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海外ビジネス コラム

営業戦略 2021年10月12日

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【専門家インタビュー】タイ進出における今と今後の日本企業の戦い方とは−インテージタイとローランド・ベルガー在籍、2人の専門家インタビュー Vol.1−

森 勝宣(株式会社ニット)

―まずはお二人の自己紹介と、得意としている地域を教えてください。

 

青葉さん:インテージタイランドに勤務しています。

リサーチ業界で22年ほど、市場調査を専門としている会社です。

消費者のニーズ等をお客様のために調査する仕事をしています。
得意としている国はタイですね。

 

下村さん:ローランド・ベルガーに勤務しています。戦略コンサルティングファームです。

私自身は東南アジアジャパンデスクという立場で、東南アジアに進出する日系企業のサポートを担当しています。なので得意な地域と言うと東南アジア全域になります。

 

―どのような領域を担当されているのですか?

 

消費財、小売・流通、自動車に関してご相談いただくケースが多いです。

 

 

タイのデジタルリテラシーは日本以上。デジタルがどんどん進む

 

―タイでのビジネストレンドは何ですか?

 

青葉さん:デリバリーアプリは皆使っていますね。コロナで外出者が減ったことや在宅勤務者が増えたことで、Grabだったりフードパンダなどの利用者が増えているように思います。
お店から食事を届けてもらうだけでなく、スーパーの買い物代行、その延長でECサイトでのショッピング、特に”巣ごもり商品”の売れ行きが伸びていると思います。

 

―それはコロナ禍で急激に増えたのですか?

青葉さん:ますます増えているという感じですね。今ではセブンイレブンも家に届けてくれます。そういったアプリがトレンドの一つとして挙げられると思います。

下村さん:私も一番は青葉さんが仰ったところだと思います。更にタイではオンラインデリバリーサービスについて、消費者目線だけではなく生産者の流通に関わるところでも変化が起きています。
タイには、メーカー→卸業者→小売業者→消費者という昔ながらの流通経路がしっかりと存在しています。

一方で消費者のデジタルリテラシーは日本よりも高く、コロナ流行前から消費者はオンライン上で商品を調べたり購入したりということをしていて、

タイにはコロナ前から消費者側の要求としてオンラインデリバリーシステムが既にありました。
それがコロナ禍で一気に拡大し、バリューチェーンを川上に遡って生産者側や販売過程においてもデジタル化がどんどん進んでいる状況です。
ビジネスをする上でのスピード感が速く、現場対応力が高い
―お二人ともタイ在住ということですが、ビジネスマンとしてのタイの魅力は何ですか?

 

青葉さん:スピード感ですかね。先程下村さんが仰っていた生産者側のデジタル化というのも、本当に短期間に起こっていると思います。
コロナ禍においてタイは生活面、ビジネス面の両方で本当に素早く、

一瞬にして変わることができましたし、対応できる人達が多いと感じました。たくましいというか現場対応力が高いというか、

そういうダイナミックな市場、国にいることはとてもワクワクするし楽しいことです。

 

―日本とはスピード感が全然違うのですね。

 

青葉さん:そうですね。私は長らく日本へ帰国しておりませんが、

最近帰国した駐在員の方からも、日本に比べてタイのビジネススピードは速いという話をしばしば聞きます。

下村さん:日系企業がタイへ進出する上で一番の魅力は、どのビジネスにおいても日系企業のネットワークやサプライチェーンが充実していることだと思います。
例えば飲食店がタイへ進出しようとしたとき、日系食材の卸業者に日本人窓口があったり、調理器具や什器などを日本人仕様ににカスタマイズできる業者がいたり、

日本人がビジネスをしやすいような環境を整えるプレーヤー、ネットワークが非常に強いです。

なので日系企業の売り先という意味も含めて、非常に進出しやすいのではないかと思います。

 

既存業界のDX化を支援するスタートアップが多く進出

 

 

―コロナ禍に入り日系企業のタイ進出も減退しているのではないかと思いますが、最近ではどのような分野の企業が進出していますか?

 

青葉さん:例えばスシローさんでしょうか。”まだタイに紹介されていない日本のもの”は、

現時点で大量に日系飲食店があるにも関わらず今も尚、タイで非常に高い関心を集めます。オープン直後のスシローの店舗には1~2時間待ちの行列ができる程でした。
また、タイでは日系大企業の進出はある程度進んでいる状態ですが、

次の段階として中小企業の進出も進んでいると思います。肌感覚ではありますが、特に越境ECに参画する中小企業が多いと感じます。

下村さん:タイは日系企業進出の歴史は長いので、伝統的な大企業は既出しており、新たに中小企業が進出するケースは増えています。
それから日本のデジタル系スタートアップが、国内でビジネス展開するだけでなく、早い段階から成果を出す目的で進出先にタイを選ぶケースも結構増えています。

 

―いきなりタイで勝負するのですね。

 

下村さん:そうですね。理由は主に二つあります。

一つ目は日系ネットワークが充実していて進出しやすいということ、二つ目は日本よりタイの方がデジタル化の意識が高く、手ごたえを得やすいことです。

あとはタイの平均賃金がまだまだ日本よりは低いので、固定費などのコストを抑えてビジネスをスタートできるという理由でチャレンジする企業もあります。

 

―どのような領域のデジタルスタートアップが多いですか?

