海外進出企業インタビュー

掲載日:2016年8月4日

海外進出企業

各国の小売店と日本メーカーを繋ぐ「SD export」で、初の海外展開をしたラクーンの海外プロジェクト成功秘話

プロフィール

株式会社ラクーン

【阿部 智樹】 EC事業管掌
入社16年目。EC事業の管掌役員としてSD(スーパーデリバリー)事業の成長や、COREC事業の立ち上げなどを担当。現在は、SD事業のさらなる成長に向け、海外事業である「SD export」に注力。

【浜本 健作】SD事業推進部 海外マーケティングチーム 
中途入社6年目。入社当初よりスーパーデリバリーを担当し、海外マーケティングチームとして、海外展開の際の実務面の責任者として推進を担当。

御社の事業と海外展開の背景について教えてください。

ラクーンが提供する「スーパーデリバリー」は、ファッション・雑貨などを扱うメーカーと小売店が継続して取引できる卸・仕入れのサイトです。利用することでメーカーと小売店は新たな取引機会が生まれ、さらに新商品の紹介や受発注のやりとりも効率化されます。また、代金はスーパーデリバリーが小売店から回収し、メーカーへまとめて支払うため、未回収リスクのない取引を実現します。

2015年より国内だけではなく海外への販売も可能となりました。輸出販売を行いたいメーカーをサポートする「SD export」を利用すれば、メーカーは煩雑な輸出手続きをすることなく世界各国の小売店・企業と手軽で安全な取引ができます。これまでも海外の小売店からの引き合いをいただくことがなかったわけではありませんでした。ただ、日本語サイトのみだったので、「日本語がわかること」と「国内での商品の受け取りができること」などの条件がありました。

それが、2014年に会員登録を英語化したところ、海外からの登録が増えてきていたこともあり、「一部変えただけでも、これだけ反応があるということは、きっとニーズがある」と確信しました。また、オリンピックも決まり、ここで一気に展開しなくてはということになり、2015年に海外展開をスタートしはじめました。

初の海外展開だったとのことですが、どのように進めていかれたのでしょうか?

自社のサービスの海外展開も初でしたし、代表がインポート事業の経験があるものの、「輸出」についての経験者は社内にいない状態でのスタートでした。そこでやったことは3つです。まずは、サービスの英語化。そして、商品の受け取りを海外でも出来るようにすること。そして、消費税がかからずに購入できるようにすることです。

本当に地道に、1つずつ知識をつけ、とにかく様々な企業の方と会いました。2015年の8月25日にサービスをスタートさせましたが、何度も修正もしながらここまで進めてきました。「そもそも、どうやったらこの商品は海外に送れるのか?」「必要な書類は?」「輸出規制は?」など、何か疑問や問題にぶつかる度に、専門にサポートされている物流会社様、通関・輸出サービス会社様と相談しながらノウハウを教えてもらいました。「これまでできなかったことでも、両社で一緒に取り組めば、新しいサービスができるのではないか?」という視点でパートナーとして、話を聞いてもらいました。1つ物を送るだけでも国によって様々なルールやリスクがあるので、一緒に対応策も練ってもらいました。こういったやりとりで解決策ができ、新しい取り組みをしていけば、サービスとしての強みができるビジネスチャンスになるなという想いで取り組んでいましたね。

お客様の反応としては、買いたい側の小売店様からはかなり反響がありました。輸出をするメーカー様側では、海外輸出をもともと視野に入れていた企業や新しい市場にチャレンジしてみたいという企業が最初に反応をくれました。スーパーデリバリーを利用いただいている企業様には、「SD export」を活用する場合の追加コストも求めませんでした。ただし、輸出する際に必要な荷物の重さの情報提供などの作業は、各社に行っていただくことになりました。商品ページもこちらで翻訳しますし、メーカー側にはかなりメリットがあるかたちで提供することで協力してもらいました。そして、スタート段階で200社、7万点程がリリース時の2015年8月25日に揃いました。スーパーデリバリー全体で1000社あったうち200社です。現在は、500数十社にご利用いたき、15万点程と期待した通りの結果となっています。

対応国をほぼ全世界にしたいと考え、EMSとDHLで両方で送れる国134ヶ国全て対応しています。反響が大きいのはASEAN・中華圏の香港・台湾・韓国などは特に反響がありましたね。最初に売れたのは、鞄やレデュースなどのアパレルで、陶器やステーショナリーもその後、売れ始めました。

どのように海外ビジネス支援サポート企業を活用されましたか?

