東南アジア主要国の【海外進出に必要な投資コスト】を徹底比較!
東南アジアは、製造業からIT業界まで、多くの海外進出検討企業にとって魅力的な市場です。しかし、各国や都市によってビジネスコストが大きく異なるため、進出先の選定には慎重な判断が求められます。
本記事では、海外進出に必須の投資コストである「労務コスト」「不動産コスト」「税務コスト(法人税)」「ユーティリティコスト(公共料金)」の4つをピックアップして、東南アジア主要国の投資コストを徹底比較。あなたの海外事業に最適な海外進出国の選定に役立つ貴重な情報を提供します。
▼ 東南アジア主要国の【海外進出に必要な投資コスト】を徹底比較!
1. ベトナム進出の投資コスト
労務コスト
2023年時点でのベトナムの製造業・作業員の基本月給(平均値)は約4.2万円(273USD)とされており、2019年時と比較し約15%の増加が見られています。ベトナムは若年層が豊富で、平均年齢が30歳前後と若い労働市場を持ち、製造業やBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)業界にとってはコストパフォーマンスが高い市場です。
■製造業の労務コスト
繊維、アパレル、電子部品の組立などの労働集約型産業では、ベトナムの低い人件費が大きな魅力です。ハノイやホーチミン周辺の工業団地では、多くの外資系企業が進出しており、安定した労働力供給が期待されています。
■IT・ハイテク分野の賃金上昇
一方、ITやソフトウェア開発分野では、エンジニアの需要が高まり、賃金が急速に上昇しています。特にホーチミン市では、競争の激化により、優秀な人材を確保するための賃金上昇や福利厚生の充実が求められています。
■法定最低賃金
地域によって最低賃金が異なり、都市部(例:ハノイやホーチミン市)では高めに設定されています。企業は最低賃金の変動を注視し、給与体系を適宜見直す必要があります。
不動産コスト
ベトナムの主要都市の不動産賃料は依然として東南アジアの中では低水準ですが、経済成長に伴い、特にホーチミン市やハノイ市では賃料が上昇傾向にあります。
■主要都市の賃料の動向
・ホーチミン市(南部):
商業の中心地であり、オフィスや工業用地の賃料が年平均5~10%上昇しています。
・ハノイ市(北部):
政治と経済の中心地で、製造業向けの工業団地が増加しており、物流拠点としての需要が高まっています。
・地方都市(例:ダナン、ハイフォン):
都市部よりも賃料が低く、コスト削減を図りたい企業に適した選択肢です。
税務コスト(法人税)
ベトナムの法人税率は一律20%ですが、政府は特定の産業や地域に対して税制優遇措置を提供しています。特に製造業やIT分野では、税制インセンティブの活用により、税負担を軽減できます。
■税制優遇措置
・ハイテク企業 / IT企業:
初年度から4年間の法人税免除、その後9年間は半額減税(10%)が適用される場合があります。
・経済特区(SEZ):
ハイフォン市や南部のカイメップ経済特区では、最大15年間の減税措置が提供され、投資コストの削減に繋がります。
■税務リスクと対応
ベトナムでは近年、税務監査が厳格化されています。移転価格税制やVAT申告に関する規制が強化されており、進出前に専門家と相談し、コンプライアンス体制を整備することが重要です。
ユーティリティコスト(公共料金)
ベトナムのユーティリティコスト(電気、水道、通信など)は比較的低コストですが、都市部と地方部ではインフラ整備の格差があります。
■電力コストと供給の安定性
電力料金は東南アジア諸国の中で比較的安価ですが、急速な都市化に伴い、都市部では電力需要が増加し、供給不足が課題となることがあります。製造業の工場設立時には、安定した電力供給が可能な地域を選ぶことが重要です。
■水道・通信インフラ
都市部では水道や通信インフラが整備されており、企業活動が円滑に行えますが、地方部では水質や通信速度に課題があります。特に製造業では、工業用水の安定供給が不可欠であり、事前の現地調査が推奨されます。
2. インドネシア進出の投資コスト
