海外進出事例集

SALASUSU_00 (1)

製造業

「ものづくりを通したひとづくり」で途上国の人材育成に取り組む 【特定非営利活動法人 SALASUSU(サラスースー)】

特定非営利活動法人 SALASUSU(サラスースー)

今回は、“ものづくり”を通じて途上国の人材育成に取り組む、『特定非営利活動法人 SALASUSU(サラスースー)』の成功事例をご紹介します。

経済的・家庭的に困難な背景をもつ女性を現地で採用し、安定的な雇用環境と自立した生活を送るためのライフスキル教育を提供するという独自の目標を掲げ、カンボジア発のライフスタイルブランド「SALASUSU」を展開する同NGOの共同代表を務める青木健太さんにお話をうかがいました。

2019年1月15日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

今回は、“ものづくり”を通じて途上国の人材育成に取り組む、『特定非営利活動法人 SALASUSU(サラスースー)』の成功事例をご紹介します。

経済的・家庭的に困難な背景をもつ女性を現地で採用し、安定的な雇用環境と自立した生活を送るためのライフスキル教育を提供するという独自の目標を掲げ、カンボジア発のライフスタイルブランド「SALASUSU」を展開する同NGOの共同代表を務める青木健太さんにお話をうかがいました。

カンボジア発のライフスタイルブランド『SALASUSU(サラスースー)』とは?

“ものづくり”を通じて途上国の人材育成に取り組む特定非営利活動法人「SALASUSU(サラスースー)」として、カンボジア発のライフスタイルブランド『SALASUSU(サラスースー)』を展開しています。

SALASUSU(サラスースー)とは、「ものづくりを通したひとづくり」を活動コンセプトに、人々のエンパワーメントに取り組むブランドです。

ちなみに「SALA=学校」「SUSU=がんばって」を意味するカンボジア語。ものづくりを通じて、頑張ることを学ぶ、学校のような場所であってほしいという願いを込めて名付けました。

カンボジアのシェムリアップから35kmほど離れたクチャ村に独自の工房を持ち、経済的・家庭的に困難な背景がある女性を工房の作り手として雇用。安定的な雇用環境と自立した生活を送れるようライフスキル教育を提供するなど、独自の制度で現地の女性たちを支援・サポートしています。

”ものづくり”と”ひとづくり”の2つの事業

SALASUSUには、社会的・経済的に恵まれない人々がぶつかる障害の多くが、ライフスキル教育を受けられていないことに原因があるという考えがあります。よって、日々の業務時間の1時間を作り手のライフスキルトレーニングに充てることで、”ものづくり”と”ひとづくり”の2本柱からなる事業を実施しています。

<ライフスキル教育>
「ひとづくり=ライフスキル教育」としては、スタッフへの職業訓練のトレーニング内容の開発・研究を継続して行うことで、自分たちの工房の枠を越えて、カンボジア政府や学校、さらには企業やNGOを対象としたライフスキル教育を提供しています。

<SALASUSU(ブランド)>
「ものづくり=ブランド展開」としては、カンボジア発のライフスタイルブランド「SALASUSU(サラスースー)」を展開。現地の女性たちによるハンドメイド製法によるバッグを中心としたアイテムを製造・販売しています。

作り手には自らの仕事に対する誇りや自信を培ってもらいたいという願いと、買い手にはモノの裏側には人がいることを感じもらいたいという思いから、商品の一つひとつに作りの名前スタンプをつけて販売(※裁断、縫製、品質チェックを担当した作り手が押しています)。

また「作り手に会いに行く旅をしよう」という提案もしており、お買い上げくださったお客様には、工場訪問のフリーパスチケットを配布。ブランドローンチ以来、1,000枚以上のチケットを配布しており、これまでに10人以上のお客様が実際にカンボジアの工房まで来てくださいました。

ちなみに、カンボジアの工房自体は、購入者以外でも誰でも見学が可能になっており、現在までに約1万2千人以上の方々が訪問してくださっています。最近だと、個人の旅行客だけでなく、高校の修学旅行や企業の研修旅行などのニーズも高まっています。

途上国における「女性の自立」という課題

SALASUSUの前身となるのは、認定NPO法人「かものはしプロジェクト」となります。貧困家庭の幼い子どもたちが強制的に売られてしまう問題を解決するため、私を含めた3人の日本人大学生たちによって、2002年より始まりました。

以下が「かものはしプロジェクト」を含む「SALASUSU」の略歴となります。

2002年: 前身である「かものはしプロジェクト」を創業
2003年: カンボジアでの事業を立案
2004年: カンボジアにて事業スタート
2008年: カンボジア・シェムリアップの農村に工房を立ち上げる。貧困家庭出身の農村女性を雇用し、いぐさを使った雑貨商品のものづくりを開始
2011年: シェムリアップ市内に初の直営店をオープン。観光客向けにお土産ものとして販売を開始
2012年: シェムリアップの観光中心地であるオールドマーケットに第二号店オープン
2013年: 工房に託児所をオープン。子どもを育てながら働ける環境を整備
2016年: デザインを一新した新ブランドを立ち上げる。シェムリアップの繁華街パブストリート近くに旗艦店をオープン 
2016年: 工房の卒業制度を開始。5つ星ホテルやレストランに就職する卒業生を輩出
2018年: かものはしプロジェクトから独立新法人SALASUSUとして事業継続

創業当時、問題が一番深刻だったカンボジアから事業を開始しました。カンボジア社会の経済発展や法整備などの社会の変化に伴って、カンボジアでの被害者の数は、この活動を開始した16年で大きく減少しました。

