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海外ビジネス コラム

市場動向 2016年06月22日

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米国は機械分野でどの国から何をを輸入しているか:日本のシェアをもっと伸ばすには?

秋田 哲宏(サードフォース株式会社)

米国向けに機械・輸送機器の輸出を増やすには、どうすればいいか

<米国の輸入総額において、機械・輸送機器の割合は大きい>

米国は、産業大国でありながら、多くの工業製品を輸入している。以下の表は米国の輸入の内訳で、四角形の面積が大きいほど、輸入額が大きいことを示す。
(出所:The Observatory of Economic Complexity、2013年のデータ)

サードフォース

 
総額2.13兆ドルのうち、コンピュータや機械類で構成される機械(Machines)カテゴリが28%、石油資源など(Mineral Products)が17%、輸送機器(Transportation)が14%を占める。次いでMetals(金属製品) 5.5%、繊維類(Textiles)5.1%、医療機器その他(Instruments)3.4%等、工業製品の占める割合が高い。食品類については、加工食品(Foodstuffs) 2.6%、野菜類(Vegetable Products)1.9%、動物製品(Animal Products)1.2%を輸入している。どの国からどのような製品を幾ら輸入しているかを分析することで、米国向け輸出市場の大きさと、国別の輸出シェアを把握すると同時に、他国のシェアを奪うことで日本が輸出を伸ばせる可能性、即ち潜在市場の大きさを把握することができる。

次に、日本との関係が深い機械類、輸送機器類の、各セグメント毎の詳細と国別の輸入シェアから、日本からの輸出増加の可能性を検討する。

米国は機械分野でどの国から何を輸入しているか:日本のシェアは高い

以下は、輸入総額に占める割合が最も高い機械類(28%)の内訳をイメージ化したもの(出所:同上)。

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● 機械類の輸入額の(以下同じ)16%を占めるコンピュータ(Computers)では、輸入総額940億ドルのうち、中国(台湾を含むと思われる。以下同じ)が66%、メキシコが15%、タイが5%を占め、日本の輸出シェアは1.5%にとどまる。
● 8.6%を占める放送機器(Broadcasting Equipment)では、輸入額511億ドルのうち、中国が77%を占める。日本の輸出シェアは限定的。
● 3.4%を占めるガスタービン(Gas Turbines)では、輸入額202億ドルのうち、フランスが24%、カナダが11%、英国が15%、日本が9.8%を占める。
● 2.3%を占めるバルブ(Valves)では、輸入額137億ドルのうち、中国が26%、メキシコが15%、日本が9.7%を占める。
● 1.9%を占める産業プリンタ(Industrial Printers)では、輸入額115億ドルのうち、中国が34%、日本が28%を占める。
● 1.8%を占めるスパーク点火エンジン(Spark Ignition Engines)では、輸入額105億ドルのうち、メキシコが28%、カナダが19%、日本が18%を占める。
● 1.6%を占める流体ポンプ(Liquid Pumps)では、輸入額95億ドルのうち、中国が20%、ドイツが12%、日本が11%を占める。
● 2.2%を占める変圧器(Electrical Transformers)では、輸入額137億ドルのうち、中国が40%、メキシコが17%、日本が6.6%を占める。
● 1.3%を占めるトランスミッション(Transmission)では、輸入額79億ドルのうち、中国が18%、日本が16%を占める。
● 0.94%を占める燃焼エンジン(Combustion Engines)では、輸入額56億ドルのうち、メキシコが29%、ドイツが18%、日本が18%を占める。
● 0.5%を占めるボールベアリング(Ball Bearing)では、輸入額31億ドルのうち、日本が最大の27%を占める。
● 0.48%を占めるゴム工業用機械(Rubberworking Machinery)では、輸入額27.6億ドルのうち、ドイツが26%、カナダが15%、日本が14%を占める。
● 0.43%を占める昇降機(Lifting Machinery)では、輸入額25.4億ドルのうち、カナダが26%、ドイツが15%、日本が14%を占める。
● 0.36%を占める金属加工機械部品(Metalworking Machine Parts)では、輸入額21億ドルのうち、ドイツが21%、日本が17%を占める。
● 0.35%を占める金型(Metal Mold)では、輸入額21億ドルのうち、カナダが38%、中国が19%、日本が10%を占める。

