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海外ビジネス コラム

市場動向 2013年10月08日

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中国不動産バブル崩壊の危機とその対策

中内 奈々(トータルソリューション株式会社)

現在、中国不動産は大きな転換期を迎えつつあります。

先日も邱永漢氏が建設した、北京三全公寓の売却依頼があり、売却のお手伝いをさせて頂きましたが、中国不動産はこれから大幅な調整期に入る可能性が高く、売却するなら今が絶好のチャンスと考えられます。

なぜなら、上述の北京三全公寓など、北京・上海等の大都市の不動産だけでなく、現在、中国不動産市場全体が過剰なバブル状態にあり、崩壊の危険性が示唆されているからです。

(既に、崩壊が始まっている都市もあります。)

なぜ、中国不動産バブルが終焉を迎えつつあるのか?

その理由を以下、ご説明したいと思います。

中国不動産業について

現状

2000年以来、中国の不動産業は急速に発展し、北京五輪の前後(07~09年)にピークに達し、その後は徐々に勢いを落し、現在は反落しつつあります。2011年、商品住宅の成約金額は5兆9119億元(前年比12.1%増)、成約面積は10億9946万㎡(同比4.9%増)でした。数字は増加したものの、その増加幅は07~09年の期間と比べて著しく縮小しました。不動産市場のバブル化を抑えるために、政府は全国の一級都市と一部の二級都市で一連の引締め政策を実施し、住宅開発業社の土地買い占めと投機的住宅購入を制限することにしました。

北京市統計局の報告によると、2013年 5月は北京市の新規住宅の成約が1837件で(先月比25%減)、平均成約価格が4月とほぼ同様でした。一方、既存住宅の成約は引き続き低迷し、成約が300件/日未満の日が12日間も連続し、2009年以来の最低成約件数を記録し、そして平均成約価格も今年度以来始めて先月より下がりました。

住宅賃料原価比

2013年3月29日付の国土部報告は、全国各都市の「住宅賃料原価比(以下、賃料原価比とする)」を発表し、北京、上海、深圳などの一級都市の住宅価格に既に深刻なバブルが発生していることを警告しました。

「賃料価格比」は、不動産投資の収益状況を示す最も重要な指標で、また不動産市場が健全であるかを評価する重要な物差しでもあります。賃料価格比=1年分の賃料/同住宅の原価(内装費と税費を含まない)。その数値が5.5%以上である場合、同住宅の価値が更に上昇する空間があり、逆にその数値が4.5%以下となれば、同地域の住宅価格にバブルが存在していることを示します。

国土部は全国都市地価動向モニターリングシステムを利用して北京、上海、深圳などの一級都市の賃料価格比を追跡してきましたが、ここ5年間は需給のアンバランスにより住宅価格の増加幅が賃料の増加幅を大きく上回り、住宅と商業施設の賃料価格比が全面的に下がり、特に重点コントロール都市の住宅価格は2008年ごろから既にバブルの傾向が現れたにも拘わらず、更に昨年の狂気的な急騰を経てバブル化の趨勢が全ての重点コントロール都市に広がっていました。

バブル経済

日本は1990年代にバブル経済の崩壊を経験したが、現在の東京の土地価格はピーク時期の1/10程度まで下落しています。現在、中国の一級都市の住宅市場はバブル経済時期の日本とよく似ており、特に北京と上海は中国の南北の「唯一の中心都市」として全国の不動産投資家を引寄せ、需要の急増により、両市の住宅価格はうなぎ登りに上がり、正にバブル経済時期の東京と同様に、巨大なバブルを生み出しています。

日本の経済学者はバブル経済の崩壊から、二つの要素が住宅価格のバブルを促成したと反省しました。一つは長期的に実施された低金利政策です。円高による経済衰退を防ぐために、日本銀行は長い期間に低金利を維持し、時には円を投売りして円高の圧力を軽減したこともあったので、円の流動的氾濫を誘発しました。もう一つは、固定資産税が課税されておらず、住宅の保有が容易にできていた事が挙げられます。

中国にも同様なバブル要素が長期的に存在し、結果として住宅不動産投機は「預金金利切り下げ」のリスクを回避する恰好の資産保全手法となっています。中国では、「房産税」(固定資産税)が徴収されておらず、住宅価格が急騰する中で、不動産投機は各地方政府の土地財政収益に次ぐ最大の利益獲得の手段となっています。投機を制限する政策もなく、価値の割増分に対する課税もない現行制度の下で、住宅投機がますます盛んになってきています。

なお、中央政府が金融管理を強化する一方、高額の土地譲渡収益は、巨額の財政赤字に悩む各地方政府の最も重要な経済的源泉となっています。しかし、土地価格と住宅価格の相互刺激を放任すれば、中国の住宅市場も間もなくバブルの破滅を迎えるでしょう。

