間モチベーションを持続できるようなものを今後も考えていきたい。来年のミャンマー進出は店舗で働いていたミャンマー人スタッフに彼らが祖国で活躍する場を準備したい、という気持ちで進めている。これも彼らの実績に対する評価と感謝の表現の一つだと思っている。

アセアンで和食ビジネスおよび食材ビジネスをしたい人たちへのメッセージ

来年前半にミャンマー、その後はフィリピンにも進出したいと思っている。店に来たいと思ってくれる要素および他社との差別化の一つとなっているエンターテイメント性というのは国が変わっても業者が変わっても適用できると思う。

当社の場合背水の陣で来たこともあり、立ち上げ当初は単身で滞在し、家族のケアに手が回らなかったこともあった。多少はそういう事がありながらも、ビジネスを立ち上げる姿勢はその後がどうなるかの大きなポイントだと思う。

アセアンの和食市場はまだまだチャンスはあると思うので自分らしさを持ちながら頑張ってほしい。

このコラムの著者

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水野 聡子

(Infinitie Wings BP(Thailand)Co., Ltd)

<タイ産業調査の専門家>

IWBPではタイの一般市場調査および産業調査、コーディネート業務、メディア対応業務などを承っております。

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