そこで、次に取り組むべき課題として見えてきたのが「女性の自立」でした。

カンボジアの都市部は経済発展しているものの、農村の課題はまだまだ色濃く残っています。都市部で雇用を見つけられたとしても、雇用を継続する力(=ライフスキル)がなくて、貧困の連鎖を断ち切れない女性たちが数多くいます。そのため、私たちはものづくりを通じて、作り手の女性たちにライフスキルを学んでもらい、社会に出たあとも自立した女性に成長してもらうように、「ものづくり」をともなったサポートをスタートしたのです。

そもそもハプニングは起きるものとして柔軟に対応

ここカンボジアで10年かけて、自分たちがやりたいことを少しずつ形にしてきました。カンボジアに限らず、海外に進出すること自体、最初は「えいやー」な勢いが必要だと思います(立派な事業戦略を作ったとしてもうまくいかないことだらけなので…)。

大切なことは、その後に現地のニーズや一緒に働いているメンバーたちと共に、どのようにして自分たちが目指しているものを形にしていくかだと実感しています。

そもそも弊団体は、2008年から工房運営を継続しておこなっていますが、カンボジアでものづくりのクオリティを高めていくことは、色んな壁にぶち当たることを意味します。特に初期の頃は、日本人が求めるクオリティの意味を理解してもらえず、曲がった縫製で作られたり、いぐさの染色作業にしても色味のブレを気にしてもらえなかったり…。

それらを諦めずに、粘り強く何度もフィードバックをすること、ダメなものには妥協せずに作り直すように徹底すること。そのような言動を積み重ねることで、作り手である現地女性たちの責任感やプロフェッショナルであることの意識付けを高めていきました。

…とはいえ、10年経った今でもクオリティについては課題が残っています。新商品が出る度に最初のロットはほぼNGになることもまだあります。ですが、けっして基準を甘くすることなく高い目標を掲げ続けることで、クオリティを底上げできるよう、日々葛藤しています

またカンボジアというお国柄、安定的に資材を調達することは困難です。商品開発においては、資材の調達の制約が大きいがために、どうしても“できる範囲”のみで物事を考えてしまいがちです。しかし…お客さまがパッとみて「可愛い…!」と思ってもらう商品作りこそが大事であって、できる範囲で商品開発をすることは正しい選択肢ではありません…。 

そこを肝に銘じて、常に目線を高く置くことを意識しています。また、調達した資材が納期通りに届かないこともざらに起きます。したがって、一つひとつハプニングに動揺せず、そもそもハプニングは起きるものとして、柔軟にものづくりに取り組む姿勢が大事だと考えています。

カンボジアで10年以上に渡って、事業を継続・発展させてきた自信と経験

海外展開成功のためのアドバイス…と問われましても、私自身、成功…したとはまだ思っておりません(苦笑)。まだ道半ばなので、これからも頑張って参ります(笑)

ただ、カンボジアという国で10年以上に渡って、事業を継続・発展させてきた自信はありますので、引き続きカンボジアという国に根ざして、しっかりと事業を実施していきたいと思っています。

そもそも日本の常識はカンボジアでは常識ではなく、あらゆる面で想定外のことは起こるもの。強いて言うなら、その部分を受け止めたうえで、地道に長く続けることが成功の秘訣でしょうか…。

また、カンボジアは国の経済成長が著しい国なので、社会の変化のスピードも日本と比にならないほど速いと感じています。特に私たちはNPOとして活動をしているので、その変化する社会の中で、NPOとして求められる役割を常に見直していくことが大事だと考えています。

ワクワクして生きていくための環境と技術が誰にでも提供される社会を

今後の事業展開としましては、「ものづくり」では、カンボジアで生まれたSALASUSUというブランドを世界に広めていきたいです。働く人のサステイナビリティを10年間続けてきた、私たちだからこそ発信できる価値があるのではと考えています。

ここ最近、香港のファッションサミットに参加したり、台湾でもポップアップを実施したりすることで、サステイナビリティに関する世界の関心の高まりを感じています。まずはカンボジアで作った商品を、より多くの日本の皆さまに手にとってもらえるように日本への販売を高めていきたいです。

また「ひとづくり」では、弊団体が独自に開発したライフスキルトレーニングのメソッドをカンボジア全土に、またいずれは世界中に、「水道哲学(※松下幸之助による「水道水のように多くの人々に低価格かつ良質なものを拡げていく」という考え)」のように広めていきたいです。

ライフスキル教育がどんな人にも分け隔てなく提供される世の中にすること。どんな家庭に生まれても、例え小学校を中退しなくてはいけなかったとしても、クオリティの高いライフスキル教育を安価で受けることができる、まさに今日の水道のようにそれが提供される世の中にしていきたいですね。

自分の人生をワクワクして前向きに生きていくための環境と技術が誰にでも提供される。…そんな社会を作ることこそが、私たちSALASUSUの役割だと思っています。

企業名特定非営利活動法人 SALASUSU(サラスースー)
業種・業態製造業
進出国
事業内容

・エシカルファッションブランドSALASUSUの生産・販売(日本・カンボジア)
・ライフスキル教育を雇用を通じて提供する学校運営(カンボジア)
・企業、官公庁へのライフスキル研修の提供(カンボジア)

法人設立年2018年4月
海外進出時期2004年
日本法人所在地東京都渋谷区広尾5-23-5 長谷部第一ビル402号室
海外所在地

6 National Road, Kchas Village, SoutNikom District, Siem Reap, Cambodia

代表者共同代表:青木健太
資本金なし ※NPO法人の為
電話番号+855 93 633 866
URLhttps://salasusu.com/
依頼したサポート内容

この事例が役に立つ!と思った方はシェア

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
海外進出無料相談サービス