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海外ビジネス コラム

商習慣 2013年11月21日

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タイ・サポート実録記2(メナーム社編)「切迫した現場の状況。そして光明」

但野 和博(Accounting Porter Co., Ltd.)

第2話 「そしてまた電話が鳴った」

携帯の表示に見知らぬ国番号からの着信が表示された。全く思いあたらないながらも呼び出しに応じると、既に聞きなれた外町社長の苦渋に満ちた顔がすぐ目の前にあるかのような声が耳に飛び込んできた。

「今、出張でカンボジアに来ているのですが、タイ法人から現場が混乱していると連絡を受けまして電話しました。」

といきなり身構えてしまうような第1声。

「いかがしましたか?」
「予定になかった他の経理スタッフも辞めてしまうかもしれないと報告を受けた。しかもこんな状況では経理のマネージャーももしかしたら辞めてしまうかもしれないという雰囲気らしい。こんなときに今タイに自分はいないのだけど、御社でもう少しリソースを提供できないでしょうか?」

送り込んだスタッフが直接何か迷惑をかけたわけではなさそうで、まずは一呼吸つけたものの、状況の切迫さはもう一呼吸をつかせてくれそうにはなかった。

「具体的にどのくらいのリソースがあれば乗り切れそうかなど含め、社長も戻られないと正確な状況がつかめないでしょう。その時にこちらからも提案可能な範囲で協力します。それからちょうど当社もそろそろプロパーリソースの追加採用面談設定中なので御社に適いそうな候補者がいたら紹介できるかもしれません」

ということで一旦電話をおいてもらったものの、さて当社も目下のところそれほどリソースが豊富なわけではない。タイ人リソース5人で、その内1人は弁護士なのでタイ人経理リソースだと4人しかいない。既に1名出しているので残り3人だが、皆それぞれそれなりにクライアントを抱えており、まるまる1か月どうぞなんていうフル対応リソースとしてはとてもまわせない。

とはいえ、最近その手のフル対応できる人を供出できないかという派遣事業のようなニーズが出てきているのは確かだ。その時はちょうどそのようなニーズにもある程度応えられるように追加採用しておこうと面談を始めたタイミングでもあったのだった。

ちなみに昨今のタイの経理人材事情としては、完全に売り手市場で月次決算が締められるという日本では経理であれば当たり前の要件でも、タイではなぜか付加価値級に扱われる。それもここ1~2年の間の経理人材高騰化は日本語を話せる人材と並んで目を見張るものがあり、感覚的にも2~3割上がっている気がしている。もちろん物価はそんなに上がっていない。そんな状況化で更には事業会社の経理採用ともバッティングをするため、採用見通しの確度を考えると、すぐに受けられますよとも即答できないのである。
 
窮余の策として、カンボジアから戻ってきてからの外町社長には、経理スタッフの補充の面では当社にプロパー面談に来ている候補者で御社に適合しそうな人がいたら、紹介元の人材会社経由にて御社を受けてもらうように誘導する形で紹介しますということ、そして、当面の現場の補充という面では月の内1週間の間だけ今送り込んでいるスタッフ以外の者が対応することで月次処理に支障がないようにフォローしますということで話を納得いただいたのである。そう、少なくとも外町社長には納得いただいたのである。

それからまた数日ほど経過したある日のこと。

「えーっと、2名フル勤務で送り込んでくれるような話しではないかと現場の経理マネージャーが思っておりまして……、どうだったでしょうか?」
「え~っ、いやいやそれはさすがに厳しいですよ、当社でも」

現場の混乱や緊張から外町社長が相当ご苦労されているのは痛いほど分かった。
しかも、今現場を外町社長とともに最前線で管理していて以前紹介を受けた静本さんも同じように考えているらしい。現場の緊張がピークに達しているのは間違いない。

「まずい……」

頭の中でよぎったのは恐らく現場がまわらないという切迫した状況に本来冷静に対処すべきはずの日本人管理者も巻き込まれており、加えて一時療法的で決して根本的な解決にはならない当社リソースの活用についての誤解も生じているということだ。
最初に引き合わせを受けたあの光の差し込む会議室での高尚な思いは遠くになっているに違いなかった。

まずは早急に誤解を解くために、多少厳しいながらも正論として状況の改善には御社自身が自力で対応していく意思が重要ですということをお伝えした。

その時の言葉は、これで先方の気分を害して契約解消になっても仕方がないという内容のもので、今考えても恐らく失礼なものに違いなかった。

それからほどなくして外町社長と静本さんが一緒に当社に来られた。

「ぜひ引き続きお願いしたい」

救われた気がしたというのはこの時の心境かもしれない。
この時のお二人には覚悟という光明が見えた。
えらそうに言える立場ではないが、メナーム社をもっと助けなければというモチベーションになった。

不思議なことに、この日を境に少なからず環境が整ってきた。

まず、当社プロパー採用人材もスタッフの紹介により意外にもすんなり決まった。当面はバックアップ要員としてもメナーム社のために提供することができる。

メナーム社のほうも補充の採用ができたとのこと。
更に送り込んでいるスタッフもすっかり頼りにされている。ただ、頼りにされているだけでは何の解決策にもならないので、現場に入る強みを活かして現場で経験していることをベースに業務を見える化して問題点を別途あぶり出していき、改善の材料にしてくださいという提案を行い、これについては今も続いているところだ。

そしてもうひとつ明るい知らせとしては上流系のしっかりしたコンサルを入れたとのこと。このコンサルとサンドイッチ式で上から下から一体となっていけばかなり改善が進むはずだ。

もっとも今の段階では何から着手するべきかまでは見えてないのでその役割として当社が担う分としてもこちらとしても覚悟を決めて取り組もう。

後日、その覚悟はある意味倍返しで返ってくることは多少の予感はしつつもこの時はさして気にならなかった……。
(続く)

※クライアント様の匿名性を保つために社名・人名等をはじめ一部事実とは異なり表現を変えている部分があります。また同様の理由にて事実から離れすぎない程度に一部脚色している部分もあります。

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但野 和博

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