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海外ビジネス コラム

ネットビジネス 2023年03月20日

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Tokopediaが初の女性CEO、Melissa Siska Juminto氏就任を発表

柳沢 孝一(カケモチ株式会社)

図01
画像出典元:
Profil Melissa Siska Juminto,Bos Perempuan Pertama Tokopedia」 Bisnis.com


インドネシアのECプラットフォーム大手Tokopediaは、2023年2月、Melissa Siska Juminto(メリッサ・シスカ・ジュミント)氏が最高経営責任者(CEO)に就任することを発表しました。

一方、前CEOのWilliam Tanuwijaya(ウィリアム・タヌウィジャヤ)氏は、Tokopediaの会長とGoToの共同会長という新しい役職に就きます。

Melissa氏は、Tokopediaの最も古いメンバーの一人です。彼女はこれまで、GoToグループの取締役、最高人事責任者、Tokopediaの最高執行責任者(COO)を務め、Tokopediaの成功に重要な役割を果たしてきました。

本記事では、2月10日にこのニュースを伝えたKOMPAS.com「Melissa Siska Juminto Ditunjuk sebagai Bos Baru Tokopedia」を主な情報源とし、Tokopediaの新CEO、Melissa Siska Juminto氏についてご紹介します。

Tokopediaの新CEO、Melissa Siska Juminto氏の経歴


学歴


Melissa氏は1988年、インドネシアで生まれました。6歳の時にシンガポールに移住し、学校もシンガポールで通いました。

テクノロジーとビジネスに強い興味を持った彼女は、2004年から2006年までTemasek Polytechnic Singapore(テマセクポリテクニック)でビジネスインフォメーション・テクノロジーを専攻しました。

その後アメリカに渡り、2006年から2008年までShoreline Community College(ショアライン・コミュニティ大学)で経営学を、2008年から2010年までは、University of Washington(ワシントン大学)で会計と情報システムを専攻しました。

Tokopedia以前のキャリア


Melissa氏がインドネシアに戻るきっかけとなったのは、両親が病気になったという知らせでした。帰国当初、Melissaは家族のアパレルビジネスを手伝っていましたが、次第に「両親がやっていることを超えたい」という夢を持つようになりました。

そこでMelissa氏は、起業を志しました。

最初のターゲットは、アパレルの分野でした。貯金をつぎ込み、自ら外注先を探したりWebサイトを作ったりしましたが、この挑戦は失敗に終わりました。

しかし彼女は諦めずに、別のスタートアップ企業を設立しました。今度は多数の店のクーポン情報を集めるWebサイトの運営会社でしたが、当時の多くのインドネシア人にとってはなじみのない種類のサービスだったため浸透しづらく、再び失敗を経験することとなりました。

2度の起業で失敗し、失望することもあったMelissa氏でしたが、これらの経験はターゲット市場を知ることの重要性をより理解するための糧となりました。

貯金が底をついたMelissa氏は、まず勉強するべきだと考えるようになりました。幼少期から英語話者だったMelissa氏のインドネシア語はまだ拙く、言葉の壁を感じていたのです。

そんな中、彼女はTokopediaを知りました。彼女の大学の友人の一人がTokopediaの投資家であり、Tokopediaの求人情報を紹介してくれたのです。その後Melissa氏はTokopediaのことを深く知るようになり、Tokopedia創業者で前CEOであるWilliam氏と面談するに至りました。

Tokopediaでのキャリア


2012年、Melissa氏はTokopediaに入社しました。彼女は創業4年目だったTokopediaの44番目の社員となり、当時の社内で唯一の会計士となりました。彼女はその後1年3か月間、会計・財務主任のポジションを任され、成功を納めました。

2015年、Melissa氏はTokopediaのビジネス担当副部長を任され、同職を7年8か月間務めました。 また2016年にはTokopediaのマネージングディレクターにも就任し、その2年後、COOを兼任することになりました。

CEO就任までTokopediaで11年間のキャリアを積み重ねてきたMelissaはこれから、GoTo(※)の取締役と最高人事責任者も兼務します。

彼女は自らのキャリアの中で、マーケティングチームやビジネスチームをゼロから構築し、上述のような様々な役職を歴任しました。これについて前CEOのWilliam氏はLinkedInの投稿で、「彼女は与えられたそれぞれの挑戦の機会で最大の成果を上げてきた」と述べています。


※GoTo(PT GoTo Gojek Tokopedia Tbk):2021 年に配車アプリ大手 Gojek とEC大手Tokopedia の合併により設立された持株会社

家族について


Melissa氏は2015年に結婚し、現在は3人の子供の母親です。William氏は同じくLinkedInの投稿で、「決意さえあれば、職場と家庭で同時に戦えることをMelissaから学んだ」とし、「Mel(Melissa)を一言で表すと『決意』だ」と述べました。

出産直後でもすぐに職場での戦いに挑むMelissa氏に、William氏は「Mother of Dragon」というあだ名をつけたといいます。


参考:
Melissa Siska Juminto Ditunjuk sebagai Bos Baru Tokopedia」 KOMPAS.com
参考:
Profil Melissa Siska Juminto, Bos Perempuan Pertama Tokopedia」 Bisnis.com

受賞歴と関心事


Tokopediaは彼女のリーダーシップの下、「Indonesia E-Commerce Awards 2016」、「Indonesia Netizen Brand Choice Award 2017」など、多くの賞を獲得しました。また、2022年にはMelissa氏自身がビジネス誌SWAによる「Most Extraordinary Women Business Leaders」の一人に選ばれました。

