海外進出事例集

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デジタル機器の製造販売

海外アウトソーシング戦略で成長を実現したトライウイン社のアジア進出事例

株式会社トライウイン

携帯型カーナビでは国内トップクラスのシェアを持つトライウイン(神奈川県横浜市)。同社は自前の工場を持たず、製造はすべてアウトソーシング。開発も韓国、中国、台湾などの技術者に委託している。これまで製品は日本国内だけで販売してきたが、2011年11月に発表した新製品は海外でも販売する予定だ。
※中小企業国際化支援レポートより引用

2016年4月21日

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携帯型カーナビでは国内トップクラスのシェアを持つトライウイン(神奈川県横浜市)。同社は自前の工場を持たず、製造はすべてアウトソーシング。開発も韓国、中国、台湾などの技術者に委託している。これまで製品は日本国内だけで販売してきたが、2011年11月に発表した新製品は海外でも販売する予定だ。
※中小企業国際化支援レポートより引用

開発を担うのは韓国や台湾の技術者

2005年の設立から6年。トライウインはほぼ倍々で売り上げを伸ばしてきた。2011年10月期の売り上げは約50億円。このペースでいけば数年のうちには100億円の大台突破も見えてきそうだ。

現在の主力製品はカーナビゲーションシステム。車から取り外して使える携帯型では、国内トップクラスのシェアを誇る。同社の「if」ブランドのカーナビは最も安いものだと1万9800円、高いものでも3万円を切っており、大手メーカーの製品に比べて圧倒的に安い。パナソニックなどと比べるとブランド力ではまだ差があるが、カー用品店やテレビショッピングなどでは相当浸透してきているという。ブランド名の「if」には、「こんなものが“もし”あったらいいな」という意味が込められている。

「設立当初から、大手メーカーに挑戦し続けるという目標を掲げてきました。そのためには、品質、コスト、スピード、サービスの4つがキーになります。当社の製品は、世界初とか日本初とか、必ず何らかの“初”がつきます。“初”がつかないものはつくりません。もちろん品質も大手と同等だと自負しています」

そう語る中城正一社長は、大手電器メーカーでマーケティング戦略部長を務めていたキャリアを持つ。

同社のビジネススタイルは極めてシンプルだ。同社で行うのは、製品の企画のみ。製造はすべて外部にアウトソーシングする。これだけならファブレス・メーカーとしては珍しい例ではないが、同社がユニークなのは製造だけでなく開発もアウトソーシングしている点にある。しかも、アウトソーシング先はその大半が海外だ。

「ブランド力や資本力で劣る当社が大手メーカーに挑戦し続けるには、固定費の経営から脱して変動費の経営に徹しなければなりません」(中城社長)

成功報酬型でリスク軽減

アウトソーシングを活用して工場などの資産を持たなければ、価格競争力が高まるのは当然だ。アウトソーシング先が海外なのもコスト面を考えれば納得できる。だが、品質やスピードの面ではどうなのか、かえってハンデになるのではないか。中城社長の回答はこうだ。

 「ちょっと手ごわい開発を短期間で上げてほしいと日本の技術者に頼むと、まず、最初にできない理由を挙げてきます。一方、韓国や台湾の技術者たちはとにかくやってみようとする。スピードという面では日本より上ですね」

 同社の正社員は30人。それに対して、委託先企業を通して契約している開発技術者は100人以上いる。その大半が韓国や台湾の技術者だ。なかには博士号を持つ技術者もいる。同社は新製品を企画すると、彼らに開発を打診し、手を挙げた技術者に開発を発注。開発費は3回に分けて支払い、報酬は開発が成功してから払う仕組みだ。開発が失敗したときのリスクをこの仕組みで軽減している。

 韓国や台湾は技術者の流動化が激しい。契約期間中は当然、守秘義務があるが、契約終了後に同社の開発に関わる情報が流出する可能性は否定できない。人の口に戸は立てられないが、その点についても中城社長は、「デジタル技術の進化は早い。開発が終わったあとの製品情報が流出しても、どうということはありません」と、気にしない。

企画から発売まで平均8カ月

製造は12の工場にアウトソーシングしている。このうち日本国内の工場は2社だけで、あとは韓国、台湾、中国などの海外工場だ。

 委託工場を選ぶ基準は極めて厳格だ。工場や設備を実際に見に行くのはもちろんのこと、工場経営者とじっくり話し合い、ものづくりに対する考え方を十分に聞く。そのうえで工程の監査をし、結果を点数化して契約するかどうかを決める。同社には大手メーカーで監査を専門に行っていたスペシャリストがいて、資材を置く位置まで管理する非常に細かい工程管理マニュアルも作成している。