労務コスト
インドネシアの2023年時点での製造業・作業員の基本月給(平均値)約5.8万円(377USD)です。ただし、地域ごとに賃金の差が大きく、特にジャカルタのような大都市では賃金が全国平均を上回ります。インドネシアでは労働法が年々強化され、労働保護規制も厳しくなっています。
■最低賃金の設定と労働保護
インドネシアでは各州で独自に最低賃金が設定されています。企業は最低賃金の遵守とともに、労働時間や福利厚生などの労働保護規制にも対応する必要があります。
■IT業界での人材不足
インドネシアはIT業界の成長が著しいものの、熟練エンジニアやデジタル人材の不足が課題です。これにより、IT関連職の賃金が急速に上昇しており、優秀な人材を確保するためには、賃金だけでなく福利厚生やキャリア成長の機会を提供することが求められます。
不動産コスト
インドネシアの不動産賃料は東南アジアの中で比較的低水準ですが、地域によって大きな差があります。ジャカルタやスラバヤのような主要都市では、賃料は上昇傾向にありますが、製造業に適した工業団地では比較的安価な物件も見つかります。
■製造業向けの賃貸物件
ジャカルタ周辺の工業団地(例:チカラン、カラワン)は製造業の拠点として人気があり、長期の土地リース契約が一般的です。地方都市では賃料は安価ですが、インフラ整備の遅れが課題となるため、事前調査が重要となります。
■不動産取引と外資規制
インドネシアでは、外資企業が不動産を所有することには一定の制限があります。そのため、企業は土地リース契約を活用するケースが一般的です。リース契約の更新や法的手続きには注意が必要です。
税務コスト(法人税)
インドネシアの法人税率は22%です。製造業など特定の業界や地域に進出する企業に対しては、税制優遇措置が提供されています。これにより、外資企業が投資しやすい環境が整備されています。
■税制優遇措置
新設工場へのインセンティブ: 製造業向けの新設工場や特定地域への投資では、最大8年間の法人税減免が適用されることがあります。
・経済特区(SEZ):
バタン、ビタン、カリマントンなどの経済特区では、法人税の減免や輸出入関税の免除が提供され、投資コストを大幅に削減できます。
ユーティリティコスト(公共料金)
インドネシアのユーティリティコスト(電気、水道、通信)は都市部では比較的安価ですが、地方部ではインフラの整備が不十分で、供給の安定性に問題があります。
■電力供給の安定性
ジャカルタなどの都市部では電力供給は比較的安定しており、産業用電力料金も競争力がありますが、地方部では停電が頻発することがあります。製造業の工場設置を検討する場合、バックアップ電源の設置が推奨されます。
■水道・通信インフラ
都市部では水道と通信インフラが整備されていますが、地方では水質の問題や通信速度の遅延が課題です。特に製造業では工業用水の品質がビジネスに影響するため、事前の調査が必要です。
3. タイ進出の投資コスト
労務コスト
タイの2023年時点での製造業・作業員の基本月給(平均値)は約6.3万円(410USD)とされています。業種や地域によって異なってきます。
例えば、バンコクなどの都市部では生活費が高いため、賃金も高めに設定される傾向があります。タイは製造業やサービス業向けの労働市場として人気がありますが、特に高度な技術や専門スキルが求められる分野では賃金の上昇が顕著です。
■製造業の労務コスト
自動車、電子機器、化学工業などの製造業では、比較的低コストの労働力を活用できるため、タイは製造拠点として魅力的です。労働者は生産性が高く、長期雇用にも向いているとされています。
■IT / エンジニアリング分野の賃金上昇
一方、ITやエンジニアリング分野では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進により人材需要が高まっており、賃金が急速に上昇しています。特にバンコクでは、優秀な技術者の確保が競争の激化を招いており、給与や福利厚生の充実が求められます。
■最低賃金の設定
