海外進出企業インタビュー

掲載日:2016年6月20日

海外進出企業

世界15拠点で不動産事業を展開、多角的に新事業に挑戦するレオパレス21の海外展開の秘訣とは?

プロフィール

株式会社レオパレス21

取締役 副社長執行役員

深山 忠広

営業総本部長やコーポレート業務推進本部長を兼任し、現在は副社長執行役員。2004年の上海でのインバウンド向け賃貸事業展開他、2013年より海外へのアウトバウンド事業の推進も図っており、自ら積極的に現地視察に赴き、海外事業の多角化と更なる世界拠点の展開を目指している。

新規マーケットの参入には、多角的なグローバル視点と現地視察が必須

海外事業について教えていただけますでしょうか?

日本の国内市場が縮小しつつある中で成長戦略として海外への展開は必要でした。2002年より国内事業の延長として、中国・韓国・台湾のような東アジアの拠点で、主に海外から日本へ来るお客様に対して日本国内の弊社物件をご紹介するインバウンド事業を行ってきました。

現在、海外拠点は15拠点あり、7ヶ所は前述のインバウンド、残りの8ヶ所はタイ・ベトナム・カンボジア・ミャンマー・フィリピン・インドネシアといった東南アジアでアウトバウンドの事業を行っています。日本から各国へ進出される日系企業のお客様へ、現地の住居やオフィスをご紹介するビジネスです。

そして、今後の弊社の国際事業の柱となる事業として昨年よりスタートさせたのが、サービスアパートメント及びサービスオフィスの開発・運営です。現地のアパートやオフィスを日本クオリティで提供できるようなサービスを提供させていただいています。その第1号となった2015年10月スタートのタイのシラチャーのサービスアパートの他、フィリピンのマニラ、ミャンマーのヤンゴンにもサービスオフィスをオープンしました。

さらにベトナムのハノイ、カンボジアのプノンペンにて現在建設中のサービスアパートが完成予定となっており、今後も積極的にこの事業の展開を図ってまいります。

不動産事業以外にも、海外事業を展開されているそうですね。

ベトナムでのオフショア開発や、パース作成を行うBPO事業と、技能実習生を協力工務店で受け入れる技能実習も行っています。また、フィリピンから介護職員を受け入れており、弊社運営の介護施設あずみ苑にて従事しております。

今年2016年の2月には男子プロゴルフトーナメント「ミャンマーオープン」のタイトルスポンサーとなって大会を開催いたしました。再来年まで3年連続でスポンサーとなることが決定しており、これはASEAN地域での当社国際事業の知名度アップと、ASEAN地域での事業取組に対する強い意思表明という意味もあります。

このように私達の事業では、単なる利益拡大のためだけでなくASEAN地域の人材、スポーツ、文化活動支援につながるような取り組みも積極的に行ってゆきたいと考えております。

どのような事をポイントに進出を決定されましたか?

現在、今後の事業の伸び代を考えて、日本からのアウトバウンド需要、さらには日本以外の諸外国からの資本流入も見込めるという点でASEAN地域をターゲットにしています。これらの国は、まだまだ生活環境面でもビジネス面でも成熟していない部分があるため、タフな動き方が求められる場面もあります。

しかし、実際に現地へ足を運ぶと、ここ数年の急速な発展には目を見張るものがあり、ASEANが持っている計り知れない可能性を体感しております。この市場の成長とともに弊社の国際事業も大きく成長していきたいという希望をもって各国への進出を決断いたしました。

決定までは、各国の情報や日系企業の進出状況などの数値調査はもちろん行いますが、現地に行って、直接視察をしなければ分からないことが多々あります。数ヶ月いかなかっただけでも、変化と成長を感じるため、新しい状況を常にキャッチアップする必要性を感じます。一般論やメディアの情報だけで判断せず、自分たちの目で見て、肌で感じたことを基に、将来的な見通しを立てながら、総合的な判断をすることが大切だと思います。

また、アウトバウンド事業に乗り出した大きな理由の1つは、私達の国内事業のお客様である日系企業の海外進出が増えてきており、このお客様の海外進出に対して応えていきたいという部分が大きかったです。参入数が多い事も大事ですが、一方でカンボジア・ミャンマーなどはこれから伸びるという部分で早めに参入していこうという観点もありました。

ある程度そういった視点で国の候補を決めたら、必ず視察にいきます。そこで、不動産市況の他、日本食やサービス業がどういう風に展開しているかを見ています。サービス業は、景気にも敏感に反応していますし、その国の人達がどのように日本のサービスを利用しているのかの状況がわかりますから。あとは、ホテルのクオリティや交通手段も見ています。アジアであれば1泊3日という短い時間だったとしてもやはり自分の目で見にいきます。

進出準備で苦労されたことは?進出支援サービスはどのようにご利用されましたか?

