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海外ビジネス コラム

市場動向 2022年04月03日

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【専門家インタビュー】タイ進出における今と今後の日本企業の戦い方とは−インテージタイとローランド・ベルガー在籍、2人の専門家インタビュー Vol.2−

森 勝宣(株式会社ニット)

メイド・イン・ジャパンだけではもう売れない

―日本企業がタイに進出する上で気を付けなければいけないことは何ですか?

 

青葉さん:”メイド・イン・ジャパン”が通用しなくなってきている、と思った方が良いと思います。

メイド・イン・ジャパンだったら皆買ってくれるんじゃないか、あるいは魅力が上がるんじゃないかと思われがちですが、

コスメティクス等は韓国製品の方が断然人気があります。日本製で性能が良いから財布の紐が緩むということは、

はっきり言ってないと思っていた方が丁度良いと思います。

勿論、日本産の美味しいフルーツなど、”日本でしか採れない輸入品”としての魅力はあります。

でもその他の物でメイド・イン・ジャパンを振りかざして何かを売ろうとするのは、消費者目線で言うと大きな誤解の一つかなと思います。

 

下村さん:財閥も含めて現地企業とどう付き合うかも重要です。タイの財閥とJV(ジョイントベンチャー)を作ろうとした時に、日本の名だたる大企業でも条件等の交渉で押し負けてしまうケースが多々あります。

本来であればもっと日系ブランドを生かした展開ができ、それに伴って利益をより日系企業側に寄せられるであろうケースも、なかなかうまくいかないことがあります。

 

また、JVにおいて日系企業の本社の意思決定が遅いが故に現地企業をヤキモキさせてしまって話が進まないということもあります。

日系企業と現地企業の付き合い方、交渉、意思決定等のプロトコルがうまく合わないケースが結構多いです。

 

 

日本企業は高齢化問題とデジタル化に勝機あり?

 

―現地で受け入れられやすい傾向にあるビジネスにはどのようなものがありますか?

 

青葉さん:日本の農産品はわかりやすく美味しいという理由で受け入れられやすいです。東日本大震災直後は放射能の影響でタイだけでなく色々な国で日本の食品が心配されました。しかし、今タイにおいてそのような声は一切聞きません。

 

それからタイの農業は、働き手、賃金、コスト、技術等の様々な問題によって近代化があまり進んでいません。例えばですがタイの農業技術改革など、農業周りの生産者を支援して効率を上げる、且つ、CO2を削減してリサイクルを推進するようなビジネスは今後ますます勢いを増していき、政府も含めてウェルカムな状態にあるのではないかと私は推測しています。

 

下村さん:タイの経済が直面している課題を解決するという観点で言うと、二つあります。

まず一つ目に、タイは東南アジアの中でも高齢化が非常に進んでいる国なので、それに関連する商品、サービスが求められる傾向は非常に強くなってきています。

 

日本は世界で最も高齢化が進んでいる国なので先進事例が既にあるという認識は強く、

我々もタイの財閥から日本の高齢化をテーマにしたビジネス、商品、サービスの中でタイに取り入れられるものはないかというご相談を受けます。

例えば健康食品ですとか、日本の強みであるホスピタリティの高さを生かした介護サービスを導入しようとする動きがあります。

二つ目に、タイが長らく直面している課題としていわゆる「中進国の罠」があります。

タイは、新興国ど真ん中ではないけれども先進国入りはなかなか出来ていないという状況で、それを打破しようとタイ政府や財閥は躍起になっています。

 

この課題の原因の一つには、日本企業の責任もあると私は思っています。

元々、自動車業を中心として日本企業が生産拠点をタイに移し、伝統的なやり方で高い生産性を持つプロセスを作り込んできました。

 

ただ現在のトレンドを見たときに、人力の工夫で生産性を高めていく方法のままだとタイは先進国入りは出来ません。

やはりIoT(Internet of Things)やデジタル化という方法を使い、思い切ってロボティクスやオートメーションを生産現場に導入していかないとタイの生産性はこれ以上あがりません。

 

このような課題に関わるサービスやソリューション、デジタルトランスフォーメーションは、

タイ政府を巻き込む上でも非常にポジティブに受け入れられるのではないかと思います。

―青葉さん、下村さん、本日はタイ市場の今について現場のリアルなお話、ありがとうございました。

日本企業がタイにいく魅力とともにその難しさについても、学びが深い時間でした。


 

 

インタビュイー

 

青葉 大助:INTAGE(Thailand)Client service & Insight Senior Manager

1997年から一貫して市場調査に従事する消費者インサイトのスペシャリスト。

15年間の日本市場に対する調査を経て、2012年より海外調査の専門家として、世界各国の消費者を対象に1年の半分を海外で過ごす。専門領域は、耐久消費財全般、FMCG 、OTCなど多岐にわたる。2018年よりバンコク駐在員として赴任。過去にもタイに居住しておりタイは第二の故郷。

 

下村 健一:Roland Berger

一橋大学卒業後、米国系コンサルティングファーム等を経て、現在は欧州最大の戦略系コンサルティングファームであるローランド・ベルガーのアジアジャパンデスク統括(バンコク在住)。ASEAN全域で、消費財、小売・流通、自動車、商社、PEファンド等を中心に、グローバル戦略、ポートフォリオ戦略、M&A、デジタライゼーション、企業再生等、幅広いテーマでの支援に従事している。

インタビュアー

森勝宣:株式会社ニット

新卒でマーケティングリサーチ会社で入社。海外調査案件の受託調査をディレクターとして数多く担当。ニットにジョイン後は、マーケティングと海外進出サポート事業を事業責任者として担当。日本の中小企業の海外進出について、戦略からサポート。

このコラムの著者

森 勝宣

森 勝宣

(株式会社ニット)

コラムニスト詳細

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