タイでは地域ごとに最低賃金が設定されています。企業は最低賃金の遵守だけでなく、労働法に基づく福利厚生や労働条件を整える必要があります。
不動産コスト
タイの不動産市場は、外国企業の進出増加に伴い賃料が上昇傾向にあります。ただし、他の東南アジア諸国と比較すると、依然として競争力のある価格帯です。
■バンコクのオフィス賃料
バンコク中心部(スクンビットやシーロムエリア)では、グレードAのオフィス賃料が年々上昇しています。一方、バンコク郊外や地方都市では、より安価なオフィススペースや工場用地が利用可能です。
■工業団地の活用
タイには多くの工業団地(Industrial Estates)が整備されており、外国企業向けのインセンティブが提供されています。特にイースタンシーボード地域(ラヨーン、チョンブリ)は、自動車産業や電子産業の拠点として人気があり、土地リース契約も柔軟に対応可能です。
■不動産取引と外資規制
外資系企業がタイで土地を所有するには制限がありますが、リース契約を活用することで長期賃貸が可能です。契約更新や税制に関するリスクを避けるため、専門の不動産コンサルタントのサポートが推奨されます。
税務コスト(法人税)
タイの法人税率は一律20%で、安定したビジネス環境が整っています。また、タイ政府は特定の産業や地域への投資を促進するため、タイ投資委員会(BOI)による税制優遇措置を提供しています。
■税制優遇措置
・BOI認定企業:
タイ投資委員会(BOI)は、特定の産業分野や地域に進出する企業に対して、最大8年間の法人税免除や関税の免除などのインセンティブを提供しています。これにより、外国企業は投資コストを大幅に削減することが可能です。
・経済特区(SEZ):
タイ政府は特定の経済特区(Special Economic Zones)において、法人税の減免や輸入関税の免除などの優遇措置を導入し、外国企業の誘致を進めています。
■税務リスクとコンプライアンス
タイでは税務監査が強化されており、移転価格税制やVAT申告に対する規制が厳しくなっています。税務リスクを最小限に抑えるためには、専門家のアドバイスを受け、現地の法令を遵守することが重要です。
ユーティリティコスト(公共料金)
タイのユーティリティコストは比較的低コストであり、インフラの整備が進んでいます。そのため、製造業やサービス業にとってコスト削減の面で有利です。
■電力料金の安定性
タイは電力供給が安定しており、産業用電力の料金も競争力があります。特にバンコク周辺の工業団地では、電力供給の安定性が確保されており、製造業の稼働に適した環境が整っています。また、再生可能エネルギーの導入も進んでおり、環境に配慮した企業活動が可能です。
■水道・通信インフラ
都市部では水道や通信インフラが整備されており、企業活動が円滑に進められます。光ファイバー網が広く普及しており、高速インターネット接続が可能です。ただし、地方部では一部インフラの整備が遅れている地域もあるため、進出先の事前調査が必要です。
4. フィリピン進出の投資コスト
労務コスト
フィリピンの2023年時点での製造業・作業員の基本月給(平均値)は約4万円(271USD)とされていますが、これは地域や業種によって異なります。特にBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)業界では、英語力の高い人材が豊富で、フィリピンは世界的に有名なBPO拠点として評価されています。
■BPO業界の労務コスト
フィリピンでは、英語が堪能な人材が多く、カスタマーサポートやコールセンター業務に適しています。大学卒業者も増加しており、若く優秀な労働力が豊富です。しかし、近年、BPO業界での人材確保競争が激化しており、特にITスキルを持つ人材の確保が難しくなっています。
■IT / ソフトウェア開発分野の人材不足
フィリピンではIT分野の需要が急増しており、エンジニアやデベロッパーの不足が課題です。これに伴い、IT関連職の賃金が上昇しており、企業は優秀な人材を引きつけるために給与や福利厚生を充実させる必要があります。
■法定最低賃金
