海外進出事例集

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液圧プレス機械の製造・販売

プレス機械メーカー森鉄工社の海外進出事例

森鉄工株式会社

中小企業国際化支援レポートより引用

2016年4月21日

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中小企業国際化支援レポートより引用

日本流の顧客対応で海外企業の牙城を崩す

プレス機械メーカーの森鉄工(佐賀県鹿島市)は、海外4カ国での販売体制を整備。営業とメンテナンスサービスを行っているが、今のところ資本関係のある法人はひとつもない。海外直接投資はほとんどしていないにもかかわらず、同社は主力のファインブランキングプレス機械で国内外で非常に高いシェアを確保している。なぜ同社は世界のトップクラスに躍進できたのか。

かゆいところに手が届く”戦術

森鉄工は1922年、肥料会社として創業した。その後、農業機械の修理などを手がけ、1950年代には製缶部品の製造を開始。だが、オイルショック後に下請け仕事が激減したため、自社製品を持つプレス機械メーカーへの転換を図って、さらにファインブランキング(FB=冷間鍛造を取り入れた精密打ち抜き加工)プレス機械の製造分野に進出した。

現在の主力であるFBプレス機械を開発製造するようになったのは1982年から。FBプレス加工は剪断面が平滑で3次元形状の複合成形もできるのが特徴で、自動車や精密部品などの加工に適している。
だがFBはもともと欧州で生まれた技術で、かつては欧州メーカーが世界的に圧倒的なシェアを占めており、実績のない後発メーカーの同社が食い込む余地はなかなかなかった。そこで同社が取ったのが“かゆいところに手が届く”戦術だった。
「お客様の要望をできる限り受け入れ、きめ細かく対応しました。カスタマイズにはすべて応えるようにしたので、1台ごとに違う機械をつくるようなもので設計は大変でしたが、メーカーの独りよがりにならないという考え方は今も守り続けています」(森孝一社長)
FBに参入した当初、同社は納入先の工場を毎週訪問して稼働状況を確認したり、実際に機械を使っている現場の声を聞くなどして得た情報を次の製品の開発にフィードバックしたため、同社の製品は使いやすいと評判になっていった。
一方、欧州メーカーは同社と対照的なやり方で顧客の要望はほとんど聞かず、仕様の変更にも応じず、日本語のマニュアルもなかった。高いシェアに安住して“殿様商売”をしていたのだ。森社長自身、顧客から「ヨーロッパの機械は性能はいいが、使いにくくて仕方ない。何とかならないか」と相談されたこともあった。それでいて価格は同社の1.5倍以上ということで、欧州メーカーから同社に乗り換える企業は次第に増えていった。顧客の要望があれば、既設の欧州メーカー製品のオーバーホールでも引き受けた。こうした手法で、同社は少しずつ、着実に欧州メーカーの牙城を崩していった。

多言語対応型タッチパネル

FBプレス機械を初めて輸出したのは1984年。顧客の要望に可能な限り対応していく方針は、輸出製品の場合も変えなかった。事前に綿密な話し合いをして、設計や仕様の変更にも応じ、メンテナンスにも誠実に対応した結果、海外からの引き合いも確実に増えていった。とくに操作盤のタッチパネルの表示を英語や中国語、韓国語など各言語から選べるスタイルにしてからは、輸出量も右肩上がりで伸びていった。当然、海外拠点も必要になってくるが、FBプレス機械は量産品ではなく、現地生産にはなじまない。そこで、森鉄工流のきめ細かな対応のできるエージェントや駐在員による営業とメンテナンス対応を、韓国、タイ、中国、カナダの4カ国で展開している。
韓国資本のMIWコリアは、1984年の初めての輸出時から同社のエージェントを務めている韓国人が2011年に設立。現在もひとりで営業活動を行っているが、2012年からはメンテナンス要員を1名置くようになった。このスタッフも韓国籍のエンジニアで、2011年末まで本社で技術教育などを受けていた。
タイの拠点は、森社長の従兄弟にあたる日本人が2004年、森鉄工の販社として現地法人MIWタイランドを立ち上げ、森社長ら幹部社員が合わせて49%分の出資をしている。森鉄工としての出資をしなかったのは、「何かあったとき、資本関係があると税務上でいろいろ手続きが大変だと考えた」(奥川孝司常務)からだという。現在、社員は4名。社長の従兄弟以外は全員タイ人で、韓国同様に日本で研修を受けたメンテ要員も1名いる。タイの拠点は、インドも含む東南アジア全域が営業範囲だ。

