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海外ビジネス コラム

法律・制度 2014年06月30日

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カンボジアの労働仲裁事例①「年功手当を支給する必要は?」

藪本 雄登(RIKUYO(Cambodia)Co.,Ltd)

カンボジアの労働仲裁に関する実際事例について、ご紹介させて頂きます。
今回は、2012年235号裁定を参考事例として、どのように労働仲裁が行われているかご理解頂ければと思います。

<事案概要まとめ>
縫製工場を運営するA社は、労働者のうち80%と有期労働契約を結んでおり、その多くが6か月間の契約を締結していました。 A社は、契約満了後、新たに契約を結ぶ前に、労働者に給与が支払われない2日間の休暇をとるように求めていました。この2日間の休暇は契約の更新前にとられるもので、A社は通例として、この休暇後に新たに6か月の契約を締結していました。A社は、契約満了時、労働者に対し、未払賃金、未使用の年次有給休暇の償還金、契約期間中に支払われた総賃金の5%に相当する退職金を支払っていました。
「2日間の休暇」という措置は、一旦労働者が退職をしている事を説明付けるために利用されており、A社は、有期労働契約を結んでいる労働者については勤続年数が一年に満たないため、年功手当を支給する必要はないとして年功手当を支給していませんでした。

<労働組合の主張内容>
上記の事情の下、労働組合はA社に対し、年功手当を支払うよう求めました。

<手続きの開始>
2012年11月20日、コンポンチャム州労働紛争局(the Department of Labor Disputes of Kampong Cham province)のカンボジア労働組合連盟(Cambodian Alliance of Trade Union)から訴えを受理し、2012年11月26日、労働紛争局の調停員が雇用者と労働者の両者を招き、調停を行いました。調停では完全に和解に至らず、2012年12年4日、労働仲裁委員会の事務局に付託されました。

<判決内容>
A社は労働者に対して2日間の休暇をとらせることを中止し、有期労働契約を結び1年以上働いた労働者に対して年功手当を支給しなければならない、という判断を下しました。

<理由>
論点としては、A社と労働者の間で「勤続年数」という文言の解釈の対立があることが挙げられますが、2005年の裁定は勤続年数を次のように定義しています。

「勤続年数とは、労働者により供給された役務の長さに基づき、労働者に権利や特典を加える、連続した役務提供の期間のことである。勤続年数が途切れるのは、労働者が企業のための役務提供を終了したときのみである」。

労働仲裁委員会は、2日間の休暇につき、「2日間の休暇」措置は、A社において習慣的、一般的であり、A社特有のものであり、労働者としては、有期労働契約が更新されるものと予期していることから、A社が労働者に2日間の休暇を取らせることによって、A社と当該労働者との間においては、労働契約を更新する旨の黙示の合意が成立していると判断し、そして、企業が労働者に期間満了後「2日間の休暇」を取らせたとしても、当該労働契約の終了には相当せず、勤続年数は途切れることがないと判断しました。

A社は、仲裁手続において、「業者からの不規則な発注によって2日間の休暇が発生している」と主張していましたが、労働仲裁委員会は、「2日間の休暇」は、新たな契約を結ぶ前に常に2日間の休暇がとられてきたという点で習慣的であり、有期労働契約を結ぶ全ての労働者に当てはまるという点で一般的であり、休暇の期間が常に2日間であるという点で企業特有なものであると理由付けてA社の主張を退けました。

更に、労働仲裁委員会は、2日間の休暇はA社の再雇用の意図を示している一方で、労働者に労働法に定められた基本的な権利を認めないことによって、法定の義務を回避する意図があったと判断し、義務を回避しようとするA社の意図は信義誠実の原則に違反していると判断しています。労働仲裁委員会は、上記判断に基づき、有期労働契約を結ぶ労働者の労働契約は、2日間の休暇期間中に終了したとはみなされず、勤続年数の2日間の休暇によって途切れることがないと判断しました。 

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藪本 雄登

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