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海外ビジネス コラム

生活・文化 2022年03月30日

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ベトナム市場は本当に”熱い”のか?

荒島 由也(株式会社スター・コンサルティング・ジャパン)

昨今ベトナムが投資先としてますます注目されている。

読者もベトナムというキーワードをメディアで頻繁に見かけるのではないだろうか。

 

ジェトロが行った海外事業展開に関するアンケート調査(2020年)では海外で事業拡大を図る対象国・地域でベトナムが40.9%と前年の38.9%から拡大し、中国(48.1%)に次ぐ第2位だった点だ。10年前の調査ではベトナムと中国との間には約48%の開きがあったが、その差は年々縮まっており、2020年度は7.2%となった。

 

今回は実際ベトナム市場を舞台に約8年間ビジネスを行ってきた筆者が肌感を読者に共有したい。

 

1.ベトナム経済は確かに右肩上がりである

 

ご想像されるように確かにベトナム経済は過去10年をGDP平均成長率5%以上を保っており、急成長を続ける国である。

このコロナ禍においても2020年にはASEAN主要国の中でもプラス成長を保っていた。過去10年で GDPは約2倍になった。

 

筆者がビジネスを展開する小売・外食市場においては約20年に渡り”2桁”成長を記録している。まさに倍々ゲームのマーケットである。

特筆すべきなのが、富裕層の増加だ。ここでは富裕層を年間世帯可処分所得が35,000ドル以上と定義している。大雑把に考えれば日本の中間層と同じ感覚でお金を使える人々と考えられると思う。

 

ご覧いただけるように2015年から2020年にかけて、富裕層は約2倍になっている。

またアッパーミドル層は2.5倍だ。かつての中国と同様富裕層の増加は益々加速していくと思われる。

 

 

2. では、魅力的な市場なのか?

 

ここまでの話からすれば、誰もが勇んでベトナム市場への展開をしたいと思うだろう。

 

一方で8年間ベトナムでビジネスをしている筆者の肌感は少し異なる。

経済成長のうねりやポテンシャルを大きく感じると同じくらい難しさも感じる市場である。

 

まずGDPについては牽引しているのが海外向けの輸出であることを理解する必要がある。

他の新興国同様にベトナム政府のこれまでの政策は外国企業の投資誘致と国内雇用創出がメインである。

 

ご存知のようにGDPとはざっくりいえば国儲けを表す指標なので、いまベトナムの儲けを

牽引しているのが輸出型産業なのである。

 

先ほど2020年コロナ禍でもベトナムはGDPプラス成長を維持したと書いたが、

実際2020年ベトナムの国内市場のほとんどの業種は大打撃を受けた。

 

例えば飲食店で言えば日本と異なり休業要請支援金などは存在しない。ベトナム政府が決定したロックダウン期間はなんら補償もなく、従業員給料・家賃など固定費用を賄わなくてはならない。

 

2020年国内経済はボロボロだったが、GDPは成長していたのはベトナムがコロナ感染を抑え込み、工場を稼働させていたからだ。

(本コラム執筆時の2021年の7月時点ではコロナ感染拡大が進み、工場なども休業余儀なくされている)

 

筆者のビジネスも例に漏れず大きく打撃受け、多くの企業が破綻に追い込まれた。

この感覚とGDP成長率は全く一致しないのである。

 

つまり何が言いたいかというと、ベトナム国内を市場としてみる場合、GDP成長率は

ある程度”差し引いて”理解しないと見誤るということだ。

 

さらにベトナムのGDP規模は埼玉県1つと同じくらいの規模であることも頭に入れたい。

埼玉県1つ分の規模の市場に世界各国の企業が競い合っているのである。

 

さらに仮に日本製品を売り込もうとしたときにどれくらいの層が購買できるのかという点も冷静に判断したい。現地生産をして価格を抑えるということではなく、輸出しようとした場合はターゲット層になるのは前述した富裕層であるが、果たしてどれくらいの規模なのか。

 

ベトナムの2019年の人口を使うと富裕層は約280万人となるが、このうち読者のサービスに興味があるのは何%いるだろうか。例えば筆者の展開する料理教室や洋菓子の販売については富裕層の誰もが興味も持つわけではないから、よくて10%くらいだと考えている。そうすると約28万人が対象規模となる。こうなると日本の地方都市1つ分の規模である。

 

 

3.だからこそ、冷静に慎重に狙いを見定める。

 

私はベトナム市場にチャンスがないという気は毛頭ない。むしろチャンスが大いにあると思うし、だからこそ約8年前にバックパック1つ背負ってこの地で起業を決意したし、いまもそれは変わっていない。市場の参入のタイミングも早い方がいいだろう。私がゼロベースで今までなんとか商売を続けてこれたのは”誰よりも早くやったこと”に起因すると思う。

 

一方私が商談などを通して日本から進出を検討している企業に感じるのは、”ベトナムは熱い”、”若い人が多い” ”日本製品が人気があるから売れるだろう”という過度な期待や若干放漫とも言える考え方で、進出を検討するが故につまづくということだ。

 

実際多くの企業が撤退してきたのをこの目で見てきた。勝てば官軍、死者に口なし。

成功例は取り上げられても、失敗例は日の目を浴びないのである。

 

だからこそ冷静にマーケット分析をして、ターゲットを見定め、売れるものが何なのかを見極め慎重に展開戦略を立てたい。

 

”日本の製品をそのまま持っていっても売れないよ”

 

この言葉はおそらくよく聞く使い古された言葉なのだが、実際まだそれをやっている事業者がほとんどだ。

 

次回以降、私のコラムではベトナム市場、ベトナム人の特性、嗜好などを様々な角度で取り上げることで読者にベトナム市場参入の糸口を1つでも得てもらえればと思う。

 

 

下記の動画で関連する内容を詳しく解説していますので、ぜひご覧ください!

 



このコラムの著者

荒島 由也

荒島 由也

(株式会社スター・コンサルティング・ジャパン)

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