海外進出企業インタビュー

掲載日:2016年1月19日

海外進出企業

資材調達から製造・販売のワンストップをグローバル展開する、ウッドワンの『第三の創業』のチャレンジとは?

プロフィール

株式会社ウッドワン

戦略統括本部 インドネシア現地法人開設準備室長

宮内智之

何らかの指標でトップになっている企業に就職してトップセールスになりたい」という思いから、階段の木材建築部材でトップシェアである住建産業(現ウッドワン)に新卒として入社し、現在16年目。営業として国内2拠点を経験した後、ニュージーランド子会社の日本における木材販売事業の立ち上げを担当。その後、財務部門を経験し、収支計画策定や資金繰りなども担当。2014年に立ちあがった戦略統括本部事業開発室にて、インドネシアへの進出推進を担当し、インドネシア現地法人開発準備室へ。合弁会社の事業の責任者として、2016年よりインドネシアへ赴任予定。

『第三の創業』として海外市場への販路拡大にチャレンジ

御社の海外進出の概略を教えて頂けますでしょうか?

1990年に『第二の創業』として海外事業に参入し、原材料となるニュージーランドでの山林事業の開始や、中国・フィリピンなどに現地法人を設立し、海外での生産拠点も設置してきました。木質建材メーカーには珍しく、自社で木材資材の植林から最終製品の販売までが行える一貫生産体制をもっていることが弊社の特徴となります。

2014年の春に『第三の創業』に向けて新成長戦略を推進するため、戦略統括本部が立ちあげられました。その中でも事業開発室は、海外をはじめとする新規事業を開発することを目的とする組織で、私に与えられたミッションは、これまで資材の輸入と生産拠点として考えていた海外を「販売市場」として捉え、海外で新しい販路を構築することでした。様々な国を検討した中で、候補にあがったのがインドネシアです。私は、インドネシア進出の調査段階から参画し、2014年4月頃から本格的にインドネシアへの視察に訪れ始めました。

どのようにインドネシアへの進出を決定されていったのでしょうか?

インドネシアを選んだ理由はいくつかあります。まず世界4位と言われる2億5千万人の人口数と、人口ボーナスが2030年まで続くと言われていること。それに、非常に親日国でもあります。そして、中間所得層の伸びが倍増することがわかっている状況であり、新築住宅も間違いなく増えていくことが見込めるという点です。住宅事情でいうと、既に建築ラッシュは始まっており、供給先が追いついていないという印象で、不動産デベロッパーだけではなく、建築関連メーカーが足りないため、海外から参入してくる企業も増えてきていました。

このような市場についてのニーズ調査と、どのような形態で進出するべきかを検討するため、まずは現地に視察にいきました。ほぼ毎月、1~2週間滞在というかたちで出張しました。パートナーとして今後一緒に事業を行う可能性があるということでローカルの同業種(床・ドア製造など)のメーカー、流通業者や、将来顧客になるであろうデベロッパー、設計事務所、ショールーム、施工現場など数多く視察しました。

市場が何をもとめているかのマーケティングや、販売するにあたっての進出形態は、輸出販売がいいのか、独自資本でいくのか、現地企業との合弁会社がいいのかと様々な選択肢を検討しましたが、最終的には合弁での進出を選びました。日本からの輸出にはタイムラグが発生して顧客の詳細なニーズに応えることが難しいことや、独自資本での進出は時間も資金も多くかかってしまうため、既に現地でビジネスをしている企業と合弁会社を設立する方が販路獲得や時間の短縮などメリットが大きいと判断したためです。

今回、合弁先として組むことになった現地企業を選定した理由は、現地で既に販路を持っていたことはもちろん、品質第一主義というウッドワンと同じ考えを持っていたことや、実際に工場を訪問した中でも品質管理がよかったことが大きな要因になりました。2015年の年初に提携先として選定してから半年程かかりました。最初の訪問から計算すると契約までトータルで1年半かかりました。

合弁先は、インドネシアでは比較的大きな企業で、高級家具の製造販売をメイン事業としています。この家具製造のノウハウを活かして、内装建材製品を扱うようになってからまだ3年程なので、ウッドワンの製造ノウハウを投入してシナジー効果が発揮できると思いました。また、欧米への販売をメインにしており、今後はインドネシア国内の販売をより強化したいということで、お互い協力関係が築けると思いました。

また、日本での家具輸入なども今後可能になると思いますし、我々の持つニュージーランドの木材の提供なども考えられるなど、親会社同士の企業価値も高めていけると思っています。

製造技術や販売効率もあげていきたいと先方も考えていましたし、日本のジャパーニーズブランドについて良いイメージをもっていただいていました。議論もしっかり進めていき、お互い誠意をもって話し合いができた事で1年半という時間はかかりましたが無事、合弁契約締結に至りました。2016年2月をめどに合弁会社設立の準備を進めています。

視察や契約交渉にあたり、進出サポート企業の支援は受けられましたか?

初期の段階では現地のJETROも訪問しましたし、進出支援全般や法務・会計・人材採用は、個別に民間の進出企業にあたり、合弁の契約業務についてはインドネシア進出をサポートしている弁護士事務所に依頼をしました。視察の際のアポイントは現地のコンサルタントに依頼していました。通訳含めてサポートしてくれたのはインドネシア人のコンサルタントです。インドネシア進出の戦略を立案するにあたって依頼していた弊社のコンサルタントにこの方を紹介してもらいました。

また「Digima~出島~」は、情報収集としてセミナーを検索している中で毎月海外ビジネスセミナーが開催されていることを知り、何度も参加させてもらいました。セミナーで講師をされていた海外人材採用サポート企業の方と、セミナー後、改めて東京や現地でお会いして、インドネシア人採用について依頼することになりました。

人材採用については、どのようにお考えですか?