国家統計局が公表した70大中都市の住宅価格によれば、2013年7月、新規住宅の価格が前年同期より上昇したのは69都市あり、下落したのは浙江省温州市だけでした。温州の住宅価格は23ヶ月連続の下落で、一部の新規住宅の価格がピーク時期より30~40%も下落しており、住宅価格のバブルが温州で率先して破綻したことを示しています。

固定資産税(房産税)

住宅需給の不均衡を解決するために、政府は一連の対策を打ち出し、住宅投機行為を厳格に引き締めることにした。しかし、高収入者が住宅を大量に保有して賃貸を通して利益を吸い上げることは、住宅の価格と家賃の高騰に拍車をかける一方で、低収入層のニーズが満たされない問題はますます深刻になってしまう。よって、不動産保有の不合理現象を是正する強制的手段として、政府は「房産税」つまり固定資産税の徴収を検討し始めている。

「房産税」は原価ベースと賃料ベースの2種類に分かれ、それぞれ1.2%と12%の年間税率を適用し、1年間の納税金額は下記の算式で算出する。

①原価ベース

年間納税金額=課税対象物件の原価×(1-10~30%)×適用税率(1.2%)

②賃料ベース

年間納税金額=課税対象物件の賃料×適用税率(12%)

今後の発展趨勢

過去30年間、中国経済は約10%の年間平均成長率で発展し続け、世界銀行から「人類の史上には、これほど多くの人口を抱える国として、これほど長期的、継続的、急速的な成長を達成したのは前例のない奇跡だ」と高評されています。しかしこの世界を驚かせた中国経済もそろそろ急速発展の時代に別れを告げ、低速な安定成長期に入ろうとしています。

今後の国内不動産市場を左右する要素は大きく三つあります。

①人口の周期的変化による住宅ニーズの減少、

② 住宅と自動車産業が主導する重化工業の成長の鈍化(00~10年の期間、住宅産業と自動車産業がそれぞれ10倍成長し、両方の複合年間成長率は20%以上でした。しかし今後10~20年の期間は両者ともせいぜい1倍の成長しか達成できず、複合成長率が5%~7%に急落する見込み)、

③ 成長パターンに対する政府方針の転換(これまでの土地価格の高騰によるGDP増大は認められなくなる)。

2013年以来、国内の住宅市場は依然として好調を続けています。しかし、過去のような旺盛な需要がなくなり、むしろ供給過大の趨勢が現れ始めています。都市化による「剛性需求」(硬性需要)が増えているにも拘らず、住宅市場の全体の衰勢を挽回することができていません。今後10年間は、各大都会の毎年の新規住宅需要が2.7億~3.2億平米だと予測されていますが、これが全国の成約量の35 %を占めるとすると、全国の年間新規住宅成約はせいぜい7.8億~9.2億平米程度に止まり、2011年度と比べて5%~20%減少することになります。

現在、全国では3億平米の新規住宅が寝かされており、明らかな供給過大となっている。2017年前後に需給の均衡が回復する可能性があるものの、2020年以降は新たな需要不振を迎えてくると予測されています。中長期の発展趨勢から見ると、中国の住宅市場は売り手市場から買い手市場に転じ、過去のような黄金時代は二度と戻って来ないと思われています。

住宅は人間の居住施設として本来は「消費商品」の範疇に属するものです。しかし安全で高収益の確保できる投資先が少ない時代では、住宅が単なる「消費商品」から「投資商品」若しくは「投機商品」と変化し、利益を吸い上げる道具として利用されるようになりました。「政府が土地を売れば必ず儲かり、住宅開発業社が土地を持てば必ず儲かり、投機者が住宅を購入すれば必ず儲かる」ことは住宅市場の定則となり、引いては全国民が参与する「購入ブーム」を起こしました。しかし、政府による管理の強化と市場の規範化発展につれて、住宅はいずれ本来の「消費商品」の属性に回帰し、「投資商品」から「居住施設」に復帰する可能性が高く、「投資商品」の性格は完全に拭い切れないものの、「脱投資化」の趨勢はもう逆転できないと考えられています。

過去の10年間に政府は住宅の売買に関する引締め政策を次々と打出していますが、効果的な改善があまり見えませんでした。

今後は、住宅取引に対する政府の監督管理が更に厳しくなり、不動産の保有に関する課税体制の整備につれて政府の住宅市場規制政策がいっそう完備され、市場の規範化と健康的発展を促進するものとして期待されています。

現在行うべき対策

上述の通り、現在、北京・上海等の大都市では、まだ何とか住宅価格を保っているものの、

不動産規制政策により、今後、不動産に対する課税等がさらに大幅に強化される見込みであり、下落調整は、これから本格化すると考えられています。

このように中国不動産バブルが崩壊を迎えつつある現在、日本のバブル崩壊の二の舞を避けるには、一旦、中国不動産を売却し、その他の安全資産等に切り替えるのが、賢明な選択肢の一つだと思われます。

 

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中内 奈々

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