ブラジル企業からも受注

中国には2003年、上海に駐在員事務所を開設。日本で採用した中国人社員1名が出張ベースで営業活動を行っているが、年間計300日前後は中国に出張しているので、実態としては駐在に近い。メンテナンスも日本からの出張で対応している。
「海外4カ国のなかで今、1番伸びているのは中国です。そのため、現地法人をつくることも検討しています。よく知られているように中国は代金回収が難しいのが実情ですが、当社で中国を担当している社員は、ときには強い姿勢で対応するなどして頑張っています」(森社長)
北米市場は、カナダのトロント在住の日本人エージェント1名がやはり1984年頃から、森鉄工の名刺を持って営業活動を行っている。このエージェントとは別に同社に技術協力している人員がもうひとりいて、簡単なメンテナンスであれば対応できる。彼が対応できない場合は、日本からエンジニアが飛ぶこともある。最近も森鉄工の社員2名が約2週間、カナダと米国で納品済み製品のオーバーホールをしてきた。また、日本からリモートメンテナンスを行うこともある。
「インターネット回線を使って納めた機械の回路を見て、PC上で回路を直したりプログラムを変更したりすることもできます」(森社長)
この1~2年は北米市場の需要が沈滞しているため、カナダのエージェントは南米にも足を延ばして、2011年はブラジルの企業からもFBプレス機械を受注した。2012年の2~3月に納品する予定だが、船便だと現地に着くまでには約1カ月かかる。据え付けには日本から技術者が出張するが、それも飛行機で丸1日かかる。納品先がブラジルということで、タッチパネルの言語に新たにポルトガル語を入れる準備もしている。

国が違えばビジネスの仕方も違う

国が違えばビジネスの仕方も違ってくる。たとえば米国では、取引にコストのかかる商社などが介在するのを好まない傾向がある。高い金利を払っているインド企業から日本の銀行やリース会社を紹介してほしいと言われることもある。また、韓国では韓国人スタッフがメンテナンスに行くと支払いを渋るが、日本人が行くとすぐ支払う企業が少なくない。支払い条件や見積もりを出すタイミングなども各国異なる。
「海外では、現地のことをよく知っているその国の人に任せるのがいいと考えています。ただし、製品や技術についての教育は日本でみっちり行うようにしています」(森社長)
機械の据え付けなどの際には日本から社員が現地に行くので、同社の社員の約半数は海外出張の経験がある。森社長もトップセールスのため、年に14~5回は海外に飛ぶ。英語のほかに、独、仏、中、韓、タイの各国語ができる社員もそれぞれいる。
「これからはインドネシアやベトナムなどで需要が増えていきそうです。それに対応してタイにメンテ要員を増やしていきたい。現地法人も含めて、新たな拠点を出すことも検討していくことになるでしょう」(森社長)
同社のFBプレス機械のシェアは現在、国内が7割前後、海外が約4割。直近の2~3年に限れば、競合メーカーの製品は国内でほとんど売れていないため、実質的には100%に近い強さを誇る。
「2011年に販売したFBプレス機械は14台でしたが、そのうち12台は輸出です。国内市場の今後の伸びは期待できないので、海外をさらに開拓していくしかありません。円高で価格競争的にも厳しく、顧客の要望にさらに細かく対応したカスタマイズなどで付加価値を高めていくことがますます重要になるでしょう」(森社長)
2009年度以降、同社では国内売り上げより海外売り上げのほうが多くなった。この傾向は今後、さらに加速していくことが予想される。海外への直接投資額は少ないが、同社は紛れもなく国際派企業と言えるだろう。

森孝一社長が語る「海外進出のためのアドバイス」

- 異文化を知る -
たとえばインドではまず責任者ありき。責任者がいなければ打ち合わせも始めない。そういう国ごとの文化や商習慣を知るためにも現地の人を活用したほうがよいが、すぐ辞めるという面もあるので任せきりは避けたい。
- トップが出て行く -
セールスでも大事な場面では私が行く。トップが行けばその場で決断できる。国内を空けても大丈夫な態勢を整えたうえで、半年くらい出ずっぱりになる覚悟が必要。

企業名森鉄工株式会社
業種・業態液圧プレス機械の製造・販売
進出国
事業内容

ファインブランキングプレス
冷間鍛造プレス
熱間鍛造プレスなど各種液圧プレス機械の製造販売

法人設立年1992年
海外進出時期2003年
日本法人所在地佐賀県鹿島市大字井手2078
資本金5,000万円
電話番号0954-63-3141
URLhttp://www.moriiron.com/japan/index.html
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