ビジネス面の業績だけではなく、Melissa氏はジェンダー問題に注意を払う人物としても知られています。彼女は、流産休暇、3か月の妊娠休暇、産休など、職場におけるジェンダーギャップを解消するための様々なしくみを整備してきました。

またMelissa氏は、Tokopediaの職場に託児施設を設けることも進めています。Tokopediaには働く母親たちが子育て体験を共有する社内コミュニティー「Nakamom(※)」があり、産休から職場復帰した従業員は親しみを込めて「Nakama」と呼ばれています。


※NakamomはNakama mom(母親仲間)の略

Tokopediaが産休明けの従業員を「Nakama」と呼ぶ背景


余談ですが、Tokopediaで産休明けの従業員が「Nakama」と呼ばれるのには、以下のような背景があります。

2009年、インドネシアのEC産業がまだ若く、ベンチャーキャピタルも少なかった頃に、日本のEC企業であるBEENOSがTokopediaに投資しました。その後もサイバーエージェントやソフトバンクからも投資を受けています。

日本企業に支えられて創業を果たした経験を持つ創業者William氏はTokopediaの様々な部分に日本的な価値観を取り入れており、「Nakama」という呼び方もその一つなのです。


参考:
Why Japanese venture capital is fuelling Indonesia’s tech boom」TECHINNASIA

Gojekにも女性CEOが就任



今回のGoToの管理職の人事異動により、Gojekにも女性のリーダーが誕生しました。以前Gojekの食品およびセールス&オペレーションの責任者を務めていた、Catherine Hindra Sutjahyo(キャサリン・ヒンドラ・スチャーヒョ)氏です。Catherine氏は今後、Gojekの配車サービスを中心としたGoToのオンデマンドサービスのリーダーを務めることになりました。

Catherine氏はこれまで、Gojekのパートナードライバーとその家族の生活水準の向上のためのしくみ作りに取り組んできたことで知られます。彼女が進めてきた「セルフヘルププログラム」は、保険の提供や手ごろな住宅ローンの提供など多岐にわたり、何百万ものパートナーと家族を保護しています。

また近年は、コロナ禍で大きな影響を受けた中小零細の飲食店をGojekのオンラインフードデリバリーサービスGofoodに招待し、デジタル化を後押しすることで経営を支えるプロジェクトを進めました。Gojekのアプリの新しい機能やサービスの提供にも携わっています。

以上のような実績と会社および社会に対する影響力が評価され、2023 年 2 月にはFortune Indonesiaの「40 UNDER 40 LIST(影響力のある40歳未満40人リスト)」のビジネス部門に選ばれています。


図02
40 UNDER 40 LISTに選ばれたたCatherine Hindra Sutjahyo氏(右上)

画像出典元:
Business」 Fortune Indonesia


参考:
Mengenal Catherine Hindra Sutjahyo, Presiden Baru Gojek」 INVESTOR.ID
参考:
Business」 Fortune Indonesia

インドネシアにおける女性の社会進出



世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)が2022年7月に発表した「The Global Gender Gap Report 2022」のジェンダーギャップ指数ランキングによると、146か国中で日本は116位、インドネシアは92位でした。経済分野のランキングを見るとその差は広がり、日本が121位、インドネシアは80位となっています。


参考:
The Global Gender Gap Report 2022 |P.10 The Global Gender Gap Index 2022 rankings/P.15 The Global Gender Gap Index 2022, results by subindex」 World Economic Forum


インドネシアにおける女性の社会進出や管理職への登用が日本と比べて進んでいる要因の一つとして、働く親が子どもを自分の両親やベビーシッターに預けることが一般的であることが挙げられます。

インドネシアでは都市部であっても三世代同居や近居はまだ珍しくなく、親に加えてその両親、兄弟など複数の大人が小さな子どもの世話を代わる代わる見られる家族も多いのです。

また、ベビーシッターの費用も比較的安く、都市部の共働き世帯であれば無理なく利用できるという事情もあります。この点については裏を返せば「経済格差の表れ」とも言えますが、女性の社会進出に貢献していることは間違いありません。

現に先ほどのFortune Indonesia「40 UNDER 40 LIST」のビジネス部門では、選ばれた29人中9人が女性でした。

このような事情から、インドネシアでは日本ほど女性管理職が珍しいわけではありません。

とはいえ就業機会や職場におけるジェンダーギャップ解消に向けた課題はまだまだ山積している状態で、国を代表するスタートアップ企業である
TokopediaやGojekに初の女性CEOが誕生したことは、特に若い女性たちの間で好意的に受け止められているようです。

2人の新CEOに注目



2022年は不況のあおりを受け、大手EC企業やIT系スタートアップ企業が次々と従業員の解雇を行いました。GoToも全従業員の12%にあたる1,300人もの従業員を解雇しています。


参考:
Menebak Nasib Bisnis E-Commerce di Tengah Badai PHK」 CNN Indonesia


そんな中でもTokopediaとGojekは、社会のニーズに合わせた様々なプロジェクトやサービスをスタートさせました。今年は新たに誕生したリーダーの下、TokopediaとGojekが従業員、顧客、そして社会にどのような影響を与えていくのかが注目されます。

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柳沢 孝一

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