法律・制度 2018年01月23日
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オーストラリアの労働組合について
最近日本のニュースでは、働き方に関する問題を頻繁に目にします。パワハラによる先進的苦痛を理由にした自殺や、過労死などがあり、問題解決を図ろうと政府主導で労働基準法を遵守、労働環境を見直す動きがありますが、実際に日本で働いている人達の意見を聞きますと「有給休暇があるのに、周りに遠慮してしまい休暇が取れない」「結局年次有給休暇を消化しないまま終わってしまった」等々、お役所仕事と言いますか、「笛吹けど踊らず」状態な様です。
日本には必要以上に周りの目を気にしたり、仕事がなくても上司が離席するまでは帰宅出来ないなどの独特の文化がありますので、働き方を変えるのには時間が掛かると言えるでしょう。
オーストラリアにもアワードと呼ばれる労働基準法が、日本と同様に定められております。その権利の行使と言う意味では、日本と大きく異なります。会社の規模や(従業員数など)、細かな条件など若干異なる場合もありますが、大まかな所では、1年間勤務すると4週間の有給休暇が取得出来、その他にも病欠は10日間認められております。有給休暇の年次繰り越しも認められておりますが、大抵の人は年内に消化します。有給が消化されていない場合には、退職時にそれ相応の対価を支払う義務がある為に、有給休暇を消化していない従業員に対して、社内の人事担当者から消化をするように催促されます。
有給休暇の申請は非常に簡単で、人事に日時、期間を申請すればほとんど自動的に受理されます。日本のように事細かく休暇申請の理由を明記したり、他の人が同時期に休暇を申請しているからなどの配慮は必要ありません。
余談ですがオーストラリア人は有給休暇の他にも、権利として認められている病欠を、上手く利用して、認められている10日間を最大限に利用する人も多くいます。病気でも会社に向かう日本人と、ちょっと体調が悪ければ欠勤するオーストラリア人。ここにも文化の違いを大きく感じる所です。
強い権限を持つオーストラリアの労働組合
オーストラリアは日本と異なる文化を持つとは言え、ここまで従業員の権利が守られている背景には、強い労働組合の存在があります。
彼らは力や協力をなくしては選挙に勝てないほどの強大な力を持っております。また企業に対しても、従業員から労働条件や環境についてクレームが届けば、勤務先に乗り込み、条件等の改善要求を強く迫ったりもします。私も一度その現場に居合わせた時がありましたが、労働組合の女性はかなり剛腕で、経営陣の言い分をことごとく論破し、最終的には完全に押し切っていました。
彼らは合意を得るまでは何度でも足しげく通い、粘り強く交渉を行います。その間業務が滞ったり、交渉のストレスは膨大な物になる場合もありますので、その負担を考えれば、アワードを遵守する方がよほどマシ!と思わせるインパクトがありました。
ただそんな弱者の味方である労働組合も、先日度を越した権利の行使が問題となる出来事がありました。電車はどこの国でも住民の大きな移動手段であることには変わりはありません。その大きな移動手段が今年1月8日、9日に大幅な遅延があり、プラットフォームには足止めさせられた乗客が詰め込まれる事態になりました。
シドニー・トレインズの発表は当初、「落雷が3度あり、強風による影響だった」と自然災害を強調し、自分達に非がない様に述べましたが、のちの発表では、病欠による電車運転手の不足、運転手の休暇、そもそも運転手の数が足りていないなどの問題があった事を認めました。長期休暇や病欠などを見越して運営するのが経営者の常。しかもシティ機能の大動脈とも言える鉄道網を破綻させることは、あってはならい事。遅延が当たり前で、万事致し方がないオーストラリアでも事態を重く受け止め、運輸大臣が異例の改善声明を発表しました。
これらは偶発的なトラブルが重なったのではなく、実際は給与のベースをアップを6%要求した組合に対し、政府の回答は2.25%のベースアップで、それを不服に思った組合が権利の最大限に行使し、ゲリラ的な攻撃で政府に対して自分達の要求を突き通そうとする行動だったとまことしやかにささやかれています。事実この混乱が起きる前に組合側は、超過休暇の承認を求めるリクエストと、認められない場合には18時間のストライキに入る可能性がある事を示唆していた事が確認されています。
いずれにしても自分達の権利を守るためにある程度会社側との話し合いは必要だと思いますが、相手の足元を見て過度な要求を求めるのは、お互いに取ってあまり幸運な未来をもたらすとは思えません。政府は48時間以内に新たなタイムテーブルの設定や対策をシドニー・トレインズに求めましたが、解決どころか2週間を過ぎた今でもまだ解決の糸口が見つかっておらず、今月29日に労働組合側はストライキに入るとの発表もなされており、まだまだいつ電車が来るのかと不安に悩まされながらの利用が続きそうです。利用者に向けて代替案としてバスなどを増便し対策を練っていますが、それでも不十分だと言えます。
雇用側、雇用される側どちらか一方にパワーバランスの針が大きく振れるのではなく、イーブンに近い状態がより良い関係を築けると言えるでしょう。
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