大量生産品は低コスト諸国から輸入

米国の機械分野の輸入において最も輸入額が多いコンピュータの分野では、中国・台湾やメキシコなど、生産コストの低い国からの輸入シェアが高い。米国企業やその他の国の企業の多くがコストが低い国々において生産していることや、台湾のホンハイ(Foxconn)に代表されるEMS(受託生産サービス)に生産を外注していることを反映していることを示す。

この分野においては日本のシェアは低いが、日本企業の多くも低コスト国にて生産・委託していることも反映した結果を表している。

日本は付加価値が高い機械製品のシェアが高い

日本は、産業プリンタ(28%)、ボールベアリング(27%)、スパーク点火エンジン(18%)、燃焼エンジン(18%)などにおいて、高い米国向け輸出シェアを持つ。これらの製品の特徴は様々ではあるが、付加価値が高く、価格もさることながら性能や信頼性が重視される特徴があるものと思われる。

この特徴は、元々広く国内外において認識されている「日本の強み」をよく表していると言える。

信頼性が高い製品に対するニーズは途絶えることはなく、産業構造の変化に対応すれば、今後もこれらの強みを維持するとともに、より多くの製品の輸出につなげることができる。

ドイツの輸出シェアの特徴は、上記データからもわかる通り、日本と類似する傾向が見られる。ドイツは日本よりも多くの製品を輸出しており、日本企業が学べる点が多い。ドイツの輸出競争力に関する分析は、本メールマガジン(第7回・第8回を予定)にて掲載する予定。

機械類の輸出をもっと伸ばすには?

日本は、比較的生産量が少なく多品種な製品、高い精度が求められる製品において高い優位性を持つ。

そのような付加価値が高い製品は価格より品質が重視される傾向にあり、特に先進国市場において、受け入れられる余地が大きい。

ある産業用ポンプメーカーの製品との面談における米国のバイヤーのコメント:「日本の製品は、品質が高く、特に中国製品との比較において、その差が際立っている。一方で、日本のメーカーの課題は、あまり積極的にマーケティングを行わないためか、製品の価値を十分にアピールできていないことが多い。価格についても、遜色はない。もっと努力すれば需要を獲得できるのではないか。」

日本の製品の品質は海外において高い評価を受けている、という認識は現在においても健在である。しかしながら、「良い製品だから海外でも売れるはず。」と考える日本企業は多いが、海外市場に製品を浸透させる努力をせずに成功することはない。製品の価値をきちんと顧客に訴求することが必要であり、この点が多くの企業にとって課題となっている。

日本の中小企業の輸出拡大に関する課題と対策は、本メールマガジン(第六回、第九回)で掲載する予定。

米国は輸送機器分野でどの国から何を輸入しているか – 日本のシェアは特に高い

以下は、米国の輸入総額に占める割合が機械類・エネルギー類に次いで3番目に高い輸送機器類(14%)の内訳をイメージ化したもの(出所:同上)。

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● 輸送機器類の輸入額の(以下同じ)54%を占める自動車(Cars)に含まれ、29%を占める中型車では、輸入額850億ドルのうち、日本が27%、カナダが21%、メキシコが19%、ドイツが15%を占める。
● 54%を占める自動車(Cars)に含まれ、21%を占める大型車では、輸入額619億ドルのうち、カナダが41%、日本が21%、ドイツが20%を占める。
● 21%を占める自動車部品(Vehicle Parts)に含まれ、5.3%を占める他に分類されない自動車部品(Motor Vehicle Parts Nes)では、輸入額158億ドルのうち、メキシコが33%、カナダが16%、日本が10%を占める。
● 21%を占める自動車(Vehicle Parts)に含まれ、3.3%を占める(自動車向けトランスミッション(Transmissions for Motor Vehicles)では、輸入額96億ドルのうち、日本が36%、メキシコが22%、ドイツが19%を占める。
● 21%を占める自動車部品(Vehicle Parts)に含まれ、3.3%を占めるライニングを除く自動車向けブレーキシステム(Brake system parts except lining for motor vehicles)では、輸入額46億ドルのうち、中国が29%、メキシコが24%、カナダが10%、日本が8.9%を占める。
● 5.3%を占める航空機部品(Aircraft Parts)に含まれ、4.6%を占める他に分類されない航空機部品(Aircraft Parts Nes)では、輸入額134億ドルのうち、日本が28%、カナダが10%、イタリアが9.3%を占める。

殆どの製品カテゴリにおいて日本は上位シェアを占める。NAFTA加盟国であり地続きのカナダとメキシコよりもシェアが高い製品が多い。日本の自動車産業と航空機部品産業の競争力の高さが理解できる。

輸送機器類の輸出をもっと伸ばすには?

