パートナー企業との二人三脚で「中国越境EC事業」を成功させた「SHOP JAPAN」
プロフィール
株式会社オークローンマーケティング
ビジネスデベロップメントマネージャー / グローバルエクスパンション ディヴィジョン
手塚 健
2016年8月に株式会社オークローンマーケティングに入社。同社ブランド「SHOP JAPAN」におけるグローバルエクスパンション ディヴィジョンのマネージャーとして、中国越境EC事業の立ち上げを担当。
プロフィール
株式会社オークローンマーケティング
ビジネスデベロップメント / グローバルエクスパンション ディヴィジョン
堀井 慧
2016年12月に株式会社オークローンマーケティングに入社。2017年4月より同社のグローバルエクスパンション ディヴィジョンに異動。同社ブランド「SHOP JAPAN」による中国越境EC事業では、クリエイティブ業務のほかディレクション全般を担当。
信頼できるパートナー企業の存在こそがもっとも重要
ーーまずは御社の事業概要について教えてください。
手塚:テレビ放送やインターネットにおける通信販売事業を行っています。弊社のブランドである「SHOP JAPAN(ショップジャパン)」においては、過去にはビリーズブートキャンプ、最近ですとスレンダートーンやトゥルースリーパーといった商品がご好評をいただいております。
ーー今回のテーマは「中国への越境EC」になりますが、中国でのオンライン通信販売事業に進出しようと思われたきっかけは?
手塚:2年ほど前から、弊社では東南アジア方面に注力するようになり、フィリピンとタイでテレビショッピング事業を開始する動きがあったんです。その地域をフォローする部署を作ろうと設立されたのが、私と堀井が所属しているグローバルエクスパンションという部署になります。
もともとは東南アジアを中心とした業務を行っていたのですが、それと平行して色々と情報を集めると、中国の越境EC市場がどのデータをどのように見ても、非常に盛り上がっていることがわかりました。同国での市場規模や購買層の消費意欲が尋常じゃなく高まっている中で、弊社としてもこれは取り組むべき事業領域だろうと判断して、本格的にリサーチを始めたのがきっかけですね。
ーー実際には2016年11月に、中国のモバイル特化型ECサイト「小紅書(RED)」にて越境ECをスタートされています。
手塚:今回は弊社の主力商品として「ながらウォーク」という健康器具と、「セラフィット」というキッチン用品を出品しました。私が2016年の8月に入社したのですが、最初に中国越境ECとしてモノが流れたのが、2016年11月。入社してちょうど3ヵ月後でした。
ーーかなりスピーディーな展開ですね。進出にあたっては、どのようなリサーチをされたのでしょうか?
手塚:入社して最初にしたことがJETRO(日本貿易振機構)さんへの会員登録でした。JETROさんからのメルマガは全て目を通していましたし、セミナーにも参加することで、政府ベースの情報がきちんと入手できる環境を整えました。
あとは当然「Digima〜出島〜」さんも使わせていただきましたよ(笑)。中国はもちろん東南アジアに関するリサーチでも、必ず「Digima〜出島〜」さんに連絡して、”この国のこんなジャンルで支援していただける企業を紹介してほしい…” とオーダーすると、2日くらいですぐに取引先候補のリストがくるので、大変重宝させていただきました。
特に最初のFS(フィジビリティスタディ=プロジェクト事業化の可能性を調査すること)やリサーチ段階においては、もちろんネットでもいろいろ検索できるのですが、正直時間的コストもかかりますから。でも「Digima〜出島〜」に電話でお願いすれば、2日間くらいでリストがいただけて、かつこちらが気になった企業さんには全部アポをとってくれるので。しかも無料で。これは大変ありがたかったですね。
ーーご自身でリサーチをされる中で、もっとも苦労した点は?
