Digima〜出島〜

海外進出に関わる、あらゆる情報が揃う「海外ビジネス支援プラットフォーム」

海外進出に関わる、あらゆる情報が揃う「海外ビジネス支援プラットフォーム」

海外ビジネスサポート企業はこちら

検索フィルター

検索コンテンツを選ぶ

検索したいコンテンツを選んでください

国を選ぶ

検索したい国を選んでください

業種を選ぶ

検索したい業種を選んでください

課題を選ぶ

検索したい課題を選んでください

海外ビジネス コラム

法律・制度 2013年08月26日

  • share

予防法務が重要に? カンボジア進出成功のための「裁判」に関する知識

藪本 雄登(RIKUYO(Cambodia)Co.,Ltd)

今回は、カンボジアの裁判所事情について、共有させて頂きます。カンボジアには第一審裁判所が23か所、控訴裁判所が1か所、最高裁判所は1か所、合計25か所の裁判所によって裁判システムが構成されています。
以下、各裁判所の現状や問題点についてお伝え致します。

裁判所の種類とその構成、取扱案件を比較

(1) プノンペン第一審裁判所

プノンペンの第一審裁判所は、裁判官25名、書記官143名、検察官17名、その他スタッフ約60名から構成されています。事件数は、2011年のデータでは、民事事件2,053件、刑事事件2,196件であり、2010年のデータと比較しても事件数は急増しています。

民事事件の内容としては、離婚事件と借金の返済をめぐる事件が大半を占めています。事件の処理に要する時間としては、和解で解決する場合は約1か月以内で処理されています。複雑な事案や証拠が不十分である場合においては、2か月から1年以上かかるケースも多いです。

(2) 控訴裁判所

控訴裁判所はプノンペンの司法省の敷地の中にあります。事件数は、毎年民事事件が約2,000件、刑事事件が約2,000件とされています。裁判官は17名が在籍しています。

事件の内容としては、契約、土地関係の紛争が大半を占めています。1件の事件処理に要する時間は、約2〜3か月といわれています。

(3) 最高裁判所

最高裁判所は、判事14名、検察官5名、書記官約30名、事務官約60名で構成されています。

年間の事件数は、民事事件で約500件、刑事事件で約300件です。1つの事件の解決には、約4か月を要するといわれています。

民事事件の内容としては、控訴裁判所と同様に土地に関する紛争、契約に関する問題が大部分を占めています。これらは法解釈や事実認定をめぐって争いが生じやすい紛争類型であるためです。

また、書類の不備のために所有権の証明が困難であるケースが多かったり、事件解決の決め手がない場合が多く、上告された事件のほぼ半数は上告棄却という状態になっています。

 

強制執行にもかなりの時間と労力を要すため、「予防法務」が大切

(4) 強制執行

プノンペン第一審裁判所のデータによれば、2011年に保全手続きの申請が437件あり、強制執行が認められたのは258件、うち241件が実行されています。

数字上では比較的、強制執行が実行されているようですが、課題も多くあります。財産の評価基準が不明確であったり、不動産の所有権を明確にする際に地籍管理所から協力を得られなかったりする場合があるため、かなりの時間と労力を要します。また、執行対象の物件からの立ち退きに時間と費用がかかるため、最終的には権利を放棄したり、諦めるケースも多いといわれています。

強制執行に関しては、通常専任の執行官が行うべき職務ではありますが、こうした執行官の養成が追いついていない状態です。現在のところ、検察官が執行を担っており、強制執行に従事する人員の不足が問題とされています。

(5) まとめ

民法や民事訴訟法の適用により、民事法令は整備されつつあります。
しかしながら、カンボジアの裁判制度は発展の過渡期であるため、日系進出企業の皆様が関心を持たれる不動産や契約に関する問題については、裁判所で適切な判決が受けることができるか、判決に従った執行が受けられるか、という点についてまだ問題があるようです。

そのため、カンボジアへの投資に際しては、後から問題を起こさないための準備、特に「予防法務」の部分で重点的に対策を講じることが重要だと考えます。

このコラムの著者

このコラムニストにメールで問い合わせる

藪本 雄登

(RIKUYO(Cambodia)Co.,Ltd)

コラムニスト詳細

ジャンル別 新着コラム