市場動向 2013年08月09日
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厳しくなる外国人の就労許可証の発行。中国進出成功のために日本企業の採るべき人事戦略とは?
ビザの発行にかかる期間が3倍に!
昨年の尖閣事件以降、外国人への就業許可書の発行は厳しくなっていましたが、7月から益々厳しくなってしまいました。また、このことは新規発行に限らず、更新についても適用されます。
一例を上げると、就業許可書の更新については、これまで5営業日かかるというのが普通でした。よって、仮に金曜日に手続きすれば、次の金曜日には終了します。中国の場合パスポートを預けてしまいますので、その間は国外には出られませんが、それでも、この申請タイミングであるなら次の土曜日には日本に移動することも可能でした。
今回の改訂では、これに15日が必要になります。エリアによって扱いが異なるケースがあるのですが、実際に15営業日が必要という所も多いはずですから、月曜日に出したとすれば、土日を挟んで、3週間後の月曜日、21日後に受け取ることになります。ほぼ一ヶ月近く取られてしまう訳でこの間は、中国国外には出られません。
更に、中国内の移動については、以前から顔写真付きの証明書(ビザ申請中という事を証明する当局発行の物)を作ればできた訳ですが、現在は内陸や華南エリアなどの一部では、それを認めないという話もちらほら聞くようになり、更に厳格に扱うとの事です。要はパスポート原本がないと国内移動やホテル宿泊についても不安な状況になりつつあるということで、随分な制限が出てしまう可能性が高くなっています。
許認可に関しても厳格化が進み、罰則も厳しくなっている
また、Fビザ(商用・研修等)での就業についても厳格に扱うことが改めて通知されています。元来、中国内で報酬を受ける・受けないに関わらず、中国内で仕事を行う場合については就業許可証が必要です(日本の企業などの進出にあたり、中国で調査をするなどはFビザで問題ありません)。就労ビザ(Zビザ)が取れないケース、あるいは取る必要が無いと誤認しているケースなどで、Fビザで業務をしているケースがある様に推測されますが、これについても厳しい罰則が適用される様になりますので、絶対に避けるようにして下さい。
罰則については、国外退去の上、最長で10年間の再入国禁止となりますので、対象となった方は、実質的に中国でビジネスをすることが不可能になります。また、個人のみならず会社の名前にも関わってきますので、万が一そうした対応をされている所がありましたら、速やかに是正して下さい。特に、本来申請すればよいところを、知らないがゆえのうっかりミスや、手続き漏れということでトラブルが起きては悔やみきれません。コンプライアンス遵守と合わせ、是非再チェックして見て下さい。
その他にも様々な面で締め付けが厳しくなっています。元から規定されていることではありますが、60歳以上のシニアの方、実務経験が2年未満の若年者に対する就業許可証の発行についても、現在ではほとんど許可されません。
また、大卒以上の学歴が無い場合についても許可されないケースが極めて多くなってきています。勿論、大学を卒業していなくても素晴らしいスキルをお持ちの方がおられる訳ですが、当局に対して理由書やヒヤリングを通して説明しても認められないケースが増えております(以前は、きちんとキャリアやスキルを提示することにより認めて頂ける場合が多かったです)。
規制強化の背景と日本企業の採るべき人事戦略とは?
こうやって外国人就労を厳しくしてきている理由ですが、簡単に言えば、もっと中国人の雇用を増やして欲しい。若年者やシニア、低学歴の日本人を使う様な仕事なら中国人の雇用に切り替えてくれということです。更に、現地化が進むことにより、中国内の技術の定着も進み、コントロールもしやすくなります。経営のごく一部について外国人は必要だろうが、それ以外は中国人で良いだろう、ということですね。
現実問題としても、中国経済自体が相当に厳しくなってきていますので、政府としては自国の市民に対する雇用確保やその努力が重要になってきています。本年の大学新卒などの就職率は惨憺たる数字で具体的な対策を迫られてもいます。こういう国民の不満に対応できないと、そのはけ口は政府や党に向いてしまいます。特に環境問題や物価、汚職等から共産党への風当たりが強くなってきている今だからこそ、よけいに繊細に対応したいところなのです。
もちろん、総経理などの高級管理職などについてのビザは、条件を満たしていれば認められます。幾ら中国人の雇用が優先といっても、全てをシャットアウトして外資の撤退になってしまっては元も子もありません。逆に言えば、基幹の外国人のビザ(総経理等)さえ出しておけば、撤退にはならないという読みもある訳で、当局に重要ポジションでないと判断された場合にはかなり厳しい対応も想定されます。
いずれにしても、こういう背景から出されている方針ですから、残念ながら今後も益々厳しくなることが予想されます。中国で事業をされる方々は、今は簡単には就業許可証は下りないという事を念頭におくと共に、赴任させる方については、条件を満たす方を選ぶことが必要です。また、残念ながら、中国人で日本的なマネジメントを出来る方というのは圧倒的に少ないですから、既に中国現地に根付いている日本人などの活用等も踏まえ、人事戦略を広く構えることが重要です。
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