2024年時点でのマニラ首都圏の最低賃金は日額約1,500円(610 PHP)です。企業は最低賃金を遵守し、労働法に基づいた雇用環境を整えることが求められます。
不動産コスト
フィリピンの不動産賃料は比較的安価で、特にBPO業界やIT企業の進出に適していますが、地域によってインフラ整備の状況に差があります。
■マニラ首都圏のオフィス賃料
マニラ首都圏では、マカティやボニファシオ・グローバルシティ(BGC)のようなビジネスエリアの賃料が高騰していますが、他の地域では比較的低コストでオフィススペースを確保できます。BPO業界の進出が進むにつれて賃料は上昇しています。
■地方都市の不動産コスト
セブやダバオなどの地方都市は、マニラよりも賃料が安く、英語力の高い労働力を確保しやすい環境です。しかし、地方ではインフラが十分に整備されていない場合もあり、事前の現地調査が重要です。
■リース契約の注意点
フィリピンでは長期リース契約が一般的ですが、賃料の変動リスクや契約更新時の条件変更に注意が必要です。専門の不動産コンサルタントを利用することで、リスクを最小限に抑えることを推奨します。
税務コスト(法人税)
フィリピンの法人税率は、2024年11月11日にマルコス大統領が署名した新たな税制改革法により、登録事業体(RBEs)に対して25%から20%に引き下げられました。
この改革は、外国直接投資の誘致を目的としており、特定の産業や地域に対する税制優遇措置も強化されています。
■税制優遇措置
・PEZA(フィリピン経済区庁)認定企業:
PEZAが認定する企業は、特定の条件下で法人税の免除や関税の免除などのインセンティブを受けることができます。
・CREATE法:
2021年に施行されたCREATE法(企業復興税優遇法)により、法人税率が従来の30%から25%に引き下げられました。さらに、特定の投資プロジェクトには追加の税制優遇が適用される場合があります。
■税務コンプライアンス
フィリピンでは、税務監査が厳格化されており、移転価格税制や付加価値税(VAT)の申告に関する規制が強化されています。進出企業は、現地の法令を遵守し、適切な税務処理を行うための内部体制を整備することが重要です。
ユーティリティコスト(公共料金)
フィリピンのユーティリティコストは東南アジアの中でも比較的安価ですが、都市部と地方部でのインフラ整備状況には大きな差があります。
■電力供給の安定性
マニラ首都圏では電力供給が比較的安定していますが、地方では停電が頻繁に発生することがあります。製造業やBPO業務を行う企業は、バックアップ電源の導入を検討することが推奨されます。
■水道・通信インフラ
都市部では水道や通信インフラが整備されており、企業活動に支障をきたすことは少ないですが、地方ではインフラ整備が遅れているため、水質や通信速度の確保が課題です。特に工業用水の品質が重要な製造業では、事前の現地調査が必須です。
5. マレーシア進出の投資コスト
労務コスト
2023年時点でのマレーシアの製造業・作業員の基本月給(平均値)は約7万円(451USD)と報告されています。 マレーシアの最低賃金は現在月額約5万円(1,500MYR)ですが、2025年2月1日からは約6万円(1,700MYR)に引き上げられる予定です。
■労働市場の特徴
マレーシアは製造業において、比較的低コストで質の高い労働力を提供しています。特にペナンやジョホール州の工業地帯では、外国企業の進出が活発で、労働環境も整備されています。一方、IT分野では高度なスキルを持つ人材の需要が高まっており、賃金の上昇が見られます。
■雇用政策
政府は「マレーシア人優先雇用政策」を推進しており、現地労働者の採用が奨励されています。企業はこの政策を考慮し、適切な人材確保と労働条件の整備を行う必要があります。
以上の情報を踏まえ、マレーシアでの労務コストや人材確保に関する戦略を検討することが重要です。
不動産コスト
マレーシアの不動産賃料は、他の東南アジア諸国と比較しても比較的低く、製造業や物流業に適した市場環境が整っています。クアラルンプール、ペナン、ジョホールなどの主要都市は、安定した投資環境を提供しています。
