商習慣 2014年10月29日
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【ベトナムの真実】ベトナムで考える日本企業の交渉力⑤
日本企業のベトナムでの交渉では、泥縄式で後手後手にまわってしまうパターンや、日本や自社の“当たり前”を交渉の場に持ち込むパターンが目につきます。この二つに共通するのは、ベトナムや新興国への不可思議な上から目線です。希望的観測やベストシナリオをたずさえて交渉の場に臨んだり、「話せばわかるはず」「こちらを尊重してくれる筈」「こういう風に考えているはず」という前提で議論したりしてしまうのです。
上記以外で目につくのは、交渉するという“業務”を真面目に遂行しているが、本当の意味で相手と“交渉”はしていないように思えるパターンです。
本社から指示された“条件”を押し通すことを“交渉”だと思い込んだり、条件を押し通すための駆け引きに没頭してしまい、『双方の利害を調整して、より良い合意・共感を導き出す』ことから段々と遊離してしまうのです。
“本社から指示された条件を押し通すという業務”を真面目に遂行してしまう結果、時間ばかりがかかって双方が納得できる合意には到達しなかったり、たとえ合意に到達しても合意後の関係性が悪化しまうことがあります。最終的には、「条件を押し通すこと」と「上司や本社に対する自分の面子」が一体化してしまい、引くに引けぬ状況に陥るケースも見受けられます。
特に大企業では、社内の調整プロセスが複雑で、社内外の多くの利害関係者の意見や立場が絡み合っていることも多く、やっと調整できた“ガラス細工のように繊細な条件”を、どうにかして守ろうとする気持ちになりがちです。人間の心理としては良く理解できるのですが、交渉の場の交渉力に対しては悪影響を与えることは明白でしょう。
一方で、社内外の調整が十分でない中で交渉を開始してしまうと、現地の交渉担当者は、交渉相手と闘っているのか、それとも本社と闘っているのか、自分でもわからないようになってしまいます。OKY(お前が、来て、やってみろ)という想いを持ちながら、エネルギーの80%を本社との調整に振り向けないとならない、現地責任者のしんどさは並大抵ではないはずです。
特に、「やっと社内外の調整をして一定の条件を固めたので、○○までに交渉をまとめろ」というような指示が来た場合には、さらに大変です。時間を味方につけることが交渉力の大きな要素なので、みすみす交渉力を相手に与えてしまうようなものだからです。本社から指示された交渉期限ギリギリに相手から提示された案を、不本意ながら飲まざるを得なくなることもあります。「早く(期限までに)合意したい」というプレッシャーを持ちながらの、異国での交渉は本当に厳しくつらいものになりがちです。
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