 「当社の副社長は30年以上も海外の仕事をしていたので、当初は彼の人脈を活用して海外のパートナー企業を探しました。海外でも国内でも、すべての仕事には人が介在します。結局一番大切なのは、相手と信頼関係が構築できるかどうか。信頼関係が構築できれば、海外工場でも品質や納期にはまったく問題ありません」

 同社の場合、新製品を企画してから発売するまでの期間は平均約8カ月。開発と製造を海外にアウトソーシングしながらのこのスピードは、まさに、驚異的である。

 もちろん、過去には苦い経験もした。

 「中国の工場経営者は皆、『スピードはどこよりも速い』『何でもできる』と言います。でも『何でもできる』は『何もできない』と理解したほうがいい」

 現在は、中国では日系もしくは日本人が経営している工場に限定して契約するようにしている。パートナー企業をコントロールするため、韓国と台湾にはオフィスも置いている。

 一方、製造をアウトソーシングすると製造技術やノウハウが社内に蓄積できないのではないかという疑問も生じる。そこで同社は、新製品を発注する際には製造現場で経験を積んだ社員を派遣し、パートナー企業の技術者たちと一緒に製造ラインの立ち上げから実際の作業まで一緒に行う。そうすれば、新製品の製造技術などをしっかり修得することができる。修得した技術やノウハウは、社内に持ち帰って他の社員と情報を共有化する。このプロセスは新製品を製造するたびに行っているので、技術やノウハウはきちんと社内に蓄積されていく。

 外部に丸投げする形のアウトソーシングでは、現場を知らない社員が企画することとなり、作りづらかったり、製造コストがかかり過ぎるなどの恐れがある。同社はそれを避けるために、こうした方法をとっている。しかも工程監査は定期的に行っているので、最新の製造技術や設備についての知識も常にキャッチアップできるという。

初めて海外での製品販売も

製造コストについては近年、中国などでの人件費の上昇という問題も発生している。そのため同社は製造のアウトソーシング先を東南アジアにも拡大し始めている。2011年は初めて地上デジタルテレビ用のチューナーをタイとマレーシアの工場で製造した。

 同社は海外へのアウトソーシングという形で国際化を進めているが、これまで製品はすべて日本国内で販売してきた。カーナビの場合、精確な最新の地図ソフトが必要になるため、海外での販売は難しいという事情があった。だが、2011年11月に発表した新製品は、海外でも販売する計画だ。

 「ブルーア」と名づけられたこの新商品は、オゾンとイオンを発生する携帯型のクロスプラズマイオン発生機。従来のような部屋置き型ではなく、ネックレスのように首から下げて使う新しいスタイル。中城社長によれば、イオンとオゾンの働きによる除菌、消臭効果があり、ウイルスや雑菌などが鼻や口から入るのを防ぐという。

 「データ上ではマスクの100倍以上の効果があります。これを首に下げておけば花粉症も発症しにくく、うがいの必要もありません。学校で使えば、インフルエンザで学級閉鎖するようなことも少なくなるかもしれません」

 こうした商品はすでに大手メーカーからも発売されているが、「ブルーア」はそれよりずっと軽く、価格も安く、電池の寿命も長いというのが売りだ。もちろん、これも開発と製造は海外で行っている。

 数年後には株式公開も計画している同社。それが実現できれば、大手メーカーとの間にある資本力やブランド力の差をつめることもできるだろう。「ブルーア」の海外販売で、同社の国際化は新たな段階に入ることになる。現在のビジネススタイルでどこまで業容を拡大できるのか。新しいタイプの国際派企業として、今後もその動向に注目が集まっている。

中城正一社長が語る「海外進出のためのアドバイス」

- 時間をかけて信頼関係を構築
海外パートナー企業の経営者とは、人生観なども含めて徹底的にディスカッションする。そうすることで信頼関係が構築できる。準備に時間を惜しんではいけない。

自社のポジションを検証
海外市場に進出するのなら、現地の人たちが自社の実績やポジションどう評価しているか、さまざまな角度から客観的に検証する。その結果が芳しくなければ、進出を断念することも考えたほうがよい。

企業名株式会社トライウイン
業種・業態デジタル機器の製造販売
進出国
事業内容

カーナビゲーションなどデジタル機器の開発・製造販売

法人設立年2005年
海外進出時期2005年
日本法人所在地神奈川県横浜市港北区新横浜2-5-19
資本金1億7825万円
電話番号045-477-1207
URLhttp://www.trywin.co.jp/
依頼したサポート内容

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