生活・文化 2015年06月03日
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イスラム教における「ハッジ(巡礼)」とは!?
世界人口の1/4を占めるイスラム教徒。イスラム市場に参入するために、ムスリムの慣習・嗜好を理解しておくことは非常に重要であり、その理解がないままに海外進出を行い、成功しなかった事例も多い。今回は、特別企画としてムスリムの5大義務の一つとされる「巡礼」に関して取り上げ、ムスリムがどのような宗教観を持ち、「巡礼」を行っているのかを紹介する。
ムスリムに課せられる5つの義務
イスラム教はキリスト教に次いで世界で2番目に信徒の多い宗教である。2011年1月に発表された調査レポートによると、世界におけるイスラム教徒の数は現在15億7000万人にものぼり、世界全人口の23%を占める。
アメリカのシンクタンク、ピューリサーチセンター (the Pew Research Center) が実施した2010年度の調査によると、現在世界には49のイスラム教を主宗教とする国が存在する。
イスラム教には、その根幹を成す5つの柱があり、ムスリムに義務として課せられた行為である。
以下はムスリムに課せられる5つの義務である。
1.信仰告白 (シャハーダ): 「アッラーの他に神はない。ムハンマドは神の使徒 (予言者) である。」と証言すること。
2.礼拝 (サラー): 1日5回の祈祷をすること。
3.喜捨 (ザカート): 貯金の2.5%を貧しい人や支援が必要な人に対し施すこと。
4.断食 (サウム): ラマダン月の日中は飲食を慎み、自己を律すること。
5.巡礼 (ハッジ): 一生に一度はメッカに巡礼へ行くこと。
非常に重要な宗教活動「ハッジ」と「ウムラー」
ハッジとは、イスラム月の12ヶ月目に聖地メッカへ巡礼することを指すとともに、男女を問わず健常なムスリム全員に、少なくとも1生に1度はメッカへ巡礼に行くよう義務づけている。巡礼者がメッカの10km以内の土地に入る際には、男女共に2枚の白い布で作られた特別な衣装を身に纏わなければならない。メッカへの巡礼を終えたムスリムは、『ハージー (Hajj) 』あるいは『ハッジャー (Hajja)』として別名が与えられる。
ハッジの主な儀式は、カーバ神殿の周りを各回『イスティラム (Istiram)』 と呼ばれる黒石に触れながら7回歩いて回る 『タワーフ (Tawaf)』、サファーとマルワの丘の間を7回往復する 『サアイ(Sa’yee)』、ミナにある悪魔に向かって投石する 『ラミー(Ramee)』の3つである。
また、『ハッジ』が大巡礼 (major pilgrimage) と呼ばれるのに対して『ウムラー』と呼ばれる小巡礼(minor pilgrimage又はlesser pilgrimage)もあり、これは1年の内で時期を問わずにサウジアラビアにあるメッカへ巡礼することを指す。
アラビア語で『ウムラー』は「人の多い場所へ訪問する」という意である。しかし『シャリーア (イスラム法) 』における『ウムラー』はカーバ神殿を歩いて回る『タワーフ』と、サファーとマルワの丘を往復する『サアイ』を行うことを意味している。また、ハッジは健常かつ、経済的に余裕のあるムスリム全員に対し義務づけられているが、ウムラーの場合、強く推奨されているものの、義務づけられた宗教行為ではない。
ハッジとウムラーの主な違いとして、ハッジは一生に一度の宗教行為であるが、ウムラーは数回にわたる宗教行事であることが挙げられる。
そしてハッジはウムラーと比べ、より複雑な宗教儀式を要し、多額な費用がかかるため、1生に1度のみの行為となっている。
このことは、預言者ムハンマドが行ったハッジが人生で1度のみであったことにも由来している。また、イスラム教において、巡礼やハッジは大変名誉ある行為とされている。
イスラム教の指導者は、ハッジは神に対する信仰心を表現するものであって、社会的地位を獲得する為の手段としてはならないと説いている。巡礼の間、信仰者は己を認識し、自己の真意を正さなければならない為、継続的な自己の鍛錬につながるものであると考えられている。それ故に、義務ではないものの、ウムラーを行うことが強く推奨されている。
ハッジとウムラーはムスリムにとって非常に重要な宗教活動であるが、全てのムスリムが実施出来る活動ではない。ムスリムは世界各地に点在しており、その多くがメッカから遠い地域に暮らしているため、巡礼に必要な多額の予算を用意できない場合もあるからである。
ビジネスチャンスにつながる巡礼ツアー
そこでムスリムが大多数を占める国では、複数の旅行会社がハッジやウムラーの為のツアーを提供しはじめている。ビジネス目的でもあるが、各旅行会社はより多くのムスリムが巡礼を行うことを目的とし、旅行の計画や宿泊地の確保といったサービスを提供している。
費用の面でも、個人での巡礼に比べ、旅行会社を介して巡礼を行うことで、より少ない予算で巡礼が可能となる。それ故、近年ではハッジやウムラーを行う際、旅行会社を介することが、ムスリムの間で主流となってきている。
世界で最も多くのムスリムを有するインドネシアを例にとると、2014年時点で既に630万人ものムスリムがウラマーの為、メッカへの巡礼を行ったことがあり、16万8000人が既にハッジを行っている。また、この旅行者の数は毎年成長すると予測されている。しかしながら、旅行会社が提供している巡礼ツアー数は未だ400程しかない。全人口2億3400万人の88.2%がムスリムであるインドネシアにおいて、現状のツアー実施数は十分ではないと考えられており、多くのツアーに参加者が殺到している状態である。今後、インドネシアにおけるムスリム人口の増加に伴い、より多くのハッジ向けツアーの提供が必要となるだろう。
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