手塚:そうですねぇ…まず中国で越境ECをやろうといっても、どうやって始めていいのかが分からないという(苦笑)。「越境ECであれば、まずは天猫国際(T-mall)からだ」って言う人もいれば、「いやいや京東全球講(JD worldwide)でやれば間違いない」と言う人もいるなど、それこそ色々な意見があって…。
そういった販売ノウハウが分からないということに加えて、弊社の商品は、テレビショッピングの効果もあって、おかげさまで国内ではそこそこの知名度はいただいていたと思うのですが、こと中国に関しますと、ほとんど知名度がない状態だったんですね。ブランドである「SHOP JAPAN」の名前を出せば、ある程度興味を持ってくれたりするのですが、商品に関してはまったくでした…。
加えて、商品の実績も知名度もないため、中国現地のバイヤーさんにはまったく相手にしてもらえない状態が続いたんです。あえて言葉を選ばずに言いますと、中国のバイヤーさんにしても、それこそ海千山千なところがありまして…(苦笑)。交渉も思うように行かず、こちらから提案してもドロップの連続で、本当に毎日が切ない感じでしたね…。
ーーそういった厳しい状態が続く中で、弊社主催のイベント「海外ビジネスサミット」にて出会った、進出支援企業である「ウィーンゴー」社のサポートこそが、そのような事態を好転させていったんでしょうか?
手塚:おっしゃる通りですね。サポート企業であるウィーンゴーさんからの販売ノウハウの提供と、プロモーション施策における手厚いサポートこそが、今回の中国越境EC事業の成果へと繋がりました。
ウィーンゴーさんは、それこそ中国人社員の方がたくさん所属されているのですが、弊社の堀井がブリッジとなってくれたのも大きかったですね。彼女は中国語が母国語のマルチリンガルなので、それこそ当初から毎日のように中国人の担当者とダイレクトにやり取りしていましたから(笑)。
ーー具体的にはウィーンゴーさんとどのようなやり取りを?
堀井:基本的にはまず私たちの方からウィーンゴーさんに商品の提案をします。その中で、商品の特性のヒアリングに加えて、中国の消費者の好みなどを照らし合わせながら、実際に販売に至るまでの導線をステップバイステップで進めていくイメージですね。
手塚:例えば商品写真だと、私たちはもともと宣伝素材用の写真を持っているんですけど、それを最初に渡したら「手塚さん、こんなの全然ダメですよ」と(苦笑)。「中国人にはこれは響かないですよ、このくらいの角度でここの部分に寄った画像をくれませんか?」というオーダーがきたりとか(苦笑)。当然のごとく撮り直しです(苦笑)。また、商品の説明文についても、「日本の文章をそのまま中国に訳してもまったく効果がない」と強調されました。そもそも中国人と日本人では読みたい内容が全く異なるんだと。
ーー両者の訴求ポイントが違うと?
堀井:そうなんです。あとは、私たちの従来の強みでもあった映像制作の面でも大きな気づきがありましたね。日本国内でのブランディングと実績として、映像をたくさん持っているのが強みだったのですが、こと中国の越境ECに関しては、従来の映像を中国向けにローカライズすることが求められました。
例えば、中国語への吹き替えをほどこした映像ではなく、あえて日本語の音声を残したままで中国語の字幕をつける方がいいというアドバイスをもらいました。その方が現地の消費者には受けがいいんですね。
ーー日本の商品だという信頼が伝わるからでしょうか?
堀井:その通りです。また、字幕においても、中国のユーザーさんに響くような翻訳の仕方をディレクションしていただきましたね。
ーーでは、今回「天猫国際(T-mall)」や「京東全球講(JD worldwide)」という中国の2大モールではなく、モバイル特化型の越境ECアプリである「小紅書(RED)」に出店した理由は何だったのでしょうか?
