海外進出企業インタビュー

掲載日:2018年8月24日

海外進出企業

現地人材のストレスを解消するのが重要! ゲーム会社・オルトプラスの「ベトナム事業」への挑戦

プロフィール

株式会社オルトプラス ( Alt Plus Inc. )

執行役員 事業推進本部長

三ヶ尻 卓

まずは御社について教えてください。

我々はもともとソーシャルゲームの企画・開発会社としてスタートしました。設立は2010年、今年で9期目を迎えます。GREEやDeNAといったプラットフォームの力を借りながら急成長し、3年目で上場、4年目には東証一部に鞍替えを果たしました。その当時は、ブラウザゲーム全盛でエンジニアの獲得が非常に難しくなってきた時代です。そこで、自社サービスの開発拠点を設けるため、2013年にベトナムに進出しました。

現在も基幹事業はゲームとなっており、ゲーム運営の多様化に対応するために、ベトナムでの開発だけでなく、地方の会社などと資本業務提携などを行ったり、高知に子会社を作ったりと、オフショア・ニアショアに力を入れております。

また、今後はゲームという軸も伸ばしていきますが、その他の事業も拡大させていき、経営の多角化を目指しています。その中心となるのがベトナムの事業で、他社の開発を請け負う「オフショア開発事業」はもちろん、自社サービスを展開する新規事業を立ち上げていく予定です。

進出先にベトナムを選んだ理由は何でしょうか?

ベトナム以外では、大連、台北、東南アジアのいくつかの国を検討しましたが、最終的にベトナムに落ち着きました。その理由は3つあります。

1つ目は、コストメリット。海外に進出する際、日本人が現地の方に仕事を依頼していくことを考えると、ある程度コストメリットのある国でないと、コミュニケーションで発生するコストロスを吸収できないと考えていました。当時のベトナムが、日本と比べると人月あたりに対して5分の1から6分の1のコストだったので、それであれば吸収できると判断しました。

2つ目は、治安と親日国であること。我々は、自分たちのゲームを作るために進出したので、当然現地に社員を置きます。ゲームの世界は、女性社員も多いですし、社員が夜間勤務することなども考えると治安は非常に重要です。その点、ベトナムは東南アジアでも圧倒的に治安が良かった。そして、ベトナムの人たちが非常に親日であることも、現地で暮らす社員にとって大きな助けになると考えました。

現在、第一外国語を日本語にしようというテスト的な試みがあるほどの親日ぶりですが、当時からベトナムという国は非常に親日である印象が大きかったです。ベトナムは、対日貿易を最優先で増やす、ということを戦略として持っている国です。もちろん日本という国が大事な商売相手になっている国はたくさんありますけれども、日本を一番に据えている国はなかなかありませんからね。

3つ目が、現地人材です。まず、日本語の学習人口が多い。今、世界では中国、韓国、台湾に続き、4番目に多いと言われています。そして、数学に強いことも重要でした。ベトナムは数学オリンピックでアジア上位の成績を残しています。エンジニアリングはもちろん、ゲームの場合は、開発だけでなく運営も絡んできますと、係数の計算やシミュレーションが重要になってくるということもあって、数学の能力が求められます。その点でもベトナム人材は最適だと思いました。

なるほど。それでは、進出の際に最も苦労したことは何でしょうか?

そうですね、進出に関しては一年ほどの準備期間がありました。まず、ベトナムのオフショア開発会社に依頼し、自社のラボを設けました。そこで、自社サービスの開発や運営を行っていき、最終的には自社で拠点を開設した形になります。

その中でも最も苦労したのは、コミュニケーションの部分でした。その経験こそ今後のベトナム事業の構想の根幹を作っていくものとなったのですが、そちらは後述することとして、まずは苦労した点についてご説明します。

例えば、日本において開発にミスが生じると、「謝罪が求められる」ことがあります。いわゆる「まずは、ごめんなさいが聞きたい」ということであり、仕事を円滑にするためのコミュニケーションの一環です。日本人は潔いものに関しては首までは取らない文化があり、謝ったらその場が収まるという想定で動くことがままあります。

一方で、ベトナムだけでなく、海外の人材にとっては、謝罪をするというのは全面降伏を意味することとなります。なので、ミスしても簡単には謝りません。これは、単純な認識の齟齬の問題です。ベトナムの方も、ミスをして悪いと思っているわけです。それを認めることができないだけです。しかし、それが続くと日本人担当者には段々とストレスがかかってくるでしょう。そして、結果的にストレスフルな状態になってしまうんです。そうなると、仕事はうまくいきません。当初はこの点で開発がうまくいかず、非常に苦労しましたね。

それは、どのように解決していったのですか?

