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時事 2013年02月07日

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【特集2012年総括・2013年予測】韓国市場進出は果たして得策か? 好調な経済の裏に潜む問題点とは?

黄 泰成(株式会社スターシア・インベストメント)

韓国経済は絶好調? ウォン安と円高の影響は? 日本経済と比較

2012年の韓国経済は、絶好調であると感じている日本人は多いと思います。日本経済が閉塞感に包まれる一方で、新興国を中心に積極的に海外展開を行なっている韓国企業の元気さが目立つからでしょう。

実際、サムスン電子は2012年度の連結決算で、売上高16.8兆円、当期利益2.0兆円という圧倒的な存在感を見せています。現代自動車グループも世界販売台数で第5位にまで成長しており、中国市場ではフォルクスワーゲンに次ぐ第2位の位置につけているという好調ぶりです。その他にもLGの新興国での白物家電のシェアが高いことや、製鉄業・造船業等、押し並べて過去日本企業が得意として来た分野で日系企業を凌ぐまでに成長して来ています。

このような背景として、「ウォン安政策」を指摘する声をよく耳にします。確かにリーマンショック前に比べるとウォンは米国ドルに対して比較的安い水準で推移しているのは事実です。リーマンショック後の期間はほぼ李明博政権の時期と重なりますので、李大統領の政策としてウォン安水準を維持していたというのも事実なのでしょう。しかし、もともとウォンは、1ドル=約1000ウォンという水準が目安とされていましたので、現在の1ドル=約1100ウォンという水準はそこまで極端なウォン安であるとは思えません。3年前と比較しても1,167ウォンだったものが1100ウォン程度の水準になったにすぎず、むしろウォン高といってもいいかもしれません。したがって、日本との比較で見る場合には、ウォン安が韓国企業の好調を後押ししたという側面だけでなく、円高が日系企業の競争力を弱体化させたという側面もきちんと認識する必要があります。

 

実質はマイナス成長? 財閥系企業の好調の裏に潜む韓国経済の問題点

さて、このように絶好調に見える韓国経済ですが、実際は非常に深刻な問題を抱えています。最も大きな問題は、富の偏在化です。よく指摘されることですが李大統領は大手財閥の現代建設のCEOでした。そのためか李大統領の経済政策は、新自由主義的な発想が色濃く出たものが多く、財閥が韓国経済を牽引していけばその波及効果で国民全体が潤うという考えがベースにあります。

また、資源も無く国内市場も小さな韓国が生き残るためには自由貿易を積極的に推進していかないといけないという信念のもと、EUやアメリカ等とのFTAを締結したという実績も残しています。このような経済政策の結果、韓国の10大財閥の売上高はGDPの約7割を占めるまでに巨大化し、一方で経済的弱者と呼ばれる人たちの生活は益々貧窮化していきました。

財閥企業が増大する一方で国全体の2012年の経済成長率は2.2%程度と予想されています。物価上昇率も約2.2%と言われていますので、実質成長率は0%です。また、一昨年(2011年)の経済成長率は5.4%ですが、このうち2.5%分はサムスン電子が寄与しているという研究結果も出ています。これに物価上昇率を加味すると、サムスン電子を除く2011年度の韓国の実質経済成長率は1.0%程度と見込まれています。

このことと2012年度のサムスン電子が過去最高の実績だったことを考慮すると、2012年の韓国経済は、むしろマイナス成長であったのではないかという疑念も生じます。

実際に、内需部門は構造的な要因もあり、かなり深刻な状態にあります。構造的問題でよく指摘されるのが、家計部門の負債が1,000超ウォンに迫る勢いと負債率が次第に高くなっていること、少子高齢化、住宅市場を中心とする不動産市況の停滞などです。その結果、2012年の内需消費の増加率は1.4%にとどまり、物価上昇率を加味した実質増加率はマイナスになっているという状況です。

このような社会的不公平感が鬱積し、昨年の大統領選挙では「経済民主化」という言葉がキーワードとなり、如何に財閥偏重の経済構造を改善するかが大きな争点となりました。

 

大統領が大鉈を振るえるかがカギ! 韓国経済の2月の動きを注視せよ

2013年の韓国経済の行方を占う上で、やはり注目しなければならないのは、2月に就任する朴クネ大統領の経済政策です。韓国の大統領は非常に大きな権限を持っており、大統領の経済政策のさじ加減で大きく経済状況が変化するという特徴を持っているためです。また、韓国国内だけでなく外的要因も考慮する必要があります。とりわけ、韓国と競合製品の多い日本の動向には注目が必要です。

まず、朴クネ大統領の経済政策ですが、選挙公約から判断するに、財閥規制の強化を行なうことで非財閥企業の中小企業を支援する内容の政策が前面に押し出されることは確実です。しかし、韓国経済に占める財閥の影響力が極めて高いこと、政権母体が保守系であることからどこまで大鉈をふるうことができるかは未知数です。結局は限定的・部分的な施策しか打ち出すことはできず、財閥の影響力はそのまま残り続けるのではないかと考えます。

一方、為替の影響についてですが、米国ドルやユーロが一時期よりは信任を取り戻していること、安倍政権が大胆な金融緩和を打ち出していることから、ウォン高基調が始まるものと予測されます。おそらく、1円=10ウォンの水準までウォン高円安は進むのではないかと予想します。韓国政府にとってもウォン安によるインフレ圧力をこれ以上静観できる状況に無いため、しばらくウォン高基調は続くことでしょう。

このウォン高傾向が韓国経済に与える影響についてですが、2013年についてはそれほど大きな打撃にはならないのではないかと考えます。確かにウォン高になれば輸出競争力が低下することにつながります。

しかし、競合する日本企業との関係でいうと、携帯電話、白物家電、AV機器などについては、ブランドやマーケティングなどの価格面以外の要因で日本企業と差別化ができている状況のため、短期的に日本企業が再逆転するという可能性は低いものと思われます。

また、現代自動車はある程度の打撃を受けるでしょうが、既に海外生産比率も高くなって来ていますので、ウォン高の影響をグループ全体でモロに受けるということもなさそうです。

一方で、ウォン安によるインフレ圧力が緩まることで、消費者心理が改善し内需が回復することが期待できます。実際に速報値ですが2013年1月の消費者心理指数が改善したという報告も出ています。

これらのことを鑑みると、内需を中心に2013年の韓国経済は回復をみせるものと期待されますが、2月に発足する新政権の経済運営がどのようになるのかを注視し続ける必要があります。

 

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黄 泰成

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