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- 海外進出事例に学ぶ! アメリカAmazon運用の基本と実践ポイント ~現地消費者の心理を捉えた「COEL式」越境ECマーケティングとは?~
アメリカEC市場の特性とターゲット設定の重要性
松尾氏:本日はグリーンハウスの脊山さんと共に、アメリカの成功事例と実践的な内容についてお届けできればと思っております。アジェンダはこちらの4つです。
・アメリカECで 売れるためのマーケティング戦略
・アメリカAmazonの概要と販売におけるポイント
・グリーンハウスさんの具体的な事例の紹介
・消費者ニーズに合わせた商品選定のポイント
まずは、アメリカEC市場の特性についてお話していきます。
アメリカ市場は約1兆2,230億ドル規模と非常に大きく、その中でもAmazonは37%以上のシェアを占めています。この数字だけを見ても、多くの日本企業がチャンスと感じるのは理解できますが、単に市場が大きいからといって成功が保証されるわけではありません。成功するためには、まずターゲット市場を明確にすることが欠かせません。たとえば、ペット所有者全般を対象にするのではなく、アウトドア好きの30–45歳の犬の飼い主といった具体的なターゲット層に絞り込む必要があります。これにより、より共感を得やすいマーケティング戦略が可能になります。
また、ターゲット層を設定する際にも考慮すべきポイントがあります。アメリカの消費者は、地域ごとにライフスタイルや法律が大きく異なります。たとえば、西海岸ではエコ志向の消費者が多く、東海岸では伝統や歴史を重視する傾向があります。これらの違いを理解し、ターゲット層のライフスタイルに合ったアプローチを取ることが成功の鍵です。
マーケティング戦略における日本との違い

松尾氏:さらに、アメリカでは『ハードセル』と呼ばれる直接的で競争力をアピールする広告が主流です。日本の『ソフトセル』とは異なり、ユーモアやシンプルな表現で商品の特徴を伝えることが効果的となります。
つまり、日本とアメリカでは広告手法が大きく異なるのです。日本では控えめで感情に訴える「ソフトセル」アプローチが多く、情報量が多く完成度の高い広告が主流です。一方、アメリカでは商品の特徴や競合比較を明確に伝える「ハードセル」アプローチが一般的で、シンプルな言葉やユーモアを用いて直接的に消費者へ訴えかける広告が多いです。
そのため、アメリカ市場では、既存の日本の広告デザインや表現をそのまま翻訳して使用することは効果的でない場合が多く、現地の消費者心理や文化に合わせた調整が必要です。したがって、広告戦略は、自社やパートナーと相談しながら、商品やタイミングに適した方法を選ぶことが重要なのです。
また、ターゲットの理解や広告の手法に加えて、ブランドとしての発信も重要です。単に商品の機能や価格を伝えるだけでは不十分であり、ブランドのストーリーを通じて価値観を共有することが鍵となります。具体的には、ブランド価値観やミッションを明確化し、地域社会や環境問題への取り組みなどを通じて消費者の共感を得ることが大切です。例えば、ポートランドのスーパーマーケット「ニューシーズンズ」は、利益の一部を地域団体に寄付する活動を行い、消費者からの支持を得ています。このような環境問題やエコの取り組みは、特にZ世代やミレニアル世代の関心を引きつける要素となります。詳細については実例を含めたブログなども参考にしてください。
さて、ここで、進出企業であるグリーンハウスから見たマーケティングにおいて重要だと感じたポイントについてお伺いしましょう。脊山さんは、どういった点を重視していましたか?
脊山氏: そうですね、グリーンハウスではアメリカ市場を知り、マーケティング戦略を進めていく上で、まず「競合調査」を徹底しました。競合他社が少ない分野を見極め、規制をクリアした製品で挑むという2点を軸に商品を選定しました。また、アメリカの住宅事情を考慮し、日本で売れる小型家電だけでなく、やや大型の家電製品にもフォーカスを移しました。このように、現地の需要に応じた商品選定が重要だと思います。
Amazonを活用したECビジネスとは?

松尾氏:それでは、そういった市場特性やマーケティング戦略を念頭に、実際にAmazonを活用したECビジネスの進め方についてお話していきます。そもそも、本当にAmazonを活用すべきかどうかを考えていただくために、まずはAmazonについての詳細をお伝えします。
一般的に、Amazon USが選ばれる理由として、規模感や信頼性が挙げられ、Amazonのユニークビジターに関しては日本と比べると5.7倍以上あると言われています。アメリカのEC市場においてAmazonは37%以上のシェアを占めており、今年に関しては40% 以上になる見込みと言われています。また、約1億9,000万人(アメリカ総人口の半分以上に当たります)のプライム会員が存在し、アメリカ人の生活インフラとして機能しています。
Amazonでは2023年時点で販売商品の61%はサードパーティーセラーが担っており、Amazonもセラー支援に力を入れています。これこそがみなさまが検討しているAmazonを活用したECビジネスです。ただし、出品する際には次の3点に注意する必要があります。
・出品制限の有無:販売が禁止されている商品や制約がある商品では出品が難しい。
・市場ニーズ:商品に十分な需要があるかを確認する。
・収益性:販売コストを差し引いても十分な利益が得られるかを見極める。
これらの条件を満たした上で戦略を練ることが成功の鍵となります。また、Amazonを活用したECビジネスは、多くの商品に適してはいますが、商品によっての相性もあります。広く購入される生活用品はAmazonとの相性が良い一方、ジュエリーや一点物の伝統工芸品などは適さない場合があります。
さて、そんなAmazon販売において、注意点やポイントについてもお話していきましょう。脊山さんはどういった点に注意をしていましたか?
Amazon販売における注意点とポイント
脊山氏:そうですね、まず規制に注意が必要です。特に家電製品の場合、アメリカの電圧や安全基準をクリアする必要があります。たとえば、日本では一般的な電圧は100Vですが、アメリカでは120Vが主流であり、これに適応しない製品は販売が許可されません。また、FCC(連邦通信委員会)の認証やUL(アンダーライターズ・ラボラトリーズ)の安全規格を取得することも求められる場合があります。これらの規制をクリアするためには、事前に専門知識を持ったパートナーと協力することが重要です。
松尾氏:なるほど。 加えて、Amazonで販売する際には、商品の適正価格設定とローカライズが極めて重要だと思いますね。たとえば、日本で販売されているパッケージをそのまま使用すると返品率が高まる可能性があるため、英語表記や現地仕様に合わせたパッケージや説明書が必要です。また、商品ページの最適化は成功の鍵であり、1‒2分で商品の魅力が伝わるように、写真や動画を活用してシンプルかつ視覚的に訴求する工夫をすると良いでしょう。
Amazon販売の基本ステップ