堀井:結論から言いますと、結果としてそうなったという感じですね。具体的には、「小紅書(RED)」のユーザーと弊社の商品がマッチした結果だと思っています。もちろん他の色々なサイトでも試したのですが、「小紅書(RED)」ならではの〝流行に敏感で海外の商品にも興味がある若い女性〟というユーザー層にもっともマッチしたんだと思います。また「小紅書(RED)」は自社のブランドイメージに価値を置いているので、そのブランディングに合わない商品は自然とドロップされるので、そこにも気を遣いましたね。
手塚:そもそも「小紅書(RED)」のバイヤーさんも、売上のノルマがあるわけですね。各自の商品の枠というものがあって、その中で売上を達成しなければならない。いわば「小紅書(RED)」の中での売上の競争があるわけです。つまり、こちらが載せたい商品をバイヤーさんに売り込むだけでなく、我々自身が自社商品が売れるような努力をサイト上ですることをバイヤーさんにアピールする必要があるんです。
そういった中国現地のバイヤーさん達との丁々発止の交渉は、日本人である私では、恐らく絶対に無理だと思っています。なぜなら越境ECのゲームルール自体が、彼ら中国人のビジネスの価値観や判断基準を元に作られているからです。
これは今回のインタビューで強調したいところなんですけど、その相手のゲームルールにいかに乗るか、さらにそこで商品をいかに売っていくのか、ということを、我々日本企業は考えなければならない。ただ自分たちが売りたい商品を売り込むのではなく、先方に〝売りたい〟と思わせる交渉をしなければならないんですね。今回弊社の商品を掲載できたのも、中国のECに強いウィーンゴーさんが交渉してくれたからです。
そもそも中国では「SHOP JAPAN」の商品が認知されていないという状況の中で、あの手この手を使って「とりあえず売ってみてくれないか」と、現地バイヤーさんと交渉をしてくれるのがパートナーであるウィーンゴーさんの役目だったりする。そして、従来の商品販売にプレゼント企画を加えるなど、国内とは違ったキャンペーンプランの提案といった、交渉の臨むための〝武器〟を提供するのが、我々の役目なんです。そのようにお互いがタッグを組むことで、未開であった中国越境ECの販路を開拓できたのだと思っています。
ーーやはり現地パートナーの協力なくしては、今回のような成果を上げることは難しかったと?
手塚:相当難しかったと思いますね。中国のEC市場って、日本側だけの視点で「中国向け越境EC」と言われたりしますが、欧米諸国はもちろん他のアジア各国も含めた、いわば全世界のメーカーが狙っている市場なんですね。
それだけホットな市場だから、現地で知名度がない商品をバイヤーに取り上げてもらうには、彼らがそれをピックアップするだけの理由を作ってあげなきゃいけないんです。いわば世界中から売り込みが絶えない超レッドオーシャンな市場なんですね。
しかもただ(サイトに商品を)載せれば売れるというわけでもない。それこそ数十万点の商品が掲載されているわけだから、ただ掲載してるだけだとアッと言う間に埋もれてしまうんです。
堀井:それに加えて流れも速いですからね。それこそ一週間単位でトレンドの流れが変わってしまいますから。例えば、日本のメディアで「中国のECでは酵素の商品が人気です」と報じられたとします。それで「そうか中国では酵素アイテムを出せば売れるんだ」って思って(サイトに)出しても、その頃にはすでにいろんなブランドの何十種類もの酵素商品が市場に溢れているという状態です。そういった意味でもスピード感は大事だと思います。
手塚:ちょっと人気が出たと思ったらすぐに飽和状態になりますしね。だからこそ、「小紅書(RED)」はもちろん、「淘宝網(Taobao)」や「天猫国際(T-mall)」や「京東全球講(JD worldwide)」といった他のECサイトの流れを追いつつ、その潮目を読む人が必要だったりするんです。当然、私にはそのようなことはできません(苦笑)。でもウィーンゴーの担当の方は常に市場の流れを読みながら、我々に的確な指示を与えてくれましたね。
ーーそのウィーンゴーの役員さんが同行する形で、上海の「小紅書(RED)」本社への表敬訪問も行ったそうですね。
手塚:はい。11月の「ブラックフライデー」と呼ばれる中国EC商戦日を終え、ある程度の実績を上げた後の春節(新正月)明けにうかがいました。私が行ったところで何の役にも立たないのですが(苦笑)、「SHOP JAPAN」としての本気度を直接アピールすることと、自分たちの名前を覚えていただくことが目的でした。
そのような、いわゆる〝トップセールス〟も大事なポイントなのでしょうか?
