商習慣 2014年07月01日
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円安にも関わらず増え続ける「海外進出」を『体系化』 その2
海外進出の5W2Hとは?
ここまで、一言に海外進出といっても、キッカケは様々でそれぞれ留意点があるということでした。
では次に、更に具体的に海外進出の準備に入っていきましょう。
まずは、海外進出の5W2Hを明確にすることがおすすめです。
◆ Why:進出目的
海外進出の目的の整理ですが、実は曖昧であることも散見されます。いつの間にか海外進出それ自体が目的化してしまい、プロジェクトが迷走することもないわけではありません。特に取引先や中国企業など、他社からのオファーを受けた場合はオファーを受ける理由を考える必要があると思います。
海外進出の理由としては、需要地の近隣に生産拠点や販売拠点を置く(市場立地)、日本よりも低い生産コストに着目した生産拠点設置(生産基地)、同じく部品の安さに着目した調達拠点設置といったケースが多いかと思います。ただ、中国のように生産コストの高騰や経済成長によって生産基地が市場に変わるケースもあります。進出してからも何故、その国に拠点を設けているのか考え続ける必要がありそうです。
◆ What:事業内容
まさに会社で何をやるかという議論であり、製品ラインナップ(生産品目・取扱品目)、サービス内容を決めることになります。通常は本業(主要製品)が進出対象になると思いますし、業歴が長い事業、製品になるかと思います。或いはそのような本業に関連するサービス、機械事業のメンテナンスや販売のために海外拠点を設ける事例は多いものです。
ところが間々、「海外だから新しいことに挑戦しよう」「海外で新しいビジネスモデルを確立してグローバルに(或いは日本に)還元しよう」と考える方もおられます。確かに経営資源に余力のある企業であればリスクを取れるかもしれませんし、日本以外の国で成功した事業モデルを日本に逆輸入するケースもありえる話とはいえます。しかし、事業が万一、失敗した場合、本業ではカバーしきれないような本社の事業基盤まで毀損するダメージを受けてしまっては元も子もありません。日本とは「勝手が違う」海外市場ですので、「勝負できる事業、製品・サービス」で臨まれる事をお勧めします。
◆ Where:場所
事業立地については大きく国レベル、同一国での地域レベルで考える必要があります。国レベルではその国の経済成長、人々の購買力、人件費等の生産コスト、税制、投資制度、政情の安定性等を総合的に勘案して決めます。所謂、「カントリーリスク」もここで議論されます。
尖閣諸島国有化以降、一部企業が中国から拠点を移して東南アジアへシフトするといった話を耳にしますが、これは中国の経済成長や購買力の高まりといったプラス面よりも、生産コスト上昇や反日機運による事業への様々な障害というマイナス面を危惧してのことと思われます。中国の事例は、経済成長率や市場規模といった経済合理性だけでは割り切れない部分が海外進出にある点をよく考えさせる事例と言えるでしょう。また同一国でも投資環境が異なる国が存在します。代表格は中国ですが、台湾等でも工業団地によって優遇条件が異なるケースがあります。国を定めたところでできれば複数の工業団地を直接見学して、当局担当者と話をしてみて、最終進出地を決めるのがベストと思いますが、最終決定に至るプロセスについては後段にて別途御説明したいと思います。
◆ When:設立スケジュール
設立スケジュール、申請等のタイミングの検討が含まれます。会社設立(拠点開設)スケジュールについては余裕を持ったスケジュールであることが第一条件と感じております。特に中国のように地域によって進出申請フローに異なる国、ミャンマーのように企業進出に関する制度整備が途上の国については当局に申請手順をステップバイステップで確認する事態が想定され、スケジュールが後ろ倒しになりやすいと思います。
上場企業でIR上、中期経営計画の関係からスケジュールの早期化を求められているという話も聞きましたが、当局、提携候補との交渉を日本企業の都合だけで早めるのは現実的には難しいと思いますし、スケジュールを優先して、交渉において譲歩を重ねて自社に不利となっては意味がないとも言えます。詳細は各種交渉のところで御説明しますが、「時間的な余裕が武器」になることもありますので行過ぎた時間制限は避けるべきでしょう。
◆ Who:パートナーの有無、出資形態・出資比率
当然、パートナーが居ない、即ち独資進出ということもありえます。極論ですが、現地企業を100%買収(M&A)して進出する方法もあります。M&A自体は日本国内外問わず増加しておりますが、M&A経験がない日本企業がいきなり海外企業を買収するのはノウハウの点でややハードルが高いと言えます。こちらについては後段で別途御説明します。
パートナーが存在する場合は新設会社を共同出資によって設立する(Joint Venture:
JV)ケースが多いようですが、パートナー企業に完全買収ではない範囲で直接出資をするのも実質的にはJVと同様です。もっと言えば、JVとM&Aだけがパートナーとの関係を規定するのもではありません。OEM・ODM、共同開発、代理店契約等もパートナーとの関係のあり方と思われます。しばしばアライアンス戦略という言葉が使われますが、M&AやJVのような関係が深いアライアンスもあればOEMや代理店契約等といった浅いアライアンスも選択肢です。
◆ How:進出形態
現地法人、支店、事務所等の進出スタイルも検討項目です。ただ、支店や事務所等は先述したパートナーが居ない状況(独資)でのみ選択できる進出形態ですし、更に支店や事務所では行動が制限される(法人格の扱いが微妙、営業活動が制限される等)ことがあるため実際には現地法人設立が多くなると思います。ただ、経営資源の制約や本格的な海外進出に先立つ準備という視点から情報収集拠点として事務所設立を選択することもあります。情報収集拠点としての役割を果たした後、現地法人に格上げ(実際には事務所を廃止して、現地法人を設立する)することもあります。また数は多くないですが、金融、建築等の業種では法規制の関係で支店や事務所を選択するケースもあります。
◆ How Much:投資規模
投資金額ですが、海外進出検討の初期段階では所要投資額が定まらないケースが多いと思われます。各種事業計画が定まる中で必要資金額が見えてくるケースもあれば、所定の金額内で収めるように事業計画を立案することもあるかと思います。これも検討の初期段階では見えにくいこともあります。後述する調査やFS作成を通じて、投資規模を具体的に推定することが多かろうと思います。
また投資総額だけではなく資本金・借入のバランスも後々重要になってきます。特に外国からの借入金(外債)については中国のように投注差として金額の制限を受ける国のほか、当局への届出・報告を求める国がございますので資金調達の検討時には留意が必要です。
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関連記事:
「海外進出した日本企業からの教え Vol1~どの業種がどこに拠点を持つか?~」
http://kaigai.zuuonline.com/archives/344
「企業が海外進出を考えるとき~プロローグ編~」
http://kaigai.zuuonline.com/archives/203
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