そうしたストレスをなるべく緩和できるようなオペレーション、つまり仕事の進め方を組んであげながら、お互いの認識の齟齬を埋め合わせてあげられるようにしました。ベトナムのスタッフが悪いわけでも、日本人担当者のスキルがないわけでもないので、認識の違いを埋めてあげるだけでいいんです。そういった仕組みを作ることで、開発は上手くいくようになりました。

ここで重要なのは、日本側がそういった仕組みづくりに協力的になることですね。私達は、それを現地パートナーの助けを借りながら実現していきました。

それでは、御社の今後のベトナム事業について教えてください。

我々は、上記のような経験を通し、事業のコアコンピタンス/ビジョンを「アジアとジャパンのゲートウェイになる」と定めました。ゲートウェイとは、ITで用いる機器で、「異なるものと異なるものを上手くジョイントする」ものです。

オフショア開発において、仕事の進め方、考えの解釈の違いがある二国間を「オペレーション」というものを作っていくことでジョイントできました。私は、日本企業が海外に飛び出していく時に一番ボトルネックになるのは、日本人そのものだと思っています。なぜならば、島国の習慣で育って、海外の人材との交流も少なく、かつ喋れる言語はほとんど日本語だからです。先ほど説明した認識の齟齬が生まれて当然です。日本企業がもっともっと世界で活躍するために、そうした異文化をジョイントする存在に我々がなろうと考えているんです。

しかし、そうした存在になるためには、サービスとして有益な仕組みを提供していかなければいけません。そうでなければ、誰も我々をジョイントとして使ってくれませんから。そうした意味で、まず東南アジア圏でユーザープールを構築しようとしています。

ユーザープールがあれば、将来的に日本企業がベトナムなどで自社事業を展開していくときに、集客の段階から手伝うことができます。もちろん、我々は開発ができますから、サービスを開発し、そのまま集客までやっていくとなっていくと、それこそワンストップで事業をサポートできる。運営委託を受けることも可能です。

そうなれば、顧客は開発にプラスアルファの投資で、海外の市場を狙うことができるようになります。そういった世界を作っていくことで、日本企業は将来の市場を開拓するための道を見つけることができますし、我々はそこのゲートウェイになることができます。そして、ここが肝心なのですが、私達が抱えるベトナムのエンジニアにも新しい道を示すことができると思うのです。

オフショア開発という業態には単価の上昇という限界がどうしてもあります。それを考えたときに、私達がサービス開発/運営をできるようになっておくことで、新しい道筋をエンジニアに提示することができる。特にこれからベトナムが成長してくると、スタートアップを目指したいエンジニアが出てくるでしょう。そうしたニーズに対しても、我々のユーザープールを活用してもらえる。ベトナムの非常に優秀なエンジニアたちが、オルトプラスと一緒にオルトプラスの社員でありながらスタートアップをし、卒業していくという世界を作っていけば、三方良しだと思っています。

ですので、現状の新規事業はB to Cにおいてユーザープールが作れるような事業をいくつか作ろうとしているのが現状です。

僕がエンジニア出身ではないので、現場で語り合えない。ビジネスモデルとしては優秀なエンジニアが集まってくることが重要だと思っているので、そうした環境づくりに本気で取り組んでいるところはありますね。

楽しみですね。それでは、最後に海外進出を検討している企業に一言お願いします。

ベトナムは2020年に3人に1人が消費力のある中間層になると言われています。そのため、ベトナム国内での飲食業・サービス業は近年特に注目されており、ここ2,3年での進出が先行者利益を取れるチャンスです。この市場に対して興味がある企業様は、是非お気軽に相談してください。ビジネスでご一緒できるような話ができればと考えています。共に新しい世界を創っていきましょう。

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