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海外ビジネス コラム

商習慣 2014年07月15日

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円安にも関わらず増え続ける「海外進出」を『体系化』 その3

冨田 和成(株式会社ZUU)

海外進出で欠かせない8つのスペシャリスト

ここまで準備が整った段階で、非常に重要なビジネスパートナーとなる、各種専門家探しです。どのようなパートナーを見つけるかが、海外進出の結果を大きく左右するので、パートナー選びは慎重に行う必要があります。

◆ (1)コンサルタント
一番捉え所が難しいのがコンサルタントの立ち位置かもしれません。全体としては「水先案内人」「プロデューサー」としての役割、調査・事業検討においては「(企業・市場の)アナリスト」としての役割も担うことが多い存在です。
自社内に海外進出経験、海外事業立ち上げの経験者が豊富であればコンサルタントは必ずしも必要ではありません。ただ、初めての海外進出(初めての国)、調査や事業検討等で第三者の客観的な意見が欲しい場合にはコンサルタントに依頼することが多いように思います。コンサルタントは多種多様ですが、大きく以下のような分類ができると思います。

A.専業(大手)コンサルティング会社
外資系有名コンサルティングファームから日系の独立系コンサルティングファーム、シンクタンクまでグローバル戦略立案、海外事業サポートを手掛ける会社群です。専業コンサルティングということで専門性は高いですが、各社により守備範囲は異なり、全社的なグローバル戦略策定から海外進出の実務的な対応まで幅広いと思われます。また有力コンサルティング会社なので国を問わず、対応してもらえることが多いようです。
反面、守備範囲が広い故にコンサルタントに依頼(リテイン)する際にはどのような業務(スコープ)を委託する検討する必要もあります。
これは後述B.兼業コンサルティングとも共通しますが、例えば、全社的なグローバル戦略策定が得意なコンサルティングファームに海外進出の実務を依頼してしまう、或いは特定国の海外進出の実務対応が得意なコンサルティング会社に全社的、全世界的なグローバル戦略策定を依頼してしまう、といったことになれば双方時間と費用の無駄になります。実際の役務提供のイメージ等、双方よくすり合わせておかないとリテインが無駄になるリスクもあり、要留意です。

B.兼業コンサルティング(会計士・弁護士・銀行・商社等)
専業(大手)コンサルティング会社以外では、会計士、弁護士、銀行、商社等がコンサルティング機能を提供することがあります。体制として専門部署があるケースから担当者が属人的に行うケースまで差はありますが、大手企業によるサポート、守備範囲の広さという点では先述のA.に近いと思います。
A.との相違点は、「兼業」ということでコンサルティングの最終的な目標が「本業」にあるところと思われます(各社により温度差はあるようですが)。会計士であれば海外拠点設立後の監査業務での利用、弁護士であれば継続的な法務相談での利用、銀行であれば口座開設・送金・預金・貸出での利用、商社であれば商流への関与等が考えられます。「本業」での利用が事実上の前提になるケースもありますので会計士や銀行等では日本本社での利用企業との整合性に留意しておく必要があると思われます。

C.個人コンサルティング事務所
A.、B.等のOBが設立するケース、駐在員OBが個人事務所を立ち上げるケースが多いようです。規模が小さいため、対象国や業務の守備範囲に限りはありますが、フィーは相対的にA.、B.よりも低く、属人的なつながり、現場に入り込んでのフォロー等はA.、B.に優ることもあると思われます。
反面、コンサルティングサービスのクオリティにばらつきがあること、コンサルタントかコーディネーターか見分けがつかないケースもあります。また極めて少ないと思いますがクライアントの利益に相反する動きをするコンサルタントもなくはないと思われます。「企業が海外進出を考えるとき」の中でも御説明しましたが、進出国要人等との属人的なつながりばかりを強調するコンサルタントの登用は少し考えた方が宜しいかもしれません。