<日本からの自動車部品の輸出増は米国にとって脅威>
 
米国には、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)について、日本からの自動車部品の流入増への懸念がある。TPPが発効すると、自動車本体に関する関税2.5%は、25年間をかけて段階的に撤廃されるが、自動車部品については、約8割の部品の関税が即時に撤廃されることになる。これについて、米国には、日本からの自動車部品の輸入がさらに増加することに対する懸念があり、「TPPにおいて米国は日本製の自動車に対する関税を25年間維持し、トラック向け関税を30年間維持するとしている。自動車部品についてはより早く撤廃されるため、幾つかの部品メーカーと、それら企業と取引するサプライヤーにとって、プレッシャーになる可能性がある。」(ウォールストリートジャーナルThe Trans-Pacific Partnership in 11 questions 2015年10月5日付 抜粋)といった報道もある。

<現地生産を検討する際の課題>
 
自動車部品産業においては、国内では系列を通じた取引関係が多い。より多くの自動車部品メーカーが海外における現地生産を行うようになり、上位ティアの部品メーカーがそれに続き、下位ティアの部品メーカーも続くようになってきている。取引先に促されて海外にて現地生産を検討する多くの自動車部品メーカーにとって、以下の課題がある。

● 期待通りのコストで材料を調達して人材を雇用し、日本並みの品質で生産することができるか
● 現地生産のキャパシティは、既存取引先のオーダーで埋められるか

多くの下位ティア自動車部品メーカーは、現地生産は想定よりも生産コストがかさみ、既存取引先の注文量だけでは損益分岐点売上に届かない、という懸念を持つ。

現地生産のキャパシティを満たすには、既存取引先に加えて現地における新規顧客が必要である場合が多い。そのためには、既存顧客以外の、とりわけ現地における販路開拓が必要となるが、既存取引先はそこまで支援してくれることはあまりなく、メーカーが自社で対応する必要がある。しかしながら、多くの部品メーカーにとっては、既存取引先との取引が中心であり、自社の営業能力は限定的で、海外での販路開拓を行うことは容易ではない。

現地に進出する日本企業のコミュニティで仕事の紹介を受けることも多く、進出する企業同士で協力し合うことも重要である。公的な進出支援や、民間の支援企業の協力を得るなどを通じて、自社の経営資源の制約を保管する努力がも求められる。

ポイントは、信頼できる現地の運営体制を構築できるかどうか。現地法人の設立や現地人材の採用は難しいことではない。難しいのは、様々な問題に対して経営の立場で適切に対すること。現地拠点に経営者が常駐することは難しく、日本では経営者が対処できることが、現地で同じように対応できないことが多い。現地拠点に対して経営者がコミットすることと、その努力を通じて現地で自律的に展開できる体制を築けるかどうか、が重要となる。

<輸出という選択肢も>
 
日本国内の取引関係を海外でそのまま再現することは困難であることがあり、全ての部品メーカーが現地生産を行うことは容易ではない。

例えばメキシコでは、自動車メーカーの現地生産が増加しているが、原材料調達や拠点管理などの点で、下位ティアの部品メーカーが現地生産を行うハードルが比較的高いと言われる。そのため、日本やすでに進出した国で生産された製品をメキシコに輸出することでサプライチェーンを維持するケースが多いという。

為替水準に大きく左右されるが、品質の高い製品の輸出することで、比較的少ない負担で海外取引を拡大できる可能性がある。

部品メーカー同士がコンテナスペースを共有することで海上輸送の費用と手間を削減する共同配送スキームや、現地において部品在庫を共同で保管・管理・出荷する共同コンサイメントスキームといった手法などが有効と思われる。このような支援を行う商社の活用も有効であり、取引グループや、地域の産業集積が協力してこのような共同スキームを運営することも有効と思われる。

次回

食品類(加工食品類、動物製品、野菜類)について、直近の貿易データから、米国が、どのような製品を、どの国から輸入しているかを分析し、製品分類別・国別の輸入シェアを見る。

これを通じて、食品輸出市場の規模、日本の立ち位置と、今後の輸出拡大の余地を検討する。

このコラムの著者

秋田 哲宏

秋田 哲宏

(サードフォース株式会社)

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