 

下村さん:本当に多岐にわたります。例えば、飲食系デジタルトランスフォーメーションでは伝統的なものにPOSシステムがありますが、

更にそれらとバックヤードを繋いで在庫管理や自動発注システムを構築したりといったものです。

そういった、企業のデジタル化を支えるスタートアップが一例として挙げられます。

 

 

必ずしもフェアな戦いができるとは限らない新興国市場

 

 

―タイでビジネスをする上で一番感じる日本との差異は何ですか?

 

青葉さん:駐在員同士の横の繋がりが強いことです。ビジネスを展開する上でインフラが整っているのは勿論のこと、

人と人との関係においても日本では滅多に起きないような太くしっかりとしたコネクションが自然に生まれます。お客様と自分というドライな関係を越えて、

もっと人として助け合う関係です。それは日系で固まるということではなく、

「タイ人により良いサービス・商品を提供したい」「日本企業として成功させたい」という想いから成り立っています。

タイに進出する上で、日本からの支援も勿論ありますが現地でのギャップに直面することもあります。

そういう時にお互いに助け合えるネットワークがあって、時にはビジネスが生まれることもあります。
タイのこのような人的ネットワークは私の経験上、日本とは明らかに違います。旅行ベースではまず感じることができないですし、構築することもできないですね。

 

―駐在員というマイノリティの立場なので関係がより強固になるということですか?

 

青葉さん:全体を含めるとタイには7~8万人の日本人滞在者がいて、日本と同じサービスを得られる環境もあるので

そこまでマイノリティではないかもしれないです。
タイに限ったことではないかもしれないですが、わざわざ日本ではなくタイでビジネスをしようという人にはそれなりに熱い想いを持った人が多いので

「一緒にビジネスを成功させよう」という共通意識を持つことができて働きやすいですし、ビジネスも生まれやすい。
また、紹介し合えるという強い協力関係があることを実感しています。

下村さん:よくご相談いただくケースとしてタイは政府や財閥の力が日本以上に強いので、それらとどううまく付き合っていくかがとても重要です。特に、新しいことや大きなことをしようとすると単独の企業で進められることはほぼ無く、政府を巻き込み、ローカルの協力を得る必要があります。
そのあたりは日本人がグローバルのなかで非常に苦手とするところだと思います。

タイでは華僑系(中国系)の方が非常に多く、中国企業の進出も今すごく増えています。先程デジタル化が進んでいるという話がありましたが、

実はリードしているのは中国系のプレーヤーだったりします。10年前、20年前であれば日本人企業がリードしていたタイの大きなプロジェクトも、

今では中国が根こそぎ持って行っていたりしています。単純に中国企業の方が支払う金額が大きいこともあるかもしれないですが、

中国企業は政府に対する活動も含め、華僑ネットワークを使ってかなり巧みにロビーイングを行っています。

ですから日本企業が良い技術やプランをを持っていたとしても、うまく立ち回れないといったことに現実問題として直面していて、

我々がそういうケースをサポートしたりすることもあります。
タイに限らず新興国市場では常ではありますが、誤解を恐れずに言うと日本のように必ずしもフェアに戦える訳ではないということです。

 

―単体で日本企業が進出しようとすると非常に難しいのですね。

 

下村さん:そうですね。特に新しいこと、大きいことについてのビジネス領域は中国企業も同じように狙っているので、

どう対抗するかというテーマは最近非常に多いです。

 

【Vol.2 に続く】

 

 

青葉 大助:INTAGE(Thailand)Client service & Insight Senior Manager
1997年から一貫して市場調査に従事する消費者インサイトのスペシャリスト。
15年間の日本市場に対する調査を経て、2012年より海外調査の専門家として、世界各国の消費者を対象に1年の半分を海外で過ごす。専門領域は、耐久消費財全般、FMCG 、OTCなど多岐にわたる。2018年よりバンコク駐在員として赴任。過去にもタイに居住しておりタイは第二の故郷。

下村 健一:Roland Berger
一橋大学卒業後、米国系コンサルティングファーム等を経て、現在は欧州最大の戦略系コンサルティングファームであるローランド・ベルガーのアジアジャパンデスク統括(バンコク在住)。ASEAN全域で、消費財、小売・流通、自動車、商社、PEファンド等を中心に、グローバル戦略、ポートフォリオ戦略、M&A、デジタライゼーション、企業再生等、幅広いテーマでの支援に従事している。

インタビュアー
森勝宣:株式会社ニット
新卒でマーケティングリサーチ会社で入社。海外調査案件の受託調査をディレクターとして数多く担当。ニットにジョイン後は、マーケティングと海外進出サポート事業を事業責任者として担当。日本の中小企業の海外進出について、戦略からサポート。

 

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