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海外ビジネス コラム

商習慣 2016年11月28日

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オーストラリアで、日本人の勤勉さが活かせる業種は何?

永井 政光(NM AUSTRALIA PTY LTD)

オーストラリアの人口は2000万人程度。東京都と同じくらいですが、移民で成り立っている国であり、厳密にオーストラリア人と呼べれるのは、元々の原住民アポリジニくらいで古くはヨーロッパ、近年ではアジアなどから多くの移民が生活をしています。彼らの性格、文化、思考など様々で、多くの個性 (国民性) が混ざり合い、ぶつかり合って成り立っています。

では、日本人は海外からどのように見られ、評価されているのでしょうか。

オーストラリアから見た日本人

個性豊かな民族の中に入ると、日本人は目立たず、大人しい印象を受けているのは事実です。もちろん抜群のリーダーシップを発揮し、ビジネスを切り盛りしている人もいますが、大半は、多かれ少なかれ対立を避ける温和なイメージを持たれています。ぐいぐい意見を通し、リーダーシップを発揮し、あの手この手のルールの裏を突くような交渉術や、ルールギリギリの商法は、元来農耕民族の国民性から考えると、向いていないのかもしれません。

しかし、ゼロから何かを生み出すクリエイティブな能力は劣るかもしれませんが、物事がしっかりと決まり、方向性が定まっている場合の運営能力は、他国の人間に比べ、群を抜いています。勤勉、信頼性、物事を解決する能力、成功しても常に改良し続ける姿勢。これらが、オーストラリアに限らず、世界中で日本人が評価されている部分であり、強みでもあります。

金融工学を駆使し、投資や金融、証券などの分野で活躍している日本人も多くいますが、これらは元来欧米人が考案した分野で彼らの領域になります。彼らは自分達に有利になるようにルールを設置・変更するのに長けていますので、日本人があえて彼らの得意分野で勝負し、勝利を収めるのは困難だと考えております。せっかくこちらが軌道に乗り出しても、ルールを改正され、振出しに戻され、今までの苦労が水の泡……、などという可能性も、無きにしも非ずです。

では、日本人の長所が活かせ、かつ大幅なルール改正などの嫌がらせを受けない分野は何か? ずばり物流・運輸の業界が、可能性が高いと考えています。

オーストラリアの物流・運輸業界の現状

なぜこの分野は我々日本人にとってビジネスチャンスが大なのか。まずはオーストラリアの物流・運輸業界の環境、状況はどうなっているかをお話いたします。

これは物流・運輸業界に限ったことではありませんが、オーストラリアのガテン系の人件費の高さは驚くばかりです。この国は労働組合が非常に力を持っており、アワードと呼ばれる労働基準法にも基づいて給与が支払われているので、高くても致し方がないのですが、正直 「う~ん」 と唸ってしまう賃金になっていることもしばしばあります。労働時間が8時間を超えると時給が1.5倍。10時間を超えると2倍になります。このあたりまでは常識の範囲ですが、夜勤になるとやはり時給が2倍になり、パブリックホリデーと呼ばれる祝日になると、時給が3倍にも跳ね上がります。

なぜここまで時給を上げるのか。その答えは単純明快で、所謂3Kと言う仕事を好まないのは万国共通の話で、休日に稼動してくれる人が集まらない。集まらないから高い時給を提示せざるを得ない。たとえば、コンテナから荷物の上げ下ろしをする単純作業でどのくらいの賃金が発生すると思いますか? 細かな状況によって変わりますが、だいたい平日の昼間で時給25~30ドル(1ドル100円計算で2500円以上) になります。これに残業をすればそのぶんの割増賃金。また土日祝日勤務となれば、2倍、3倍の割増賃金を支払う必要があります。

労働者がそれに見合うパフォーマンスを発揮してくれれば、これだけの賃金を払う必然性もありますが、大半はやる気なさそうに、ちんたら荷物の上げ下ろしをして、時間を必要以上に伸ばし、時給を稼ごうとする労働者ばかりです。私が実際に調査と称してその現場に立ち会ったところ、もし日本で同じボリュームの仕事をすれば、オーストラリアで12時間かかるところを、おそらく10時間未満、場合によっては半分の時間で切り上げられると思いました。また、現場を取り仕切る現場監督がその場にいないことも多々あり、彼らが何をしているのかなと見渡すと、端のほうでお茶を飲んだり、煙草をふかしたり、談笑していたりして、本来の業務を遂行していない場面に遭遇した事も多々有りました。

近年日系企業もオーストラリアの物流業界に目を向け始め、日本郵政がオーストラリア最大の物流会社トールを買収するなど、積極的なアプローチを行っております。万事細かい日系企業の観点から見れば、オーストラリアの物流・運輸業界はユーザーへの料金を高く設定し、問題点の改善・改良、経営体制の引き締めなどを行わなくても、十分な利益を確保している。このあたり、サービスのありきの目線から考えるのに慣れた日本人は 「いかがなものか」 と感じるでしょう。

逆に言えば、「時間厳守。期日を守る。注意力を持つ。効率が悪い点は改良する」 などなど、日本でごくごく一般的に行われていることをやれば、それだけでオーストラリアでは、他社とは違う付加価値としての評価を得ることができます。

次回も、物流・運輸業界の現状について少し書いていきます。

このコラムの著者

永井 政光

永井 政光

(NM AUSTRALIA PTY LTD)

<オーストラリアビジネスの専門家

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