時事 2013年04月25日
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【日本のTPP参加 緊急特集】日本の参加を意識する韓国の本音とは?
日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加に向けた日米事前協議が4月12日に事前合意に達しました。これにより、他の参加国は米国に同調する可能性が高いため、米議会での90日間の通告期間を経て7月中旬に日本の交渉参加が決まると思われます。
本稿では、日本のTPP参加に対する韓国の反応やTPPに対する韓国政府の姿勢等について私見を述べたいと思います。
TPPは参加国間の自由貿易(関税ゼロ)を達成させることだけでなく、経済制度の整合性も計り経済連携を深めることを目的としています。したがって、その性格は、関税撤廃や通商上の障壁の除去を目的としたFTA(自由貿易協定)というよりもEPA(経済連携協定)に近いものと捉えることができます。ただし、EPAの柱はFTAであり、市場開放度の度合いも主に関税障壁の低さが重要な指標となることから、以下では特にFTAとEPAを区分せず、便宜上「FTA」
という用語を利用します。
韓国はTPPに参加する実利は少ないが、日本の参加に敏感に反応
まず、TPPに対する韓国の姿勢から述べて行きたいと思います。2013年2月まで政権を担当した李明博前大統領は、貿易立国である韓国は市場の開放こそ将来生き残る道であるという明確なビジョンのもと、様々な地域とFTA交渉を開始し妥結に至っています。現在、発効中のFTAは、米国、EU、インド、ASEANなど、中国・日本以外の主要市場とは既に関税障壁が無くなる方向で動いています。また、現在交渉中の主な国家として、中国、日本、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、ベトナムなどがあります。
このように、国家戦略として積極的にFTA交渉を進めていたことから、TPPに参加する実利が少ないとして、李前大統領はTPPの参加に関心を示しませんでした。実際に、TPP参加国(交渉参加も含む)11ヶ国ほぼ全てと韓国は二国間FTAを既に妥結もしくは交渉中の状況にあります。
これに対して、朴クネ大統領のTPPに対する方針は現時点では必ずしも明確ではありませんが、交渉参加もあり得るという柔軟な姿勢を見せています。これは、日本がTPPに参加することで、韓国の世界経済におけるプレゼンスが低下することを懸念している現れだと考えられます。ウォン安と積極的なFTA戦略とで世界の市場での韓国製品の存在感を高めて来たものの、アベノミクスによる円安、日本のTPP参加表明によって、日本が再度世界市場で韓国製品を圧倒するかもしれないことに敏感になっているように感じられます。
とはいえ、既に米国とのFTAが発効している韓国にとってはTPP参加の実利は日本と比べると限定的だと考えられます。そのため、当面は様子見という状態が続くものと思われますが、仮に、日本がTPPに参加する一方で、韓国が不参加とした場合の韓国経済に対するデメリットは何でしょうか?
不参加の際のデメリットは主に二つ?
この点に対する詳細な分析は目にしたことがありません(見つけられなかっただけかもしれません)が、主に二点なのだろうと考えられます。
第一に、資源調達コストが日本と比べて不利になること。TPPの参加国家には、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド等の資源が豊富な国家が含まれています。特に韓国は日本と産業構造が似ていることから必要となる資源も重複する上に、資源のほぼ100%を輸入に頼っているという状況も似ていますので、資源の調達において相対的に不利な条件に置かれることは歓迎されるものではありません。しかし、前述のように韓国はこれらの国家と既に二国間FTAの交渉を開始していることから、やはりTPP参加の実利はあまり無いのではないかと考えられます。
第二に、世界経済に大きな影響を与える交渉・会合の場に参加できないということ。韓国にとって、米国・日本は経済的なつながりも強い国家であるし、また同盟国でもあります。このような国が主導権を握って経済秩序を作っていく交渉の場に参加できないこと自体が、韓国の立場を不安定にさせるのではないかという危機感を感じさせることになると思われます。
朴大統領が、交渉参加に柔軟な姿勢を見せているという報道は、裏を返せばTPP参加に関する明確なビジョンをまだ持ち合わせていないということなのかも知れません。それは、TPPに参加しても実利は少ないものの、米国や日本から蚊帳の外に置かれるのではないかと不安感との間で慎重にメリット・デメリットを見極めているのだと思います。
また、韓国にとって中国はやはり見過ごすことのできない重要な国家で、対中国関係を最重用視する動きも見て取れます。中国はTPPに批判的な立場を取っていることから、この点においても、韓国が積極的にTPP参加を打ち出せない制約になっているのかもしれません。
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