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海外ビジネス コラム

市場動向 2015年11月04日

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アセアンの中心地・タイにおける和食ビジネス その5

水野 聡子(Infinitie Wings BP(Thailand)Co., Ltd)

もともと親日国であるタイには以前から和食店はいくつかあった。ただほとんどが在住日本人向けの価格高め設定店、またはローカル向けのいわゆる「なんちゃって和食店」の二極化した状態であった。

しかし、10年ほど前からの政府間経済協定によって、関税をはじめとする様々な規制緩和が行われた。そして、2013年からの短期訪日ビザ免除により日本を訪れ和食の良い点に接し、タイ人も「本物の和食を食べたい、和食の良い点を日常生活に取り入れたい」という要望が高まったこと、また、日本企業としては国内の少子高齢化で海外へ市場を求めようとする潮流、このほか複数の要因を背景にして現在バンコクには様々な工夫を凝らした多様な和食店が豊富にできている。そこで、そうした事例をいくつか取り上げ、バンコクにおける飲食ビジネスおよび食材ビジネスのチャンスを探りたい。

和食店経営者に聞く、飲食ビジネスおよび食材ビジネスのチャンス

多様な和食店があるということは、言ってみれば競合が非常に多いともいえる。和食店経営者は常に「いつ使ってもらう、誰に使ってもらう、何を楽しんでもらう、どういう風に維持運営する」を意識している。2015年現在の人気店を訪問し長年の人気の秘訣、進出する際に考えておきたいこと、そして店舗運営上重要事項の一つである食材の調達についても聞いてみた。

第5回は「大阪王将」

「美味しい餃子を世界中に広めたい」と、日本人ならその味に思いを馳せ、深い共感でうなづく言葉を掲げるタイ大阪王将・竹安社長。日本で独自の発達をした大衆中華料理として日本の生活に根付いている餃子の王将は、今世界に向けて餃子文化を伝えている。

現在の客層について

現在バンコクに2店舗、1店舗は日本人居住区・トンローの中にあり、こちらは日本人が6-7割。もう1店舗は日系企業のオフィスが集中する地区・シーロムにあり日本人とタイ人が半々。

食材や酒類の手配について

当社の看板メニューである餃子の味の決め手となる調合済み調味料は企業秘密のためレシピを持ち込まず日本から輸入している。それ以外は基本的にすべて現地手配している。酒類の一部である焼酎はこちらの輸入兼卸業者を通して購入している。購買に関しては輸入および地場産の食材、地場産の飲料、共にお客さんに喜んでもらえるのなら積極的に検討し採用していきたい。

日本では、餃子とビールは一般に浸透しているがタイではどうか

日本人は餃子を注文すればやはりビール。そういうセットメニューも用意している。タイ人にとって餃子は「パリッと揚げたサクサクのスナック」というおやつメニューとして捉えている面が強いようで、日本のようなぎっしり身の詰まった焼き餃子というのはまだまだ浸透していないのが現状。当社もそれを踏まえて「タイの餃子とは全く別物」としてアピールしていきたいと思っている。

現在の餃子の販売量について

一か月2万5千個ぐらい。まだまだごくわずかだ。日本人は王道の酢醤油で食べている。タイ人は餃子にスナック感覚を持っているため少しエンターテイメント性を持たせようと様々なディップソースを6種類用意している。人気があるのはタイで伝統的にシーフードを食べるときにつける生唐辛子を刻んだもの。いろいろなソースで試してもらいながら日本の餃子を自分流にカスタマイズして新たな美味しいを発見してもらえればいいと思う。


(酢醤油が王道の日本人には珍しく感じる様々なソース。タイのぱりぱりに揚げたサクサク餃子は5番目のチリソースをつけて食べるのが一般的。竹安氏によると人気は2番のシーフードソースとのこと)

餃子のおいしさを広く伝えるための広報活動について

SNSが全盛なので、うまく取り入れていきたいと思っている。ただ、SNSの種類も複数あり、すべてに手を出しすべてが中途半端になるのも好ましくないので、媒体は精査選択し内容の濃い広報活動をしたいと思う。「食べたらおいしい、好きになる」を実現するにはとにかく一度来店してもらうことが不可欠。目の前のキャンペーンの告知という短期のものもあれば日本発大衆中華でお腹いっぱいの幸せを届けるという社訓体現も狙いたい。これまでは「広告は広告代理店へ」だったのがSNSの出現で無料またはごくわずかな費用で自社が自発的に取り組めるようになった。とはいえ、現れてからの歴史も浅くその分野で蓄積がある人がいないため戸惑う事も多い領域ではある。タイ人の自撮り好きSNS投稿好きもうまく活用していきたい。

アジアへの積極的進出していることについて

社訓が「お腹いっぱいの幸せを届けたい」であり、誰もが気軽に楽しめる大衆中華というカテゴリーをどうすれば実現できるのかを念頭に置いている。ASEANは忌避食材があるムスリム人口も多いのでそういう人たちにも食べてもらえるメニューも開発している。ここで培った経験や知識はまた他の地域へ進出した時にも新たな形で花を咲かせられればと思っている。これはタイを含め進出先の食材ビジネスと密接な関係があるため他社の協力を仰ぎつつ自社の特徴やよい点を伸ばせる取引が出来ることを望む。

アセアンでの飲食ビジネスの展望について

食材ビジネスについて、タイの周辺諸国のいわゆる新興国にも和食店がいくつか出始めている。食材はそれぞれ独自手配ゆえに食材ビジネスは飲食店の拡大に伴って広がるので未開の市場はまだまだ大きいともいえるだろう。

飲食ビジネスについて、タイはターゲットを日本人だけに絞る、地元の人でもいわゆる富裕層という人たちだけを対象とする店舗、というのも多くある。当社はそれとは一線を画し「毎日お手頃価格で食べられて美味しくお腹いっぱいになる」を目指したい。

これから進出する企業は自分たちがどうありたいかを十分に考えきちんと決めてから運営実務に移るといいのではないだろうか。何かあっても最初の「自分たちはどうありたかったのか」に立ち戻れると軌道修正にヒントが得られると思う。

このコラムの著者

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水野 聡子

(Infinitie Wings BP(Thailand)Co., Ltd)

<タイ産業調査の専門家>

IWBPではタイの一般市場調査および産業調査、コーディネート業務、メディア対応業務などを承っております。

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