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海外ビジネス コラム

商習慣 2014年04月22日

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タイ・サポート実録記4(コムファイ社編)「進出メーカーの各種認可をサポート」

但野 和博(Accounting Porter Co., Ltd.)

第1話(完結)「操業暗礁の危機」

「えっ、ここはそもそも工業用地として認可申請できない場所ですよ、川外さん!」
「え~っ!ビジネスパークだから大丈夫と聞いて入居したのですけど……」
それまでも立ち上げ準備段階で色々なことに直面してきたが、この時の衝撃は今をもってしても川外さんにとって最大級だったに違いない。

コムファイ社は電気関係メーカーで、その事実が判明する3か月前くらい前から事業開始準備などでバンコク入りしていた。
その頃は、既にBOI(タイ国投資委員会の認可する投資事業)の各種申請も終了し、後はBOI上も要件となっている工場認可の手続きに向けてちょうど動き出したばかりのタイミングだった。
BOI認可上の仮認可を当社手配の元、既に受領しているのでその期間中の工場認可取得はMustである。

「もう、時間がありません!とにかく今の場所で何とかしようと時間を費やすよりも、引っ越しを前提に動いたほうが結果的に早いです」

その時は本当にこう言うしかないような状況で、この事に気づいたきっかけは工事認可申請手続きの必要書類で事務所兼工場兼自宅のオーナーのタビアンバーンを取り寄せてもらったことだった。
そもそも地目上工場用地として認可されていなかったのだ!

この他にもよくあるのが、賃貸した場所を税務登記する場合必ず最終的にオーナーの署名が必要となるが、オーナーが近くに住んでいれば対応も柔軟にできるが、たまに途方もなく遠隔地の時がある。最後に気づき、申請に間に合わなくなったとなったら目も当てられない。
また、間に別の賃借人が入っていて転貸して借りるケースなどはオーナーとはコミュニケーションにおいても距離ができるので、事前によくよく確認しておいたほうが良い。

更に時を同じくして、川外さんのビザの問題も抱えていたのだ。
当たり前だが、タイでもどこでも外国で滞在するにはビザが必要で、更に現地で就労するとなると通常はNon-B Visaというものが必要になってくる。
タイでは更に労働許可証(WP:ワークパーミット)を取得しなければ現地で働くことはできない。BOI企業の場合は通常別々の機関で発行されるビザとWPをワンストップサービスとして1箇所でまとめて手続きができるが、いずれにせよ両方取得することが必要である。

ビザは日本からタイに入る前に日本の大使館や領事館で事前に取得して入国し、その時に1~3か月の期間で発給されるものをタイにて更に1年程度延長手続きをするのが一般的だ。
川外さんも例外にもれず入国時に既に有効なビザを取得しているが、この頃はビザの期日も切れるので延長手続きをするタイミングでもあったのだ。

「ビザの手続きも会社設立と今回の工場候補物件の紹介をしてもらった例のバオジャイコンサル社に持ち掛けたものですが、分かっているのかいないのか反応があまりないんですよね」
「いや、この時点で何も言ってこないというのはかなりまずいです。更新とはいえ通常は期限の2週間くらい前までには申請していないと受け付けてもらえず、出国の上取り直しになりかねないですよ!」
この時点で残り3週間もない。
こちらとしても気が気でなく、ビザやWPの案件は期限が決まっているし、完遂して初めて成果として成り立つので尚更だ。
「とにかく、ビザと新工場への移転、すぐに動かないといけないので決断をお願いします!」

バオジャイコンサル社についてはよくよく聞いてみると、本業は居住用賃貸物件仲介とのこと。さすがにBOI申請は依頼しなかったが、会社設立や工場物件、赴任者の賃貸物件紹介など含め身の回りのタイ生活のご案内など一式を依頼したという。

会社設立などは事前に決めたことを決めたとおりにするのであれば、ある意味誰でもできる。工場物件も探して紹介することは誰でもできる。ただやはり、できる=サービス提供とはならないだろう。

会社ひとつ作るのにも色々な背景やドラマがあったりするし、生まれた後も生き物の如く、時には主人(株主)に噛みついたり、構う人もなく自暴自棄になったり、何度も脱皮したりなどもするものである。

「場所ですが、ここはいかがですか?」
工場用地のリサーチはさすがに当社でも初めてだったが、ビジネス経験のあるタイ人スタッフを駆使して、とある場所の工場オーナーと話をつけて進められそうだ。

「分かりました。今度本社の社長が来るのでその時に見てもらって判断してもらいます」
工場引越により会社としては時間も費用も追加でかかるものの、川外さんは正直ほっとしていた。というのも、住まいが職住一体のビジネスパークの戸建で一人の上、その周辺は日本人社会とは無縁の世界。そのうえ頼りにするほど不安な立ち振る舞いが目につく日本人コンサル会社の対応。

「いや~、夜中に天井を這いつくばるネズミの音で目が覚めるんですよ」や、
「自宅からビジネスパークの外まで既に距離があるので自転車でタイ飯屋台街にご飯食べに行くんですよ」などローカル度の高い生活の日々。
そんな日々にこの頃の川外さんはタイ赴任当初の立ちあげ時の心労もありナーバスになっていたようだった。

そんな逆風の環境の中、新しい工場も本社社長にも即断していただいた上で契約に進み、すぐさま工場認可申請の手続きに入り、ビザ更新の対応も何とか間に合い、途中で紆余曲折を得ながらもなんとかミッションを終了することができた。
その後すぐにBOI最終認可状発給申請のほうもこれまたぎりぎりではあったものの、最終的には間に合ったのだった。

現在、コムファイ社は立ち上げに思ったより時間を取られたものの、タイのみならずラオス市場も視野に新たな展開に入っている。

川外さんは今でも当時を述懐し、時々言う。
「あの当時の自分にとっての救いの言葉は、引っ越ししましょう!です」

(コムファイ社編 終わり)

※クライアント様の匿名性を保つために社名・人名等をはじめ一部事実とは異なり表現を変えている部分があります。また同様の理由にて事実から離れすぎない程度に一部脚色している部分もあります。

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但野 和博

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