現在、弊社で現地の製造マネージャー候補となるインドネシア人の採用活動を行っています。ウッドワン側の担当として合弁会社の中で活躍してもらえるよう、弊社の思想やものづくりについて理解を深めてもらい、現地でリーダーシップを発揮して頂ける人材になって欲しいと思っています。私や日本人の製造担当者が駐在予定ですので、一緒に仕事をしながら伝えていきたいと考えています。また、他部署の日本人担当者も出張ベースとなりますが、現地法人立ちあげに協力して貰う予定ですし、合弁先の社員の方もたくさんいるので協議しながら進めていく予定です。採用を予定しているのは、日本語・インドネシア語ができる人で製造のマネージャーとして仕事を進めていける人と、通訳兼秘書になるような人です。インドネシアでは、インドネシア人しか総務・人事マネージャーになれないので、今は合弁先の総務人事部門に依頼をしています。

現地の人材採用は、その事業の最重要課題と思っています。人材採用は、すぐに良い方が必ず見つかるという事でもありませんし、早く頼みすぎても仕事がスタートできる状態にないなど、タイミングの調整と見極めが非常に難しいです。

進出を進める中でどのような点が大変でしたか?

合弁先との契約内容の交渉はやはり大変でした。また、既に生産拠点を海外に持ってはいましたが、販路のグローバル展開については、当社も初めての挑戦でしたし、一大チャレンジでしたので、社内でも慎重に進めていきました。
国内で上場しているので、色々な体制が整っているかのように思えますが、海外に出てしまえば中小企業と変わらない、市場シェアや経験もない状態ですので、ベンチャーを起こすことと変わりません。
ただ、今回は合弁とはいえ、全く新しい企業を立ち上げるというよりも、人員・土地・建物なども使わせてもらえ、現地でいろいろなものが揃っているのでM&Aに近いイメージです。駐在事務所も出さずにスピーディーに進出できたので、一から独自で進めていたら、さらにコストや時間がかかったかもしれません。

合弁先との交渉も大変でしたが、そういった中で事業を展開していくには、社内での調整も必要でした。私達の組織は、戦略統括本部長が社長、副本部長が取締役という経営トップ直下の体制だったため、私自身も海外プロジェクトの責任者という立ち位置で動いたので判断を直接仰げた事は大きかったと思います。

私は、英語が得意で選ばれたというわけでも、海外での駐在経験があるわけでもありませんでした。ただ、こうした進出段階の環境では、事業を作るための計画からモニタリング、それを実行できるかが大事だと感じています。これは、海外ビジネスセミナーの講師の方もおっしゃっていたことです。そして、一番大事なのは、プロジェクトを担当していく人の「想い」がないと成功しないと思いました。前述したようにベンチャーを立ち上げる経営者の気持ちで業務をしていなければならないと思います。

また、社内のコミュニケーションも大事にして、他部署の協力も仰ぐ必要があります。そういう意味でも、営業から新事業の立ちあげ、財務部門まで広く社内で経験させてもらった事は、自分の強みだと思いますし、製造を勉強するためにラインに入って一緒に仕事をしたり、各部署との会食なども積極的におこなってコミュニケーションを深めていきました。

これから進出を検討される企業に何かアドバイスをいただけないでしょうか。

視察は大事です。とにかく責任者として判断する人が直接現地にいくことだと思います。調査や情報収集だけ任せるという人を現地に向かわせるより、実際に自分の目で見て感じたことが大きいので、足を運んで、会社やライバル、パートナーと会って感じることを大事にしていく方がいいと思います。何度も行く度に、「想像と違ったな」、「これならいける」という判断材料が増えてきたため、どういう販売方法や価格にすべきかなど随時計画を修正することができました。

コンサルタントの方に話を聞いただけ、机の上で情報を整理するだけではリアルな進出検討はできなかったと思います。自分で感じるからこそ、思いが強まり、自分の言葉で語れますし、定量面・定説面の両方が備わる事が社内外の人を説得するには必要だと思います。

また、こうした海外へのチャレンジの経験は、社員の成長の大きな要因になると感じます。戦略統括本部には、未来のウッドワンを背負っていく30代~40代が多く集められました。こうした成長するチャンスを会社に与えてもらえたことに感謝しています。

御社の今後の展開について教えて下さい。

インドネシア国内では、私達が日本企業ということを活かして、日系の企業をさらに開拓できると思いますし、木材資源を提供する形での生産もしていきたいと思っています。合弁先の販路として持っているヨーロッパ・アメリカにも一緒に商品を広げ、さらなる販路拡大を目指したいです。

また、既存のアジアの海外生産拠点での販路展開なども考えられると思っています。インドネシアをロールモデルにしたいと思いますが、その国によって違う展開になると思うので、それはまたF/S(フィージビリティスタディ)しながら進めていくことになるでしょう。インドネシアでのビジネスを弊社の『第三の創業』の一翼を担える事業に育てていきたいと思っています。

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