決めたことが日本のようにうまくいかない事は多々あります。不動産業は特にライセンスが通りにくいことも有り、国によって外資規制が異なりますので、国によってスキームを変えながら事業運営していくことが求められます。

例えば、事前の調査ではライセンスがとれると言われていたにも関わらず、いざ申請をするとライセンスがおりずに再申請を行わなければならなくなり、開設が遅れたというケースもありました。

インドネシアのジャカルタは、今は規制が緩みましたが政策としても厳しくなったタイミングだったため、1年程ライセンスの取得に時間がかかりました。逆にカンボジアは、申請が通りやすいなど、自由経済の国はそういった参入のしやすさで選ぶこともあります。

とにかく、海外事業は「スピード」を一番重視しているので、自分たちだけで行うには時間がかかりそうな部分や専門性の高いことは、外部のサポート企業に委託しています。例えばリーガル的な事などはお願いしました。一から全部、丸投げをしてお願いするというよりも、社内で決めたことを専門的に受けていただく形で委託しながら、進めていく事が多いですね。

海外事業での人材活用については、どのようにされていますか?

各国共通で大切なことは、現地人材の採用、育成です。当社の海外拠点では、日本人の拠点責任者を中心に、現地ナショナルスタッフをマネジメントしております。

我々のメインのお客様は日本人の方々であるため、ナショナルスタッフが日本人とうまくコミュニケーションをとれることが重要な課題となります。このニーズを満たす人材を教育するためには、一定レベルの日本語スキルのほかに、日本流のおもてなしの精神を持っていただくように、現地の文化を理解しながら、長いスパンで、向き合っていく必要があります。バンコクなどは上昇志向も高いですし、離職率も高いですからフォローが大切です。

現地スタッフは日本で研修をするようにしています。日本語を勉強していた人でも、日本に来たことがないという人も多いのが事実です。1週間程滞在してもらって、研修を受けたり、サービス業を見てまわったりしてもらっています。他の日系企業も進出している中で、差別化していかなければいけませんし、習慣や環境も違うので一度来てもらって体感してもらうのが一番だと思っています。

急激に海外拠点を増やしたため、現在、日本から出向している人材は、基本的には社内公募で行いました。国内の仕事の延長線上で考えていたので、自社の事業を経験している社内の者の方が事業展開しやすいのではないかと思ったのです。世代も男女も関係なく、本人のやる気や海外耐性などをみています。マニラやプノンペンは女性で1人は2年目の若手スタッフを抜擢した実績もあります。

今後の展開について教えてください。

ASEAN地域を中心に、現地物件の紹介だけでなく、サービスオフィス・サービスアパートの開発・運営に注力しながら事業規模の拡大を図って参ります。現在弊社の海外拠点は15拠点ですが、今後はまず20拠点を目標に積極的に展開したいと考えております。

また、海外不動産投資事業やASEANの人材を活用した新事業など、幅広く可能性を模索しながら、型にはまらないレオパレス21の国際事業展開を推し進めて参ります。事業ですから、継続していかなければなりませんので、スピードを重視しつつ、戦略的に進出していきたいと思っています。

次に決まっている部分でいうと、シンガポールを準備中で、こちらはアジア全体のハブとして考えています。1つの国というよりASEANを1つのくくりの中でみています。今後は、他東南アジアもさらに展開して足元を固めていく予定ですが、アジアに限っていませんので、その他の国も不動産業に関わらず、投資事業としてチャンスがあれば見ていきたいと思っています。

海外ビジネスを行う上での秘訣やアドバイスをお願いします。

弊社もこれから海外展開を加速させていく段階ではありますが、前述もしているように、海外ビジネスでは日本以上にスピード感が要求されると実感しています。意思決定の遅れはビジネスチャンスを逃してしまうことにつながります。

また、変化への対応も重要と考えます。海外では事前にイメージしていた通りに事業が進まないことも多々あります。それらの状況に柔軟性のある対応ができるかどうかが重要です。「スピード」と「柔軟性」。これらが海外展開において重要な事項だと思います。出てからはやってみないとわかりませんから。現地に行けば新しい事も発見できますし、全部が成功できるとは限りません。時間がかかるものなので、先に考えているよりもまずやったほうがいいと思っています。

そして、海外に出てみると日本では気付かなかった、「不便・不満・不安」が見えてきて、新しいサービスニーズに気づくことがあります。それが新規事業の検討に活かされる場面が多くあります。また、日本とのシナジーを大切する一方で、現地の日本人だけを対象にした狭いマーケット目線ではなく、現地に進出してくる、欧米や中華圏マーケットも狙えるような多角的なビジネス視点を持つことが重要だと考えています。日本人マーケットだけ考えると、事業のスピードも幅も広がらないですし、条件が限られてしまうので、クオリティを落とさず、多国籍に対応できる考え方が重要です。

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