◆ (2)調査会社
日本で言うところの帝国データバンク、東京工商リサーチ等が該当します。海外ではD&B(ダン)レポートが有名です。国内の調査会社経由で海外企業データを入手するケース、銀行や商社経由で現地の調査会社に依頼するケースが多いようです。但し、国によって企業情報の開示状況はかなり異なるため、日本での調査レポートと同様の内容を一律期待することは難しいと思います。
調査会社に依頼されるお客様の多くは財務情報の入手を目的とされると思われますが、非上場企業の財務情報については(中華圏に限って申し上げれば)容易ではないというのが実情です。逆に申し上げますと上場企業(株式の流通問わず、店頭公開等で証券取引所のコードを持つ企業)であれば公開情報の範囲で(インターネット上等で、無料にて誰でも入手できる情報)かなりの情報が入手できます。まずは調査対象が上場企業かどうかを確認し、非上場企業でインターネット等でも情報が出ておらず、調べようがないときに調査会社に依頼するというのが調査会社のスタンダードな利用方法と思います。詳細は調査のパートでまた御説明したいと思います。
また一部のコンサルタントでは調査業務を引き受けるケースもありますが、コンサルタント自身も調査会社に依頼するケースもありますので調査方法については調査依頼時に協議されることをお勧めします。

◆ (3)弁護士・行政書士
海外において単独で海外進出申請を行う際、弁護士・行政書士(呼称は各国によって異なる)の存在は欠かせません。
例えば、進出国に提出する書類準備・提出、場合によっては当局との実務的な交渉を行うこともあります。
中国の例では日本の行政書士に該当する申請書類提出の代行会社が当局から各ケースに見合った書類雛形を入手し、スケジュール感や必要書類について当局と交渉することがあります。地方によっては弁護士事務所が代行会社の役割を果たすことがあります。当局とのリレーションシップが強い代行会社を選ぶことが、海外進出成功の一つの要素とも言っても過言ではないかもしれません。
海外進出では進出国との企業、当局等と幾つかの契約書を締結することが一般的です。主だったところでは各種提携契約(技術支援・販売代理・合弁会社設立・資本提携等)や進出契約(土地の貸借売買・インフラ整備・各種税優遇等)であり、大きなプロジェクトでは最終契約に至るまでにLOI・MOU(最終契約前の覚書)等を結ぶケースも少なくありません。各種契約書のリーガルチェックは弁護士の役割になります。
最近では海外進出をM&Aを通じて行うことも多くなってきました。詳細はM&Aの部分で御説明しますが、上述の契約書のリーガルチェックのほか、M&Aにおける詳細調査Due Diligence(DD)も弁護士が担う役割の一つ(法務DD)です。加えて、(万一のケースですが)撤退時の清算・破産実務においても各種申請、労務関係の説明・手続等で弁護士への依頼が必要になります。

◆ (4)会計士
弁護士と同様に重要な役割を果たすのが会計士です。企業設立時は資本金の払込証明、企業設立後は監査業務、納税関連業務、弁護士と同じく企業・駐在員事務所撤退時の清算業務等で会計士の関与が必要です。またM&Aにおいても財務・税務DD等で会計士の存在は欠かせません。
コンサルタントと同じように弁護士、会計士も多様な事務所(ファーム)が存在しますが、大きくグローバル大手ファームとローカルファームに分かれます。
グローバル大手については会計士事務所の”Big 4(デロイト・PwC・KPMG・アーネストアンドヤーング)”、ベーカーアンドマッケンジーのようなグローバル大手弁護士事務所等で、自社で日本、アジア各国に事務所やデスクを持っています。日本の大手法律事務所も一部は直接海外事務所を擁しているケースがありますが、後述のローカルファームと提携しているケースもございます。
ローカルファームは基本的にその国でしか展開していないファームですが、大手ローカルファームは日系ファームと提携しているケースもあり、日系の弁護士・会計士事務所への依頼時に確認することをお勧めします。
弁護士・会計士に依頼する場合は現地での日本語対応が一つの目線になると思います。
勿論、英語で実務対応ができるスタッフが日本本社に居れば問題ないですが、専門用語でのやりとりであれば日本語の方がストレスフリーと思います。大手ファームであれば自社の拠点網の中で日本人を派遣しているケース、日本企業の進出が多い国では専門対応チームを進出国で設置しているケースもあります。
ローカルファームの場合でも大手ファームから日本人が現地で独立したファームや特定国の財務・税務・法務を専門とした日本人の独立系弁護士・会計士が少なからず存在します。フィー目線ではローカルファーム・独立系ファームの方がグローバル大手ファームより低いケースが多いと思われます。日本語対応可否、フィー目線、日本でリテインしている弁護士・会計士との関係等を踏まえて総合的に判断しているリテインすることになるかと思います。