手塚:そうですねぇ…ECというデジタルな世界ではあるのですが、やはりバイヤーさんとの関係ですとか、いわゆる〝握り〟ですとか、そういったことで商品が採用されるか否かが決まっていく世界でもあるんですね。その辺りを考慮すれば、それなりに意味はあることだと思いますね。それとポイントという意味では、たとえ小さなイベントであっても、コツコツと取り組みことが大事だということはお伝えしたいですね。
多くの中国ECサイトには月に一回何らかのイベントがあるんです。例えば日本だと、「中国ECにおける最大の商戦日であるダブルイレブン(11/11の独身の日) でTモールが何兆円売りました」といったニュースが大きな話題となっていて、確かにその通りなのですが、結局は打ち上げ花火みたいなものだと思っているんです(苦笑)。
大切なのは、ダブルイレブンのようなスペシャルなイベントだけにとらわれず、月一の小さなイベントであっても、自社から何らかの効果的な提案をして、バイヤーさんとの信頼関係を築きながら、商品を確実に売ってもらうことだと思っています。そういった小さな成功の積み重ねがあってこそ、ようやくビックイベントで花が開くといいいますか…。
…などと偉そうなことを言ってしまいましたが、マスコミではダブルイレブンの成功だけがクローズアップされることが多いので、あえて申し上げた次第です(苦笑)。
ーーお話をまとめると、今回の越境EC事業においては、やはりパートナー企業さんの存在は、とても大きいということですね。
手塚:おっしゃる通りですね。仮に中国での販売ノウハウや、自社商品の知名度がなくても、パートナー企業さんの手厚い支援があれば、有力な販路を作ることは可能だと思います。あとは、ただ商品をサイトに掲載するだけでは売れなくて、良いパートナー=熱心に売ってくれる人がいて初めて売れ始めるということは言えますね。
ーー熱心に売ってくれる人=ウィーンゴーのご担当者さんだったと。
手塚:熱意が違いましたね。本当に売っていこうという気持ちがすごく感じられて。担当者さんからの「あれをください! これもください!」といった熱心なオーダーがあると、こちらとしても「こういうのはどうだろう? ああいうのはどうだろう?」と、気がつけば一緒に夢中になって商品販売についてのやり取りをしているんです。
堀井:商品を売ろうという姿勢と情熱には感銘を受けましたね。それこそ部署内でのやり取りよりも、担当者さんとの方が多かったりしますから(笑)。中国では国慶節(建国記念日)という大型連休があるのですが、担当者さんは旦那さんとスペインに旅行に行っていたにも関わらず、商品の売れ行きが気になるからとWeChatで連絡をくれるほどでしたから(苦笑)。
手塚:メーカー側としては、そこまでして売ってくれようとしていることが本当にありがたいですね。
ーー最後に、ここまでの中国越境EC事業を振り返ってみての所感はいかがでしょうか?
手塚:やってみて実感したことは…最初の一個を売るのがものすごく大変だということですね。最初は本当にまったく売れなくてですね…(苦笑)。そういった中で、先ほどお話ししたウィーンゴーさんからのノウハウの提供やプロモーション施策を駆使することで、現状の結果を出すことはできたのですが、やっぱり売れない商品って何もしなければ本当に売れないままなんですね…。でも、いざ売れ始めると…これが倍々ゲームになる可能性も大いにあるんです。
そういった底知れない奥行きこそが、母数の多い中国EC市場ならではの魅力だと思います。最初は難しいかもしれませんが、閉ざされたドアをなんとか開けることができて、その後に続くレールに上手く乗れれば…というのが私個人の感想ですね。
ーーそれは中国マーケットならではの魅力ですね。
堀井:中国EC市場ならではの変化のスピードもとても刺激的ですね。海外市場の開拓は初めての経験でしたが、個人的なバックグラウンドが活かせたことも良かったです。あとは、情熱を持った担当者さんに出会えたことはとても嬉しかったですね(笑)。
手塚:そうですね。そのような素晴らしい方をアサインしてくれたサポート企業と出会えたことも本当にラッキーでした。やはり信頼できるパートナー企業の存在こそがもっとも重要であることは間違いありません。それは越境ECに限らず、すべての海外ビジネスにおいて言えることだと思います。
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