■主要都市の不動産コスト
・クアラルンプール:
ビジネスの中心地でありながら、オフィスや商業スペースの賃料はシンガポールや香港よりも割安です。コンドミニアムの賃料も比較的安価で、外国企業の駐在員にも人気があります。
・ペナン・ジョホール:
製造業が集中している地域で、工場や倉庫のリースが比較的安価です。ペナンは電子機器産業の拠点、ジョホールはシンガポールに近い物流拠点としての役割を持っています。
■長期リース契約
マレーシアでは、外資系企業が土地や不動産をリースする際、最大99年間の長期契約が可能です。これにより、製造拠点の長期的な運営が可能となります。
ただし、リース契約の更新時には条件の変更や規制の変化に注意が必要です。現地の法律事務所やコンサルタントの支援を受けることが推奨されます。
税務コスト(法人税)
マレーシアの法人税率は24%ですが、スタートアップや中小企業には段階的な税率が設定されており、新規事業が参入しやすい環境です。
また、マレーシア政府は特定の産業や地域への投資を促進するため、以下のような税制優遇措置を提供しています:
・MSC(マルチメディア・スーパーコリドー)ステータス:
IT企業が特定地域で事業を行う場合、10年間の法人税免除や関税免除が適用されます。
・投資促進法:
製造業やハイテク産業に投資する企業には、最大5~10年間の法人税免除が提供されています。
税務コンプライアンスの観点では、マレーシアでは税務監査が厳格化されており、特に移転価格税制や付加価値税(VAT)の申告に関する規制が強化されています。企業は適切な税務コンプライアンス体制を整備し、専門家の支援を受けることが推奨されます。
ユーティリティコスト(公共料金)
マレーシアのユーティリティコスト(電気、水道、通信)は低コストで、製造業や物流業に有利な環境を提供しています。
■電力供給の安定性
電力料金は東南アジアの中でも安価で、産業用電力の供給も安定しています。さらに、マレーシア政府は再生可能エネルギーの導入を積極的に進めており、企業が環境に配慮した運営を行うための支援制度も整っています。
■水道・通信インフラ
クアラルンプールやペナンでは、水道および通信インフラが整備されており、企業活動に支障が出ることはほとんどありません。特に通信インフラは高速インターネットが普及しており、IT業界の需要に対応しています。
6. シンガポール進出の投資コスト
労務コスト
2023年時点でのシンガポールの製造業・作業員の基本月給(平均値)は約30万円(1,936 USD)とされ、東南アジアの中でも高水準です。
シンガポールは高度な教育システムと国際的なビジネス環境を背景に、特にIT、金融、ライフサイエンス分野で高度なスキルを持つ人材が豊富です。しかし、これらの分野では人材競争が激化しており、企業は優秀な人材を確保するために高い給与や充実した福利厚生を提供する必要があります。
■金融・IT分野の人材について
シンガポールはアジアの金融ハブとして、多くの銀行やファンドが拠点を構えています。また、デジタルトランスフォーメーションの推進により、ITエンジニアやデータサイエンティストの需要も急増しています。
そのため、これらの専門職では高額な給与が求められる状況です。特に高度な技術を持つ人材は、他国からも引き抜きが発生しており、企業間の競争が激しくなっています。
■外国人労働者に対する規制
シンガポールは外資系企業の誘致に積極的ですが、外国人労働者のビザ要件は厳しくなっています。特に、就労ビザ(Employment Pass / EP)の取得には、2024年時点で最低月給が約55万円(5,500 SDG)以上と設定されています。
不動産コスト
シンガポールの不動産価格は東南アジアで最も高額で、オフィスや商業スペースの賃料も高騰しています。ただし、法制度が整備されており、ビジネス環境の透明性が高いため、外資系企業にとっては依然として魅力的な市場です。
■オフィス賃料の高騰
