商習慣 2012年12月17日
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日本企業の弱点とは?――海外進出で成功するために、トップダウンに移行せよ!
「La conduite des Japonais nous a donne une lecon. (日本人の振る舞いは我々に教訓を与えてくれた!)」毎年の夏を過ごす南フランスで、昨年の大震災以降このような言葉をかけられることが多くなりました。不幸にも大震災で被災された日本人の方達の我慢強さと冷静さをたたえてくれたもので、日本人としては嬉しいことです。しかし、ことビジネス・経済関係の話で日本の話題を聞くことは、逆に本当に少なくなりました。かつては、今、問題となっているソニー、パナソニック製品にしても街にあふれ、彼らフランス人にとっても日本企業は身近な存在でした。おのずと、日本人である私に、ソニーのデザインは素晴らしい、パナソニックのここがいい、という話が聞こえてきたものです。
そして、先般のパナソニックなどを筆頭に、かつて日本の経済を支えてきた大手電機メーカーたちが過去最大の赤字を計上したのはご存じのとおりで、非常に衝撃的な数字です。その一方で存在感を増す韓国、台湾あるいは中国の企業。間違いなく多くの業界で、日本企業は危機的な状況にあります。このことは、みなさんもメディアを通して、感じておられるのではないかと思います。
それでは、なぜそのようなことになってしまったのでしょうか。
確かに、いま日本企業は諸外国の企業に比べ、六重苦ともいわれる環境の中で苦しんでいると言われています。円高、高い法人税率、自由貿易協定への対応の遅れ、柔軟性を欠いた労働規制、行き過ぎた環境対策 、電力などエネルギー問題の6つです。
自然災害などを起因としたものもありますが、いずれも日本の国家運営の結果と言えるものばかりです。日本経団連がこれらを問題として指摘した事は正しいと思います。しかし、だからといって企業のトップが「政府が企業の足を引っ張っている」と開き直り、自社の業績の悪さを政府の責任にするのは全くのお門違い。経営者の資格はありません。経営者たるもの、自分で変えられない「与件」は与件として受け入れ、その中でいい結果を生み出していかなければなりません。その上で、将来的にも日本ではダメだと判断するのなら海外に出ていけばいいのです。いずれにせよ、リーダーが、与えられた条件の中で強く引っ張って、結果を出して行かなければならないのです。
外資系企業や新興国企業と、日本企業との違いはズバリここにあります。最近「韓国企業が調子がいいのは判断スピードが早いからで、それはオーナー企業だから」というロジックで話をする人がいますが、それは間違いです。というのは、逆に考えて、日本企業の判断スピードが遅いのは、「オーナー企業でないから」と言い切ることはできないからです。それは、単に経営者が、どういった立場であれ、いつまでも逡巡して判断しないことによるものです。世界にはオーナー企業ではなくとも、判断が早い会社は山ほどあることは言うまでもありません。
日本企業では、よく「ボトムアップ」という言葉を聞きます。「これからはボトムアップ経営の時代、下からの考えを上手く吸い上げて、企業を経営していきたい」というような経営者までいます。これは言語道断。企業という組織のあり方はあくまでもトップダウンでなくてはなりません。リーダーが考え、判断し、実行していく。それが基本です。もちろん、その中で、部下が、自分たちの考えをボトムアップさせようと考えるのはいいことです。ですから、仕事は任すのです。任せられて、仕事をする中で部下は自分の考えを入れていくのです。それが本来あるべきボトムアップと言うものです。経営者は経営をすることが仕事です。従業員はその方針に則って、実行していくというのが仕事です。経営とは判断の積み重ねです。日本で良く言われる「ボトムアップ」とは、経営という仕事を部下に押し付けているに過ぎません。
一方でフォロアーシップというものもあります。言われたことを100%実行する力です。トップダウンとフォロアーシップが両輪となって、企業は前に進んでいくのです。リーダーシップという面から見ると、日本企業の人材が必ずしも世界トップレベルであるとはもはや言えませんが(これに関しては次回以降でご説明します)、フォロアーシップに関してはトップレベルだと思います。大きな違いはリーダーにあると言えます。逆に言えば、リーダーさえ変われば、まだまだ世界と戦っていけるということです。
では実際にどのように考え、決断していけばいいのでしょうか。
まず、日本お得意の前例踏襲主義をやめましょう。日本は一旦組織を作ってしまうと、出来るだけ変えないで後生大事に守っていくというのが得意です。ですから、変わることができません。変化への対応が出来ないという事です。国にしてもそうです。本来は生きていて、その情勢で逐次変わっていかないといけない憲法がこれほど長い期間改正できないというのは異常です。ドイツは東西統合前までに30回以上も改正しています。日本は70年近く経った今になっても、まだ一度も改正していません。憲法解釈で何とか凌いでいるというのもおかしな話です。企業についても同じことが言えるでしょう。少し前のことになりますが、日産を立て直したカルロス・ゴーンが、「日産の危機はもともと財務状況が悪かったからではなく、経営が招いた危機だったのだ」と言っています。それなりの手が打てていなかったという事なのでしょう。どのような組織にも、変わらなければいけない時があるのです。
前例踏襲は、一見効率的に見え、調子のいい時は経営にプラスに働くことがあります。しかし、判断せずにそれを続けていくと、判断できないトップが育ち、あっという間に経営が立ちいかなくなります。
私がトリンプの社長だった時代に百貨店、量販店の既存販売チャネルでの売れ行きが落ちてくる事が明確になってきました。それで、その当時急速に伸び始めていた郊外型ショッピングセンターに出店すべく直営店の展開を始めました。これが良かったから、トリンプは19年連続で増収増益を達成できたのです。
あとは躊躇せず判断を重ねていく環境の中に常に身を置き、その精度を高めていくことです。そうした意味でも日本企業が海外に出ていくということは重要だと思います。なぜでしょうか? それは次回ご説明いたします。
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