時事 2013年12月11日
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【特集 世界各国の税制度】タイ進出の落とし穴? 煩雑なタイの経理事務作業
タイ国民の税金に対する意識は希薄?
日本では来年春からの消費税増税も決まり、各メディアでも盛んに取り上げられているのは皆さんの知るところと思います。そこで、私が在住及び本拠とするタイ国では、そもそも消費税に相当するVAT(付加価値税)やその他税金のことにつきタイの人がどういう考え方を持っているかということを念頭に話を進めることにします。
まず、そもそもタイにおいて直接税である所得税を納めている人は、数から言うとほんのわずかです。課税点である税金を納める対象となる人が総人口の4%位とも言われているように、多くの人にとって直接税ということに関しての意識は希薄だと思われます。
なぜなら、所得控除分を含めると年間20万バーツ程度が事実上の課税点となり、大卒で月額給与が1万5千バーツくらいの水準で始まり、30歳になる前にようやく課税点を超えるという感覚だからです。最近でこそタイでの大学進学率も50%程度あると言われておりますが、従来から学歴社会による収入格差が存在することを考えると、この水準はある程度推して計るべしという気がします。
その代わりに間接税であるVATは現行では時限措置ということで1992年のVAT導入時より7%(本来は10%で一時的に10%の時もあったが、現在は2014年9月までの措置として7%が適用されている)で現在の日本より税率は高い上に、関税なども含めた税収総額に対する間接税の割合は約6割とも言われ、日本がおよそ逆の比率であることを考えると一般の関心としてはやはりVATの税率に関心が向く背景を持っていると言えます。
ただし、VATの価格表示は物品や飲食店などで大抵は総額込みの表示となっているので日常で意識することはあまりないかもしれません。かくいう私自身もレシートを確認した時くらいしか7%を実感することはありません。とはいえ、法人取引は税額票というものを発行することがVATの税額控除の要件となっていることから仕事の上ではいつも意識しております。
日本企業の想定以上に煩雑なタイの経理事務作業
ここで出てきた税額票なるものですが、タイでは日本のように帳簿で後から一括して消費税等を処理する方法ではなく、VAT取引の都度税額票なる税法で定められた記載要件を満たす書類を発行することが義務付けられております。
これが企業間取引では特に煩雑で、日系企業が進出前に想定しているよりも一般的に事務業務が多いのです。しかも取引量の過多に拠らず課税業者であれば毎月申告納付する必要があります(納付がなくても要申告)。
ちなみにタイではこれも経理という括り方で職種上考えられているので、タイで経理スタッフを採用するということは一般的に最低限これらの月次処理に対応できることをまずは意味します。ここがミソで、経理スタッフを採用したからと言って実は月次の試算表が締められなかったというのはよくある話しで、日本的に発生ベースできちんと伝票処理をしてくれる人を探すとなると給与も探し方も、もう一段階踏み込む必要があります。それほどここタイでは経理スタッフにとっての日常は日々の取引の処理と言っても過言ではなりません。
背景にある税務当局の思惑を意識したマーケット進出を
少し話がそれましたが、VATが煩雑だとお話ししたついでにもう一つ加えると、タイでは源泉税も毎月の処理が必要となっております。しかも物品の購入に関わるもの以外のほとんどの法人間取引では源泉税が発生します。取引上の税率はタイ国内間では2%~5%程度なので一つ一つはそれほどでなくても物品販売以外のサービス業を業種としている会社などは受取時も支払時も源泉税が適用され、それもVAT同様取引毎の源泉徴収票の発行及び受領が義務づけられているのです。
源泉税はその性質上法人税の前払いになりますが、このように源泉税が広く浅く適用されている背景としては税務当局において売上側を補足するよりも支払側で補足するほうが容易という発想が見え隠れしております。
VATも還付制度はありますが、税務調査を受けることは必須となっておりそういった背景からも一度納めたものは相当の理由がない限り還付に時間と労力を要します。当社もいくつか還付のお手伝いをさせていただきましたが、1年くらいかかるのは通常で場合によっては2年位かかる場合もあります。
このように税金については日常生活では所得税はおろか、VATなどの間接税に対してもそれほど意識せずにすみますが、仕事としてタイに関わる人にとっては身近なことであるというのが率直なところです。
タイの法人税率は暫定措置で最高税率が現在20%に下がっており、さらに個人所得税の引き下げも最近発表されました。このような人気取り政策はどこかの国に似ている気もしますが、タイも実は高齢化社会などの問題を迎えようとしております。これからタイに進出される皆さんにはこういった背景があることも頭に入れながら、タイのマーケットで自社のサービスをいかに展開していけるかという観点で検討いただければと思います。
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