松尾氏:さて、Amazonでの販売の基本ステップについても説明していきましょう。初めての出品では、まず商品のカテゴリーや競合を調査し、売れる可能性の高いアイテムを選ぶことが重要です。その上で、FBA(Fulfillment by Amazon)を利用して迅速な配送を実現し、消費者の信頼を得ることがポイントです。また、SEO対策として商品タイトルや説明文に適切なキーワードを盛り込み、検索結果で目立つように工夫します。また、売れてきた際にはレビューが付いてきます。このレビューをもとに、さらなる改善活動を実施していきます。脊山さんは実際にはどのように進めていきましたか?
脊山氏: 私たちは当初、最低限のコストで始めることを意識しました。そのため、日本向けの商品に英語のラベルを追加するだけで出品をスタートしましたが、レビューを参考に改良を進め、現在ではアメリカ市場向けに特化した商品開発も進めています。初期段階ではリスクを抑えつつ、徐々に拡大していく戦略が有効だと感じています。
また、規制をクリアするための実際のプロセスについては、私たちの家電製品では、UL認証を取得するために設計を一部変更しました。たとえば、アメリカ市場では感電防止のための特定の部品が必須とされており、その基準に合わせる必要がありました。また、製品のエネルギー効率を示すラベルも州ごとに異なる要件があるため、それぞれに対応した形で製品を提供しました。
更に売上を上げていくための実践ポイント
松尾氏: アメリカ市場では、レビューの数や商品の視認性が売上に大きく影響します。たとえば、インフルエンサーによるプロモーションやユーザー生成コンテンツ(UGC)を活用して、商品の使い方を視覚的に伝えることが効果的です。また、FBA(Fulfillment by Amazon)の活用により迅速な配送を実現し、信頼性を高めることも重要です。脊山さんはどのように売上を伸ばしていきましたか?
脊山氏: そうですね、先程もお伝えした通り、初期段階では日本向け商品の英語化だけでスタートしましたが、レビューをもとに商品パッケージや説明書の改良を進めました。また、季節ごとの需要に合わせて在庫やプロモーションを調整することで、売上を最大化しました。たとえば、父の日やホリデーシーズンには在庫を増やし、広告予算を集中投下しました。
また、商品ページの最適化としては、視覚的にわかりやすい画像や動画を中心に、使い方や特徴を簡潔に説明しました。特にギフト需要を意識し、プレゼントとして購入されやすいようなデザインやメッセージを盛り込むことで、コンバージョン率を向上させました。
松尾氏: 私たちは、Amazonの検索アルゴリズムを意識して、商品タイトルや説明文に適切なキーワードを配置するなどのサポートをさせていただくことが多いです。また、季節や需要に応じて価格を柔軟に変更し、競争力を維持するよう努めています。このような細かな調整が、長期的な成功につながります。
脊山氏:そうですね。繰り返しになりますが、レビューは本当に消費者の信頼を得るための重要な要素です。たとえば、最初のレビューを増やすために、初期段階では割引価格で販売し、購入者にレビューを依頼する戦略を取りました。さらに、否定的なレビューにも迅速に対応し、商品の改良に役立てることでブランドイメージを向上させました。
まとめ
今回のセミナーでは、アメリカ市場での越境EC販売に必要な知識と戦略についてお話をいただきました。成功のためには、ターゲット市場とターゲット市場を設定する際には、単に広範な市場を狙うのではなく、具体的な消費者層に焦点を当てることが重要です。
その際、地域ごとのライフスタイルや文化、法律の違いを理解し、消費者の心理に合った商品や広告を展開することで、効果的なマーケティングが可能になります。また、規制をクリアするプロセスはアメリカ市場特有の課題ですが、これを乗り越えることで信頼性を築くことができます。
Amazonでの販売においては、商品ページの最適化や価格設定、レビューの管理が売上向上の鍵です。特にFBAの活用による迅速な配送や現地ニーズに即したローカライズが、消費者の満足度向上に寄与します。さらに、季節ごとの需要を見越した在庫管理やプロモーション戦略を立てることで、競争の激しいアメリカ市場においても大きな成功を収める可能性があります。
このような取り組みを継続することで、日本企業はアメリカ市場での越境EC事業を着実に成長させることができるでしょう。本セミナーを通じて得た知識を活用し、新たなビジネスチャンスを切り開いていただければ幸いです。