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海外ビジネス コラム

商習慣 2017年12月24日

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オーストラリアのクリスマス商戦

永井 政光(NM AUSTRALIA PTY LTD)

日本は例年以上の寒さに見舞われている様ですが、こちら南半球オーストラリアでは、夏真っ盛りを迎えております。寒い年末年始が日本人には常識だと思いますが、オーストラリアでは半そで短パンのサンタクロースが、サーフィンをしながら現れてきます。日本で生活した日々よりもオーストラリアで過ごした年数の方が遥かに長くなってしまいましたが、未だに暑い年末年始には慣れておりません。どうやら成人期での環境よりも、幼少期の経験の方がアイデンティティー形成のコアとなる比重が高い様です。

さて、そんな20年以上経ってもなじめない暑い年末年始ですが、この時期オーストラリアの小売業界にとっては、一年間の売り上げのおよそ7,8割を占める大事なクリスマス商戦に突入します。

シドニー市内の百貨店、量販店、衣類等の様々な小売店が一斉に通常価格から大幅値引きをした大バーゲンを開催致します。街中にはバーゲンを目当ての買い物客でごった返し、所狭しと大小さまざまな手提げ袋を下げた買い物客に遭遇するのは、オーストラリアの風物詩と言っても過言ではありません。
 
オーストラリアの小売業会のトップ組織に位置するARA(オーストラリア小売業会)ではクリスマス期間中にオーストラリア人が食品、アルコール等も含む小売業界に対して、200億豪ドル以上費用を費やすだろうとの予想が発表されましたが、この発表がなされた1週間後に、12月16日から2018年1月15日までの消費者が費やす金額が179億豪ドルと下方修正されました。それでもこのクリスマス商戦が小売業界にとって一年で一番のエキサイティングな時期には代わりはありません。

ARAはリサーチ会社と共同で行った調査によりますと、食料品、衣服、グッツ、ホスピタリティなどの計7項目をピックアップし、2016/2017年との比較対象を行った結果、2017/2018年の同時期では、最大で4%、最小では2%弱の売上高増との強い数字を打ち出しました。同時に各州別の調査の結果、全国平均では2.9%増で、NSW州が前年度対比値が4.2%と最も高い予想数値が出ております。
 
今年のオーストラリアクリスマス商戦は大成功!かに思えるかもしれませんが、実際の所ARAの景気の良い発表を鵜呑みに出来ない背景が存在しております。

オーストラリア統計局では2017年は前年に比べて、3%前後の物価上昇率を示しているとの発表を行っておりますので、実質ゼロベースと考える事も出来ます。また鵜呑みに出来ない大きな理由は、オンラインショッピングの存在です。現在ではアマゾンなどの大手オンラインショップ企業の他にも、大小様々なサイトが存在しております。ただ一部の特殊な商材を除けば、ほとんどの商材がアマゾン等の大手サイトで購入が可能なのが現実です。

再三私も述べておりますが、オーストラリアは日本だけではなく、世界の先進国と比べて突出した高い物価になっております。海外からの舶来品は、孤立した大陸のオーストラリアまで郵送するので、当然郵送代や関税がかさみます。国内で生産された商品は、最低賃金が他国に比べて高い水準値で設定されているので、自ずとそのクオリティーに見合わない高額な代物になってしまっております。オンラインショップやアマゾン等の外圧の存在がなければ従来通り、国内の小売店に消費者がお金を落とすビジネスモデルで問題ありませんでしたが、安くて良い物が手に入るのであれば、そちらに消費者が動くのは世の常。大手オンラインショップに消費者の多くが流れ込み、オーストラリア国内の小売業者の売り上げが激減する状況になってしまいました。ましてやオーストラリアは世界の共通語ともいえる英語が母国語なので、消費者は何不自由なく世界各国のオンラインショップにアクセスをし、商品の購入手続きを行う事が可能です。
 
これを憂いたARAでは、個人であったとしても国外のオンラインショップから商品を購入した場合には、一定の関税を設けるべきだ!と声高に叫びました。問題は商品を手に入れるまでの時間や、送料を考えたとしても、オーストラリア国内よりも安くて良い商品が出て入る事で、その努力を怠っていて関税を掛けろと騒ぐのは、少々お門違いだと感じました。 ただARAは全豪で加入者も多く、有権者の反応に敏感なのはどの国の政治家も同じで、何らかの対策が練られるのではと考えられてましたが、その政策の一手が打たれる前に、オンラインショップの最大手アマゾンがオーストラリアサイトを立ち上げ、それまでのアマゾンアメリカからオーストラリアの消費者が購入の流れを断ち切り、オーストラリア国内で購入が可能と迅速な対応を見せました。

オーストラリアの小売業界はアマゾンに対して大きな脅威を持ち、国内大手の小売りチェーン店ウールワースグループは、アマゾンに対して有効的な対抗策を我々で行わないと、アマゾンにオーストラリアの小売業界は決定的な大ダメージを与えられてしまうと、強い警告と決意を表明しました。

ただ既に多国籍に渡り、オンラインビジネスに高いノウハウと、実績を誇るアマゾンに対して、後発組のウールワースがどれだけ対応出来るのか、それ以前にオンラインショップのインフラが脆弱な国内の中小小売企業は生き残れるのか?との強い懸念の声も上がっております。いずれにしましても小売業界にとって、2018年は大きなターニングポイントを迎えそうです。

このコラムの著者

永井 政光

永井 政光

(NM AUSTRALIA PTY LTD)

<オーストラリアビジネスの専門家

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