Webプロモーションについては、現状ローカライズしたリスティング広告や、Google、NAVER、百度(バイドゥ)などサーチエンジンへのアプローチもしています。こういった取り組みは、海外Webマーケティングに強い支援会社にサポート依頼をしました。まだ、現地向けにローカライズしたプロモーションはできていないですが、海外媒体にも今後取り組みたいと思っています。オープンの際のプレスリリースは、アメリカを中心に全世界配信で行いました。また、唯一現地のメディアで配布というところでは、フランスの国際見本市「メゾン・エ・オブジェ」で、繊研新聞が当日配布する3~4000部のものに1面に広告を入れて配布をしました。

前述したパートナーとして動いていただいた輸出関連のサポート企業は、今でも6~7社、事前準備では数十社と会いました。物流や通関関連だけでも10数社、貿易保険の会社様などとも会いました。システムは社内の開発部で作れますが、インボイスの書類や、税関チェックのための文言は、物流会社様に確認をお願いし、英語化は翻訳会社様などにもお願いしました。

「Digima~出島~」は、どのように活用いただいていますか?

初めての海外展開だったこともありましたし、海外マーケティングチーム内には入社2年目の若手女性メンバーもいたので、彼女自身が知識を深めるためにも情報収集を行ってもらっていました。その中で「Digima~出島~」を活用させていただきました。各国の市場や貿易関連の情報の他、協力パートナーを探している中で「Digima~出島~」主催の「海外ビジネスセミナー」を検索で知って、参加させていただいたようです。

セミナー参加以外にも「Digima News」など海外ビジネスニュースコーナーでは、様々な国のニュースが毎日一覧で閲覧できるので、日々の海外の情報収集に活用させていただいていますし、そのメンバーには「海外ビジネスEXPO」にも足を運んでもらいました。様々な国を対象とした支援企業が60社以上相談ブースを出展されており、効率よく海外の展示会や支援サービスの概要を知ることができたと聞いています。海外ビジネスの交流の場も多く提供いただいているため、若手メンバーも、様々な海外サポート企業の方との人脈ができるなど、幅広く利用できる点を評価して、利用させていただいています。

海外ビジネスを行う上での秘訣やアドバイスはありますか?

日本に向けてのサービスだけだったので、英訳や各国の方々が利用することを想定した場合に、海外の人には伝わらないのでは?と気付かされることが多くありました。日本人なら勝手に理解して察してくれることも、商品の説明1つ1つ、わかりやすい表現をする必要がありました。例えば、商品の大きさの表現や単位表記、日本でOKなものが海外ではNGということも多く、成分なども規制やルールが違うので分かりやすいよう表記する必要があります。「日本だったらこう」ではなく、どの国でも通じるようにする意識というのはサービスを広げる上で重要なポイントだと感じています。

あとは1年弱でサービスインとなったのですが、全部最初から完璧にしようとしていたら、いつまでも出せなかったと思います。やりながらメンテナンスや精度を高めていくことも新しい事をやる場合は必要です。こういった考えでの取り組みだったので、何万商品というものを一気に出せたと思っています。もちろん、抑えるべきところは慎重にという事もお客さまが利用するサービスですから大事にしました。

あとはパートナー企業と密に接点をもつことが大事だと思います。開始までは2週に1度、やりたいことを伝えて宿題にして、解決してもらってなど関係性を築けた事が大きいです。パートナーの方にも、これまでやっていなかったことを弊社の要望を聞いていただくことで、相手のサービスが広がるような取り組みが出来たと思います。

今後の展開について教えてください。

サービス開始後、2016年2月には決済面でカードと銀行振り込みのみだったものを、paypalの対応を導入したり、3月には、お客様からの要望で配送に日本郵便のエアー便と船便での運送を選択肢として追加したことでコスト面が抑えられるようになりました。今後も、それぞのニーズにあったサービスを増やし、ご要望にあったものを選べるようにしていきたいと思っています。日々たくさんご意見を寄せていただいているので、それが多数の方の希望を叶えるニーズなのかを見極めながら、導入していきたいと思います。

また、中小メーカー様にご利用いただいているサービスなので、「海外ではこういう商品が売れる」というデータを掴んでいって、情報を出していけるようになれば、もっと強いサービスになると思っています。サイトの中で売ることで、海外市場への販売のトライアルができるので、私どもも一緒になって日本の商材の販売ブームをつくるようなこともやっていきたいなと思っています。

海外進出無料相談サービス