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海外ビジネス コラム

市場動向 2016年03月31日

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オーストラリアで日本的なビジネスが成功する可能性は高い

永井 政光(NM AUSTRALIA PTY LTD)

文化や言葉の違いから、日系企業が海外進出するにあたっては様々な問題が立ちはだかります。日本ではまず経験する必要のない苦労や、馬鹿馬鹿しい事柄に対処しなくてはならない場合も起こりうるでしょう。ただ最初の関門、現地の商法、環境、文化などに適応して問題を解決し、純粋にサービス・商材での勝負になれば、日系企業の勝算は大いにあると言えます。今回のコラムでは、なぜオーストラリアで日本的なビジネスが成功する可能性が高いのかについて、ご説明します。
 

目線が異なる柔軟な発想力

ビジネスで成功を収める、利益を出すことを考える時に必要な要素は、他の誰かより一歩前に出ている柔軟な発想力です。人と異なる着眼点を持つ、という言葉でも置き換えられると思います。

圧倒的な力を持っての圧勝。どの相手でも、どの国に行っても必ず勝てる。これが理想ではありますが、大手企業でも、なかなかそこまでの競争力は持っていません。何とか勝ったとしてもほとんど余力が残っていない状態で、利益も僅か。きれいごとではなくビジネスは利益を上げてなんぼの世界ですから、何のために苦労したのか分からないのでは、ビジネスをしている意味はありません。

それでは、圧倒的な力がないのであれば、海外でのビジネスは諦めたほうが良いのでしょうか。そんなことはありません。ただ発想の転換や、違った角度から物事を再評価する柔軟な視線が必要になります。それこそが「目線が異なる柔軟な発想」です。

私は普段海外に在住していますが、年に2,3度、定期的に日本に帰国しております。その度に日本の「痒い所まで手が届く」、日本的なビジネスに驚きの声を上げています。例えば、郵便物は配送日時の指定が可能で、日本の津々浦々まで、紛失せずにどんな高価な物でも届けることがで出来ます。日本に住んでいる人たちには「なんだそんなことは当たり前ではないか」と、一言で片づけられてしまうかもしれませんが、外国に住んでいる人間には、信じられないサービスと映ります。日本では当たり前でも、海外からの評価は大いに異なる。この着眼点を持つ必要があります。

誰のミス? 坂を登れないオーストラリアの電車

少し前の話ですが日本ではありえないけれども、オーストラリアでは実際に起こってしまった驚きの出来事をお伝えします。

オーストラリアでは大都市のシドニーですが、企業も住居も半径20キロ圏内に集中しており、東京に比べて非常にコンパクトで、日本の感覚で言えば、地方都市規模の街です。そこに移民が大量に押し寄せ、あれよあれよと言う間に、物価が上昇。インフラが全く追い付かず住宅価格も上昇しました。一般人はとても手が出なくなり、郊外へと居住スペースを求めて移動しました。

ただし、地価が安い地域の問題は、元々大人数が住むと想定して作られておらず、公共の乗り物の乗り入れが極端に少ないことでした。しかも、それらの人々の勤め先はほとんどがシドニー中心街。北部と中心街はたった一本の細長い橋とトンネルでつながっているだけで、朝夕のラッシュ時には、当然ものすごい渋滞を生み出してしまいました。これを緩和する目的で鉄道を開通させることになりましたが、オーストラリアで期日通りに工事ができたためしがありません。案の定、工期は伸びに伸び、予算も大幅にオーバー。皆が存在すら忘れていた頃にやっと開通しました。

ここまではオーストラリアではよくある話ですが、驚いたのがこの後。この地区は高低差が激しく、場所によっては勾配の角度がきつい所も存在します。ただどんな状況であれ、仕事を請け負えばきちんと通すのが当たり前、のはずですが……。

電車は勾配が厳しくて、車輪が空回り、坂を登れませんでした!

関係者は、
(1)時刻表があってないようなものの代表、鉄道局
(2)オーストラリア名物、「ずぼらな建設は任せておけ」の建設業者
(3)無策なインフラならお手のもの、いつも丸投げ政府

この3者がお互いに罵りあい、責任転嫁を始めました。鉄道局は、予算を大幅にオーバーしたのにも関わらず、ずぼらな工事しかできなかった建設業者を罵り、建設業者は無理な予算を押し付けられたと政府を批判。政府は十分な予算と追加予算まで割いたと主張し、鉄道局のずさんな計画が問題と指摘。泥仕合のゴングが鳴らされました。では、この区間はその後どうなったかと言いますと……。

無事に電車が走っています。手直しの工事が行われたのか?

実は違います。シドニーの鉄道局はこの工事の数年前に、老朽化した車両を一気に新型へ変更しました。新型車両は馬力不足で、この勾配を登れませんでしたが、試しに旧型車両を走らせたところ、登りきることが出来ました。これ幸いと廃棄処分するはずだった旧型車両を引っ張り出し、坂を問題なく登れる現在の車両が登場するまでのつなぎにしたのでした。

普通にやれば勝てる!

これがオーストラリアの現状です。

こんな会社であっても十分利益を出して、会社経営を続けることが出来ます。言葉は悪いのですが、総じてオーストラリア全体のクオリティーが低いと言えます。もちろん、低いという言い方は語弊があるかもしれません。オーストラリアは世界の国々の中であれば、発展している分類に振り分けられると思います。ただ日本はすべてにおいて消費者の目が非常に厳しく、また求めているものは高いので、それと比べてしまうと、オーストラリアに限らず、大半の国のクオリティーは低いと感じてしまうでしょう。
 
ここまで書けば「なるほど」と理解して頂けることでしょう。つまり、今日本で皆様がやられていることを、そのまま同じようにするだけで、海外では賞賛の的になる可能性があります。もちろん海外の企業も、日本企業と同等のクオリティーを出すことは可能です。ただ、その場合には通常コストの3倍は掛かると思います。費用対効果の面からでも、我々には十分勝算があると考えられます。また純粋な業務に関して言えば、従来通りのやり方で、十分利益が確保出来ます。しかも市場を独占する大手企業は存在しない。どうでしょうか? かなり勇気が出てきたのではないでしょうか。

もちろん、日本的なすべてのビジネスに可能性があるわけではありません。良い商材であったとしても、オーストラリアのニーズに合わず、オーバースペックである可能性も大いにあります。その見極め、目利きが成功の第一歩と言えるでしょう。

このコラムの著者

永井 政光

永井 政光

(NM AUSTRALIA PTY LTD)

<オーストラリアビジネスの専門家

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