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海外ビジネス コラム

市場動向 2017年07月10日

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日欧EPA締結の大筋合意に関する評価・課題とは?

秋田 哲宏(サードフォース株式会社)

日本と欧州連合(EU)は7月6日に経済連携協定(EPA)の締結で大枠合意しました。日本では、自動車・自動車部品などの輸出増が期待され、チーズやワインなどの価格が引き下げが期待される一方で、国内農業・食品産業では懸念の声が上がっています。本合意に関する海外における受け止め、日本と欧州との貿易の状況、本合意の意味合いについて簡潔にご案内します。

1. 欧米主要紙は本合意を前向きに報道

欧米主要紙は本合意を前向きに報道しています。その主な論点は「自由貿易の推進向けた新たな転換点」というもの。本合意が保護主義的な風潮を打破し、自由貿易を推進する世界の新しい流れとなることを期待しており、欧州の特に農産・食品産業の雇用増加と経済発展への寄与が期待されています。

また、EU離脱を決めた英国にとってのリスクも指摘されています。本EPAは英国がEUを離脱する予定の2019年に発効する予定で、英国はその対象から外れてしまう可能性があり、英国に進出する日系産業の戦略にも影響を与える可能性があります。EUを離脱して各国と二国間貿易協定を結ぶ方が経済発展に寄与するというEU離脱メリットが揺らぐ可能性もあります。

次に、TPPを離脱した米国に対するプレッシャーについても指摘されていました。保護的貿易を主張するトランプ大統領にとって、米国以外の世界が引き続き自由貿易を推進し続けることが明らかになった点で大きなインパクトとなり、より国際協調的な考え方に転換する材料となることが期待されます。

2. 欧州との貿易 – 日本への輸入・日本からの輸出

日本への輸入における、国別シェア(出所:以下全てThe Observatory of Economic Complexity)
日本への輸入に占める欧州のシェアは、ロシアを含めて16%と、アジア、北米よりも存在感は小さい

日本への輸入における、欧州の国別シェアでは、ドイツが最大、ロシア、フランス、アイルランドが続く

日本からの輸出における、国別シェア 欧州への輸出は、14%

日本から欧州への輸出において、ドイツ、英国、オランダ、フランスのシェアが高い

3. 意味合い

◆ ポジティブな意外感

以前からEUとのEPAは議論されていましたが、EU側の自動車への関税率10%を下げる代わりに日本が農産物・食品の関税率を下げることは難しく、早期合意は困難だろうと言われていました。

最近の極めて短い期間に交渉が大きく前進し、盛り上がったと思いきや、合意に至ったという印象があります。この過程で、TPP交渉の是非に関する国民的な議論の盛り上がりはあまり聞かれませんでした。

上記の通り日本の貿易における欧州の存在感はアジア・北米よりも小さく、欧州にとっての日本の存在感も小さいため、比較的交渉が進みやすかったのかもしれません。また、EU側・日本側の双方にとって本協定を積極的に進めるインセンティブが作用したものと思われます。

◆ 比較的縁遠い存在だった欧州市場をより身近にする好機に

欧州諸国では域内の貿易取引が多いです。例えばドイツは輸出・輸入共に欧州との取引が約6割を占めます。フランスやオランダも概ね同様の傾向です。貿易に限らず欧州各国には深く結びつきがあるのです。

日本企業の多くはこれまで海外展開を考える上で、米国、中国、アジアを対象とすることが多く、一部の大企業を除いては、欧州を本格的に攻略する企業は比較的少なかったです。

自動車をはじめとする工業製品ですらも、欧州への輸出は比較的限定的。例えばドイツ・ミュンヘン近郊では日本車は殆ど走っていません。

食品については、ラーメンなど日本食への認知が高まっていますが、日本で日本食ブームと言われているほど欧州で日本食が人気化しているとは言い切れない状況にあります。

本EPAの日本企業にとっての意義は、関税率の引き下げによる直接的な競争力の強化に加えて、大市場であっても縁遠かった欧州市場がより身近になることでしょう。

◆ どうやって輸出拡大に結びつけるか

保守的で成熟市場であり、地理的にも分散したEUへの輸出拡大はすぐに実現できるものではなく、着実で地道な営業努力が必要となります。中小企業はもとより体力の大きい中堅・大企業にとっても、単独で効果的な販路拡大を行うことは容易ではありません。

現地ニーズに関する情報提供、優れた製品を現地に売り込む営業活動、物流機能について、輸出活動を促進する効果的な枠組みが必要となるでしょう。企業グループや業界や地域による緩やかな連帯を通じて、EU市場のニーズを調査・共有し、日本企業と結びつける枠組みを作り、展示会や商談会といった場の提供に加えて、ニーズと製品を結びつける効果的なマッチングを行うことが望ましいと考えられます。この点において政府・自治体による支援・補助も期待されるでしょう。

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秋田 哲宏

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