シンガポールのビジネス地区(ラッフルズプレイスやマリーナベイ)では、グレードAオフィスの賃料が上昇しています。特に金融機関やIT企業の進出により、賃料は上昇傾向にありますが、郊外のビジネスパーク(例:ワンノース)は、より低コストなオフィススペースを提供しています。
■法制度と不動産取引の透明性
シンガポールは法制度がしっかりと整備されており、透明な不動産取引が可能です。長期リース契約も柔軟に対応しており、企業は安定した拠点を確保することができます。
税務コスト(法人税)
シンガポールの法人税率は17%と、東南アジアの中でも非常に低い水準です。シンガポール政府は外資企業の誘致に積極的で、企業がビジネスを展開しやすいようにさまざまな税制優遇措置を提供しています。
■主な税制優遇措置
・Pioneer Certificate Incentive(パイオニア証明制度):
特定の先進的な産業に対して、5〜15年間の法人税免除を提供し、新規事業の成長を支援します。この制度は、技術革新や新市場への進出を促進するためのものです。
・Development and Expansion Incentive(開発・拡張奨励措置):
企業の成長や事業拡大に対して、最大10年間の法人税減免が適用されます。これにより、企業の長期的な成長をサポートします。
・Double Tax Deduction for Internationalization(DTDi / 国際化促進のための二重税額控除):
海外市場への進出を支援するため、市場調査や出張費用に対して2倍の税額控除が認められます。これにより、企業の国際的な事業展開がしやすくなります。
これらの税制優遇措置を活用することで、コスト削減と競争力強化を図ることが可能になります。
ユーティリティコスト(公共料金)
シンガポールの公共料金は東南アジアの中で最も高額ですが、インフラの信頼性は非常に高いです。特に電力や通信インフラの安定性はビジネスにとって重要な要素です。
■電力供給の信頼性
シンガポールは電力供給が非常に安定しており、停電のリスクが極めて低いため、製造業やデータセンターの運営にも適しています。政府は再生可能エネルギーの導入にも力を入れており、企業が持続可能な運営を行うための環境が整っています。
■通信インフラ
高速インターネットと5Gネットワークの普及が進んでおり、デジタルビジネスに最適な環境が整っています。多くのグローバル企業がシンガポールにデータセンターを設置している理由の一つです。
■水道料金
シンガポールは水資源が乏しいため、水道料金は高めです。しかし、NEWater技術によるリサイクル水の供給により、水の安定供給を確保しています。これにより、製造業や研究開発拠点としても適した環境を提供しています。
7. 東南アジア各国の投資コストを比較して最適な進出戦略を
東南アジアへの進出を成功させるためには、自社のビジネスモデルや業界特性に応じた進出国の選定が重要です。進出先ごとに、労務コスト、不動産コスト、税制、ユーティリティコストなどのコスト構造が異なるため、各国の特徴を把握し、自社の戦略に合わせた選択をしましょう。
以下より、各コストの観点からの選定について簡潔に解説します。
労務コストの観点からの選定
製造業やBPO業界には、低賃金で若年層が多いベトナムやインドネシアが適しています。これらの国ではコストパフォーマンスが高く、単純作業やバックオフィス業務に最適です。
高度なスキルが求められるIT企業は、シンガポールやマレーシアが向いています。特にシンガポールは教育水準が高く、優秀な人材が豊富なことが利点です。ただし専門性が高い場合、労務コストが日本以上にかかってしまう可能性に注意が必要です。
不動産コストの観点からの選定
製造・物流拠点としては、賃料が低いマレーシア(ペナン、ジョホール)が有利です。ジョホールはシンガポールに近く、物流拠点としても最適と言えるでしょう。
IT・金融企業には、シンガポールのラッフルズプレイスやマリーナベイが人気ですが、賃料は高めです。コストを抑えたい場合は、ワンノースなどの郊外のビジネスパークも選択肢になり得ます。
税制・税務コストの観点からの選定
