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海外ビジネス コラム

商習慣 2013年10月24日

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タイ・サポート実録記1(メナーム社編)「ある社長からの電話」

但野 和博(Accounting Porter Co., Ltd.)

第1話 「メナーム社編(1)」
~現場リソースの提供をしながらサポートするケース~
ある日の昼下がり、それは1本の電話から始まった。
「ちらしを見たのですが、経理まわりのことでちょっと相談したいことが至急ありまして、今日今からでも会えませんか?」

状況を電話で聞く限り、要約すると、経理がブラックボックス化している中で経理スタッフが辞める話が出ており現場が混乱を極めているが、それに拍車をかけるように本社に報告するための月次伝票が締まらないのでとにかくすぐに人を派遣できないかという相談だった。

最近よくあるパターンだなと思うのと同時に自社のサービスの存在意義をしみじみと感じる瞬間である。

というわけで早速日時をやりくりし、自分を含めマネージャー及びスタッフの3人で相談いただいたメナーム社に向かうのであった。

オフィスはさすがに日本では名前の知られた会社の現地法人というだけあって、立地も申し分なくオフィス内も華美にならない程度に高級感があり、広くて快適そうだ。

もっともこの数分後にその快適そうな環境とは裏腹に現場は切羽つまっている環境であることを思い知ることになるのだが……。

「こちらへどうぞ」

この初対面の時から気が合いそうでこの人を助けないといけないという気にさせる外町社長にご案内いただき、我々3人はこれから聞く現状とは反対の明るい光の差し込む会議室に通された。

「着任してまだ3か月の静本です」

「そしてこちらが経理マネージャーのBeeさんです」

社長を含めて相手も3人である。まずは窮状を聞くことから始まった。

電話で状況についてはほぼ把握していたので、早速タイ人マネージャー同士で具体的に業務状況と問題点について話してもらった。

どうやら月次を締めるのに近日中に1名の経理スタッフが退職する上、入力が必要な書類も大量に発生しているし、それらの書類をろくに整理もできない状況でとにかく人手が足りないということらしい。

現場からの声はこのように往々にして近視眼的になりがちだ。

さすがに外町社長や静本さんからの意図はもう少し先を見据えたもので、経理系と営業系のシステムが個別独立的に存在しており、取引ボリュームに対して現場実務が段々機能しなくなっていることが原因にあるのでシステムの入れ替えを考えていると言う。

そのため今後経理マネージャーのBeeさんに入れ替えにおける主導的役割を担ってもらいたい。そこで、彼女の現状の経理業務上の負荷を減らすことも見据えて、とのこと。加えて、これを活かして彼女には今後の社内でのキャリアアップの試金石にもしてもらいたいと。

「う~ん、高尚だ。すばらしい会社であり、この人たちのもとで働けるタイ人スタッフは恵まれているなあ」

と素直に感じた反面、

「あっ、もしかしたらまずいかも」

という思いが頭をよぎったのである。

 

ほとんどの場合、そうした日本人上長の高尚な思いは現場では理解されず、目の前のマイサバーイ(居心地が悪い)で不安定な状況を脱却することしか考えていないケースが多い。

とは思いながらも、まあここまでは想定内で、こういう場合は何はともあれ現場の声をより近いところで拾うためにそれこそ現場に一緒に入りながら汗をかき、共感しながらも解決策を提案していくというスタイルが一番。そのために現在リソースとしては少し余裕のあるタイ人スタッフを同行させたわけである。

 

そして、当社が用意した提案で、このタイ人スタッフを1日単位でリソースとして投入させていただきながらサポートをすることに対しても割とすんなり受け入れられたのであった。期間については1か月の中で業務の集中する時期の月末月初ということで2~3週間程度ということにしましょうということで落ち着いた。そうは言ってもまあ2週間位で済むだろうという見通しだった。

 

「ではいつから始めましょうか?」

という流れでその日の打ち合わせを終えようという空気の中で

「では本日これからお願いします。」

「えっ、今からですか?」

 

そう、ここタイの現場レベルでは1日もマイサバーイな環境にある自分が耐えられないのである。忘れてはならない。ここはタイで、働いているのはタイ人なのだ。

「今日、今から時間ある? 入れる?」

このような事に慣れているとはいえ、多少動揺しながらも駄目元でスタッフに確認すると、

「大丈夫です」

彼はほほ笑みながら答えてくれた。

 

タイではほほ笑みが13種類あると言われる。何かの本でそう書いてあった記憶がある。どんな種類のほほ笑みかはよく覚えていないがこの時の彼のほほえみは恐らく戸惑いとあきらめと覚悟を決めたものだったと思う。いつもは頼りがない感じだがこの時の彼はさすがに頼もしく感じ、私の意を決するのに十分な答えであった。

 

「現場と上長のギャップはありそうだが、まずはスタートが出来て良かった」

という少しほっとした思いでその日は事務所に戻り、それから何日かは何が起きるわけでもなく割と平安に時間が経過したのだった。

 

そう、外町社長からの電話が私の携帯を鳴らすその時までは……。

(続く)

 

 

※クライアント様の匿名性を保つために社名・人名等をはじめ一部事実とは異なり表現を変えている部分があります。

 

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但野 和博

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