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海外ビジネス コラム

市場動向 2013年11月11日

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フィリピンIT/BPM産業への日系企業進出状況

安部 妙(SPICEWORX CONSULTANCY, INC.)

ソフト開発の歴史は長く、かつ最近急増している

連載第2回目は、フィリピンのIT/BPM産業への日系企業進出状況の全体像と、日系企業数が最も多いソフトウェア開発セグメントの現状をお伝えします。

PEZA登録のIT/BPM関連日系企業が急増中

輸出を中心とする企業が入居するフィリピン経済区庁(PEZA: Philippine Economic Zone Authority)に認定されたITパークやITセンターは、フィリピン全国に187ヶ所あります (2013年7月31日時点)。PEZA登録企業は、売上高の70%が輸出であることが条件となりますが、一定期間の法人所得税免税や付加価値税(VAT)免除をはじめとする各種投資優遇措置の対象となるため、輸出中心となるIT/BPM業界の企業の多くはPEZAに登録しています。PEZA認定のITパーク、ITセンターへの入居企業の総数は793社(同)で、そのうち日系企業は15%に相当する119社(同)です。16ヶ月前、2012年3月31日と比較し、入居企業総数は27%増、日系企業は38%増とかなりの勢いで増えています。

連載第1回目にお伝えしたように、フィリピンのIT/BPM(Information Technology and Business Process Management) 業界は、コールセンター/コンタクトセンター、ノンボイスBPO、ソフトウェア開発及びITアウトソーシング、医療情報管理、エンジニアリングサービス、クリエイティブアウトソーシング(アニメーションやCGなど)、ゲーム開発という7つのセグメントで構成されています。

この7つのセグメントの中で、特にPEZA登録企業で見ると、日本企業の進出はソフトウェア開発とエンジニアリングサービスに集中しています。PEZA認定ITパーク、ITセンターに入居する日系企業119社中、49社(41%)がソフトウェア開発企業、28社(24%)がエンジニアリングサービス企業です。(下図参照) 中でも、ソフトウェア開発企業は、2012年3月から2013年7月までの16ヶ月間で17社も増えているのが目を引きます。近年は、中小のソフトハウスやSI企業、ベンチャー系のソフトウェア企業の進出が多いようです。

図1:PEZA認定のITパーク/ITセンター入居企業数

出所;PEZAデータを基に筆者作成

日系企業によるフィリピンでのオフショア開発は20年以上の歴史
日本企業にとって、オフショアソフトウェア開発といえば圧倒的に中国、その他にインド、ベトナムなどが活用されています。最近はミャンマーへの関心も急激に高まっています。しかし、関係者以外には知られていない事かもしれませんが、実はフィリピンでも20年以上にわたって日本企業によるオフショアソフトウェア開発が行われてきました。現在でも活躍しているフィリピンでのオフショア開発のパイオニア的な日系企業は1990年設立のTsukiden Global Solutions (TGSI)、1991年設立のCanon Information Technologies Philippines、1992年設立のJ-SYS Philippines, 1993年創設のAdvanced World Systems (AWS), 1999年設立のFujitsu Ten Solutions Philippinesなどがあり、いずれもマニラ首都圏に拠点をおいています。初期にフィリピン進出した企業は、組込み系のソフトウェア開発の比重の高い企業が多いようです。

2000年代に入って設立された日系のソフトウェア開発企業には、NEC Telecom Software Philippines(2000年), Allied Telesis Labs Philippines (2001年), Denso Techno Philippines (2005年), Ubiquitous Technologies (2006年)、Cybertech (2006年)、AEON Credit Service Systems Philippines (2008年)などで、日本の大手傘下企業のオフショア開発拠点も目立ちます。

そして最近、2010年以降の進出企業で代表的なのは、Kyocera Document Solutions Development Philippines (2010年)(*1)、KLab Cyscorpions (2011年)(*2) 、Excite Media Services PH (2012年)などがありますが、この他にも日本の小規模企業がオフショア拠点を設立した事例が多いようです。比較的小規模な進出企業の場合は、モバイル系やゲームアプリの開発に関わる企業の設立が多くなっています。

PEZAのITパーク/ITセンターに入居していない小規模企業を含めると、フィリピンで操業している日系のソフトウェア開発企業は70社〜80社あるのではないかと推測されます。

主要拠点はマニラ首都圏、次いでセブ、その他の都市への進出はまばら
大学でIT系のコースを専攻した学生の確保のし易さと、電力供給や通信インフラ整備状況、日本人駐在スタッフの生活環境や安全確保等がポイントとなり、日系のソフトウェア開発企業の大半がマニラ首都圏かセブに拠点を構えていますが、わずかながらミンダナオ島の最大都市ダバオや、ルソン島中部のスービック、ルソン島北部のバギオを拠点とする企業もあります。

フィリピンのソフトウェア企業と日本企業の取引に変化が
ソフトウェア開発における日本企業とフィリピンとの取引に関しては、筆者が過去5年間理事を務めてきたフィリピンソフトウェア産業協会(PSIA)の調査で興味深い傾向が見られます。

PSIAが2012年3月と2013年4月に実施した調査の結果によると、在フィリピンのソフトウェア開発及びITアウトソーシング(ITO)企業(日系、非日系を含む)による日本企業向けの輸出売上を、日本国内の企業向けの輸出売上と、日本国外の日系企業向けの輸出売上に分けてみた場合、前者が微減傾向、後者が大幅に増加しています。(下図参照) ユーザー側企業、ベンダー側企業ともに事業の海外展開が加速する日本のソフトウェアやITサービス業界において、英語力に長けるフィリピンを、日本国内向けの案件ではなく、海外案件で活用する動きが拡大しているのではないか・・・ということを伺わせる傾向と言えます。

図2:在フィリピン企業による日本企業向けのソフトウェア及びITOサービス輸出売上高 (単位:100万ドル)

出所:PSIAの調査 (2012年3月と2013年4月)の結果データを基に筆者作成

PEZAの統計では見えてこない日系企業の動きも
以上、フィリピン経済区庁(PEZA)登録の日系ソフトウェア開発/ITO企業の状況を中心にお伝えしましたが、主に輸出を前提としているPEZA企業だけを見ていては、フィリピン国内市場での事業展開のために進出している日系企業の動きが見えない事に注意が必要です。この話題は、別の機会に触れる事とします。

連載3回目の次回は、フィリピンのIT/BPM産業への日系企業進出状況の後編として、ソフトウェア開発以外のセグメントの状況をまとめてお伝えします。

 

(*1)2010年、京セラミタが、フィリピンのセブにあったエプソングループ傘下のソフトウェア開発企業の株式を100%取得。
(*2)2007年にフィリピン日本人が操業したコンテンツ開発、アプリケーション開発企業Cyscorpionsと、東証一部上場のKLab株式会社が2011年に資本提携。

 

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安部 妙

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