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海外ビジネス コラム

商習慣 2013年03月19日

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ベトナム進出成功のために知っておきたい現地情報! 「ベトナム人であり、この国の人ではない『越僑 ”Viet-Kieu”』」

吉田 雅之(株式会社マックアンドサンク)

旧正月の定番 ”Paris By Night”

旧正月の夜にボォ~っとテレビを眺め、DVDを観る時間、そんな時の定番は “Paris By Night” というベトナム版歌謡ショー!

1983年に始まったこの海外在住ベトナム人越僑の歌あり踊りありの大パーフォーマンスは、それぞれの時代とともに今年既に109本のエピソードを重ねる一大ヒット番組となりました。ただし、ベトナム国内では正式には販売できません。といってもなんでもありのこの国の事、コピーDVDは街中に溢れかえり、特に南部では誰もが知る人気のDVDとなっています。もちろん、YouTubeでも沢山アップされて気軽に楽しむ事が出来ます。

年によって色々なパターンがありますが、近年はラスベガス等のカジノ・ホテルでのショウ形式が多く、観客も「一世一代の晴れ姿」という感じで着飾って登場し、観ているだけで飽きません。在米越僑の間ではこの”Paris By Night”を観に出掛ける事が一つのステイタスでもある様子。余談ですが、登場する歌手、芸能人の整形の度合に留意してみると、鼻はまず100%かと…..。


Paris By Night No.106 DVDカバー写真

 

海外国籍海外在住のベトナム人、越僑

さて、越僑、それは海外国籍、海外在住のベトナム人を表します。1975年のサイゴン陥落、南ベトナム政府の消滅で、その時多くのベトナム人達が産まれた国を捨てました。行く先とコネとお金のある人達は飛行機や船でアメリカ・フランス・オーストラリアへ、そして何もない多くの人は漁船であてもなく海に乗り出し、行き着いた異国で暮らし始めました。 40年近く経った現在では100以上の国と地域に450万人が暮らします。その内40万人以上の人たちが先進各国で、科学者・専門職、大学・研究所での研究職として働き、成功しています。

旧正月前、サイゴンのタンソンニャット空港の入国ゲート前の出迎えの混雑は激しくなり、今年はなんと越僑専用の税関レーンが空港内に設けられた程です。同じ便に乗り合わせた時、その膨大な量の手荷物(ほとんどが親類縁者へのお土産)に驚くとともに、その列の後ろに並んでしまった時の絶望感と言ったら半端ではありませんでした。「故郷に錦を飾る」という言葉が頭に浮かびます。

具体的な数字を上げてみると「越僑」は、

*100以上の国、地域に450万人が居住
*40万人上の科学者、専門家、大学、研究所の研究者を擁する
*2012年の海外よりベトナムへの送金総額約100億ドル(2012年のベトナムへの海外直接投資=FDI総額は約120億ドル)
*2012年現在2000以上のプロジェクトに総額60億ドル以上を投資
*1993年以降の海外からの送金総額は約700億ドル(これは同期間のFDI総額と比較して72%に当たる額)

という感じ。つまり、毎年世界各国からこのベトナムへの海外直接投資の額とほぼ同程度の送金が在外越僑の手で成されているということになります。何しろキャッシュですから これはもう無視出来る数字ではありません。ベトナム・ドンという通貨は国際通貨ではないため、これがなければ海外との貿易で支払うドルも底をつきます。

そしてこの巨額の送金は誰かの生活を助ける為の援助ではなく、ベトナムにいる親戚、縁者の手によってこの国の各種事業に投資されるための資金となっています。ベトナムの人達は、資金を手元に置いておいたり、銀行に預けたままにはしません。資金があれば何らかの方法でこれを増やすことをまず考えます。それは不動産投資、製造業、流通、飲食、小売、代理店、観光、リゾート、果ては物売り屋台に至るまで、ありとあらゆる分野への投資が大小を問わず行われていきます。

 

ベトナム政府と越僑

当然ベトナム政府はこの力を取り込みに動きます。外務省の中に、The Ministry of Foreign Affairs State Committee for Overseas Vietnameseという委員会が組織されました。越僑側のThe community of Overseas Vietnamese と協調して2009年、2012年と2回の政府主催の越僑会議を開催し、1000人以上の海外各国越僑事業家を集めた会議で更なる越僑資本のこの国への投資を画策します。これはベトナム政府のしたたかで現実的な対応をよく表しています。かつての敵国でも利点があれば付き合う、一度国を捨てて出て行った人間でも役に立てば迎え入れます。

国が越僑投資を後押しするのもその経済力がこの国にとって大きな影響を持つためです。ベトナムの将来にとって、世界中で暮らし、事業を展開する越僑の経験・能力・知識が必要だからこそです。

越僑の投資の多くは不動産投資に魅力を感じています。一世の世代は年老い、齢を重ね、故郷に戻り人生を終えたいという意識も強くなり、ノスタルジックな感情が強いようです。二世世代は現在30歳から40歳が中心。現在のベトナムの経済状況を他の東南アジア各国と比較・研究し、絶好の儲ける機会と捉えて積極的に投資機会を探し、実行しています。

 

ベトナム人と越僑

一方で受け入れるベトナム現地の人々の感情はやや複雑です。羨ましい、だが、一旦は国を捨てた人達である、といった蔑み、自分たちだけいい思いをして、というやっかみ等々の感情が入り混じり、差別はしないまでも区別は確実にしています。また、南と北のそれぞれの人々の受け止め方の大きな違いもあります。長い時間を他国の文化の中で過ごし、生まれ育った世代は、ベトナム語は話すけれどベトナム文化の範疇に生きる人とは言えません。生活の仕方の彼方此方での軋轢は必然、そこからまた新たな区別が発生していきます。

お金や発展を考えれば受け入れたい、しかし顔かたちや言葉が同じでありながらその思考、行動様式が異なることへの反発は数多くの批判と否定を生みます。

加えて、越僑の側も、異国に渡ったこれまでの人生は容易ではなく、底辺から伸し上がったその経験をあからさまに故郷の人達に語ることはありません。弱音を決して他人に吐かないベトナム人の性格は何処で暮らしても変わることはありません。

とにもかくにも、ベトナム以外の国籍を持ち海外に暮らすベトナム人、越僑。その影響と役割は、この国ベトナムにとって想像以上の大きな存在となっています。

 

このコラムの著者

吉田 雅之

吉田 雅之

(株式会社マックアンドサンク)

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