税制優遇を活用したい企業には、法人税率17%のシンガポールや、中小企業向けの優遇措置があるマレーシアが最適です。これにより、IT企業やスタートアップはコストを抑えつつ成長できます。
製造業やBPO企業は、税制優遇が充実しているベトナムやフィリピンを検討すると良いでしょう。
ユーティリティコストの観点からの選定
電力や通信インフラが安定している国を求める場合、シンガポールが最も適しています。特に、データセンターやIT関連の事業では、電力供給の信頼性が事業運営の要となることを考慮しましょう。
製造業においては、公共料金が比較的低いマレーシアやベトナムが有利です。これにより、ランニングコストを抑え、競争力のある価格で製品を生産できます。
8. 東南アジア進出なら「ワールドバリューコンサルティング」にお任せください
海外進出の夢を叶えるためのパートナーとしてご連絡をお待ちしております
今回は「東南アジア主要国の【海外進出に必要な投資コスト】」について解説しました。
私たち「ワールドバリューコンサルティング」の使命は、中小企業の皆様が大きな夢に向かって飛躍し、世界の舞台で輝けるようにサポートすることです。アジア圏への進出、海外進出は未知の領域かもしれませんが、その先には新たな可能性と成長が待っています。
私たちは、あなたの夢を共に追いかけ、成功への道を切り拓いていくことを心から楽しみにしています。
どんな些細なことでも構いません。私たちはいつでも、あなたの夢を叶えるためのパートナーとしてお待ちしております。
(参考文献)
・ Jetro
・ マレーシア統計局|2023年第1四半期の正規雇用者の月額賃金統計
・ マレーシア労務ニュース
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*セカイ各国・各分野の現地協力社&6万人を超える現地特派員により、セカイビジネスを共創
■3つのサポート領域
①BtoB販路開拓サポート
セカイ各国の現地企業との取引創出を目的としたサポート。
現地企業の探索条件の設計から着手し、企業探索・アポイント取得・商談〜交渉〜契約までワンストップで対応。
②BtoC販路開拓サポート
セカイ各国の消費者に直接販〜集客することを目的としたサポート。
販売はECモール・越境ECサイトを中心とし、集客はSNS活用から各種プロモーション(インフルエンサーマーケティング・広告運用など)海外でのブランディングを含めたマーケティング戦略全般対応。
③セカイで法人・店舗開業
セカイ各国現地に店舗開業を包括的にサポートすることを目的としたサポート。
現地法人設立(M&A含む)や店舗開業に伴う不動産(内装業者)探索や人材探索、各種手続き・ビザ申請等、ワンストップで対応。
■サポート対象エリア
基本的にはセカイ各国の支援に対応しておりますが、
これまでの多く携わってきたエリアは、アメリカ・ヨーロッパ・東南アジア・東アジアです。
■これまでの支援で最も多かったご相談
- 海外進出って何をすればよいの?
- 初めての海外進出をどのように進めれば不安、手伝って欲しい
- どこの国が最適なのか、一緒に考えて欲しい
- 進出検討中の国や市場を調査・分析し、自社との相性が知りたい
- 現地競合企業の情報・動向が知りたい
- どんな売り方が最適か、アドバイスが欲しい
- 海外進出事業計画策定を手伝って欲しい
- 事業戦略・マーケティング設計がしたい
- 食品・コスメ・医薬品に必要なFDA申請を手伝って欲しい
- 海外で販路開拓・拡張がしたい
- 海外現地企業と取引がしたい
- 海外現地法人設立(ビザ申請)をサポートして欲しい
- 海外でプロモーションがしたい
- 越境EC(自社サイト・モール)販路を広げたい・深めたい
- 海外のデジタルマーケティング戦略をサポートして欲しい
- 海外向けのウェブサイト(LP)をつくってほしい
- 海外向けのECサイトをつくってほしい
- 海外のSNS・ECの運用を手伝って欲しい
- すでに活動中の現地法人の悩み解決を手伝って欲しい
- 海外で店舗開業(飲食店含む)を総合サポートして欲しい
■主要施策
①BtoB販路開拓サポート