◆ (5)翻訳・通訳
中国、ベトナム等では会社設立申請時に現地語で日本での商業登記簿謄本等の日本で発行された書類を訳すよう求めており、翻訳会社のリテインが必要になります。
また当局交渉、提携交渉において英語での交渉が難しい、自社内に進出国の言語に明るい人材が居ない場合は通訳を雇う必要があります(交渉においてはコンサルタントが通訳の役割を果たすケースもあります)。

◆ (6)銀行
銀行も海外進出の初期から日常業務まで幅広く関係してきます。
会社設立時は資本金口座の開設・資本金送金、設立後も駐在員事務所経費・現地法人から日本への配当金・親子ローン(日本本社から進出国現地法人への貸付)の送金、現地における預金、決済、借入、両替等、その役割は日本となんら変わりません。
現状、邦銀メガバンク三行は日本企業が多く進出している国には殆ど支店或いは現地法人を設立しています。しかし、進出が一番進んでいる中国でも全域をフォローする程の拠点数があるとは言い辛い状況です。進出地域によっては最寄の邦銀拠点まで省(日本の都道府県に相当)を跨ぐことも考えられます。中国以外の国でも首都に一箇所支店や現地法人があるだけのケースが大半と思われます。従って、日常決済(日々の給与・売買)は近隣の地場銀行、資本金や設備投資資金借入等は邦銀の拠点に依頼するといった対応が必要になると思います。
また借入についても国によって外国からの借金(外債:親子ローンや邦銀本体からの外貨借入)には申請を要するケースや金額制限が設けられているケースがあり、大型の資金調達時には確認が必要になります。

◆ (7)不動産業者・工事業者(ゼネコン)・エンジニアリング会社
国を問わず、駐在員事務所、現地法人を設置した場合は登録住所が必要になります。
駐在員事務所や販売会社であればオフィス、生産法人であれば工場住所が登録住所になるでしょう。オフィスであれば不動産業者に依頼し、オフィス物件を紹介してもらうことになります。
中国では大家との賃貸契約書が登録住所証明の一つにもなりますので新規での海外進出である旨を説明する必要もあります。オフィスがそのまま使えるとは限りませんので内装業者に依頼して、家具搬入や配線工事も必要になります。
工場の場合は当局と土地の賃貸(使用権払下)契約を結んだ後に工事となるケースが一般的です。標準工場の形で建屋が用意されている場合もありますが、更地から自社のイメージに合う工場を建てる場合は工事業者に依頼する必要があります。工場規模にもよりますが、アジアに進出している日系ゼネコン(その協力会社)に依頼するケースもよく伺います。
国によっては工場建設時に用地利用計画、工場建設計画、環境アセスメントを当局に提出する必要もあります。近年では中国では環境問題に敏感になっており、環境負荷を当局もチェックしています。事業検討の部分でも御説明しますが、事業計画書(FS)作成時にも環境負荷が一つのポイントになっており、中国では専門の環境アセスメント会社、当局提出用のFSを作成するエンジニアリング会社も存在します。

◆ (8)人材派遣会社
業態を問わず、海外で新事業を立ち上げる場合には人材が必要です。
当初は日本人駐在員の比率が多いでしょうが、当初から現地人材を採用するのが一般的です。人材募集には専門の人材派遣会社が関与するケースが多く、ローカルの人材派遣会社と(地域によってですが)日系の人材派遣会社をそれぞれ活用することになります。
また当局が地元大学と懇意にしている場合には大学の担当者と接触する方法もあります。

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関連記事:
「為替の海外進出への影響」

http://kaigai.zuuonline.com/archives/1921

「海外進出による国内事業への好影響について」

http://kaigai.zuuonline.com/archives/1650

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このコラムの著者

冨田 和成

冨田 和成

(株式会社ZUU)

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