- 海外販路開拓・現地企業マッチングサポート
- 市場調査/現地視察
- 事業計画設計
- 海外ビジネスマッチング(現地企業探索サポート)
- 海外人材 探索・手配サポート
- 翻訳・通訳サポート
- 手続き・申請(FDA申請含む)サポート
- 海外税務/法務/労務/人事 サポート
- 輸出入/貿易/通関 サポート
- 海外販路開拓・現地企業マッチングサポート
- 各種市場調査/分析
↳企業信用調査
↳競合調査/分析
↳法規制調査
↳有識者調査・インタビュー
↳消費者調査・インタビュー
↳現地テストマーケティング
↳ウェブ調査/分析
②BtoC販路開拓サポート
- EC/越境EC運用代行サポート
- 各種サイト運用代行
- SNS運用代行サポート
- サイト(EC/多言語/LP)制作
- コンテンツ(画像・動画)制作デジタルマーケティングサポート
- プロモーションサポート
- SEO強化サポート
- Webプロモーション
↳インフルエンサープロモーション
↳現地メディアプロモーション
↳広告運用(リスティング広告・SNS広告など)
③法人・店舗開業
- グローバル飲食店開業サポート
- 現地法人設立サポート
- 現地視察サポート
- ビザ申請手続き
- 現地人材探索
- MAサポート
- クラウドファンティングサポート -
GLOBAL ANGLE Pte. Ltd.
70か国/90都市以上での現地に立脚したフィールド調査
GLOBAL ANGLEは海外進出・事業推進に必要な市場・産業調査サービス、デジタルマーケティングサービスを提供しています。70か国90都市以上にローカルリサーチャーを有し、現地の言語で、現地の人により、現地市場を調べることで生きた情報を抽出することを強みとしています。自社オンラインプラットホームで現地調査員管理・プロジェクト管理を行うことでスムーズなプロジェクト進行を実現しています。シンガポール本部プロジェクトマネージメントチームは海外事業コンサルタント/リサーチャーで形成されており、現地から取得した情報を分析・フォーマット化し、事業に活きる情報としてお届けしております。
実績:
東アジア(中国、韓国、台湾、香港等)
東南アジア(マレーシア、インドネシア、ベトナム、タイ等)
南アジア(インド、パキスタン、バングラディッシュ等)
北米(USA、メキシコ、カナダ)、南米(ブラジル、チリ等)
中東(トルコ、サウジアラビア等)
ヨーロッパ(イタリア、ドイツ、フランス、スペイン等)
アフリカ(南アフリカ、ケニア、エジプト、エチオピア、ナイジェリア等) -
株式会社東京コンサルティングファーム
【26ヵ国39拠点】各国日本人駐在員が現地にてサポートいたします。
弊社は、会計事務所を母体とした26ヵ国39拠点に展開するグローバルコンサルティングファームです。
2007年に日本の会計事務所として初めてインドに進出し、翌年ASEAN一帯、中南米等にも進出しました。歴が長く、実績・ノウハウも豊富にございます。
海外進出から海外子会社管理、クロスボーダーM&A、事業戦略再構築など国際ビジネスをトータルにサポートしています。
当社のサービスは、“ワンストップ”での サービスを提供できる環境を各国で整えており、特に会計・税務・法務・労務・人事の専門家を各国で有し、お客様のお困りごとに寄り添ったサービスを提供いたします。
<主要サービス>
・海外進出支援
進出相談から登記等の各種代行、進出後の継続サポートも行っています。月額8万円~の進出支援(GEO)もご用意しています。また、撤退時のサポートも行っています。
・クロスボーダーM&A(海外M&A)
海外企業の買収・売却による進出・撤退を支援しています。
・国際税務、監査、労務等
各国の税務・会計、監査や労務まで進出時に必要な業務を幅広く行っています。
・現地企業マッチングサポート
海外販路拡大、提携先のリストアップ、代理店のリストアップ、合弁パートナー探し等を行うことができます。TCGは現地に拠点・駐在員がいるため現地企業とのコネクションがあり、スピーディーに提携先のリストアップなどを行うことができます。