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海外ビジネス コラム

時事 2013年04月27日

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【日本のTPP参加 緊急特集】アメリカ・中国のミャンマー争奪戦の様相を呈するも、ビジネスへの直接の影響は小さい?

池田 尚功(株式会社セールスモンスター)

TPP参加のメリット・デメリットを改めて整理

2013年4月13日(土)の午前、バンコク経由で、ノーベル平和賞受賞者でもあるミャンマーの国民民主連盟(NLD)のアウンサンスーチー党首(Aung San Suu Kyi)が、京都大学東南アジア研究センターの客員研究員として来日して以来、27年ぶりに来日されました。今回は、日本の外務省による招聘で、19日までの滞在。東京・渋谷や京都、東京大学での講演、各関係者との会談をされています。

弊社も、アウンサンスーチー党首の来日に伴い、現地からNLD関係者の方の来日および滞在をサポートさせて頂きました。
様々な規制や、都合・理由があったことは理解していますが、出迎えたミャンマーの方々への対応も含め、もう少し閉鎖的では無く、臨機応変に、各方面共々対応すべきではと感じました。事前の情報錯綜具合からしても、安全面を考慮した結果やむを得ないのでしょうが。

さて今回は、環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement:以下TPP)をテーマに、日本とミャンマーについてふれてみます。

TPPとは、2005年6月に、シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4か国間で調印され、2006年5月に発行された環太平洋地域による経済連携協定(EPA)で、2013年2月23日、安倍首相は「聖域なき関税撤廃が前提でないことが明確になった」として事実上の、日本のTPP参加を表明。翌月3月15日にはTPP交渉への参加を正式に表明されました。これからの交渉に各関係者の関心も高まっていることと思います。

この、日本のTPP参加により、メリットとしては、
「関税の撤廃により貿易の自由化が進み日本製品の輸出額が増大する」
「整備・貿易障壁の撤廃により、大手製造業企業は企業内貿易が効率化し、利益が増える」
「鎖国状態から脱し、グローバル化の加速により、GDPが10年間で2.7兆円増加見込み」
逆に、デメリットとしては、
「海外の安価な商品が流入することによって、デフレを引き起こす可能性がある」
「関税の撤廃により米国などから安い農作物が流入し、日本の農業に大ダメージを与える」
「食品添加物・遺伝子組み換え食品・残留農薬などの規制緩和により、食の安全が脅かされる」
「医療保険の自由化・混合診療の解禁により、国保制度の圧迫や医療格差が広がる」
などが、挙げられています。

対ミャンマービジネスへの影響は小さい

では、実際に対ミャンマーへの影響を考えてみます。
ミャンマーは、ASEAN(東南アジア諸国連合)に属しており、ASEAN加盟国のTPP交渉への参加は増える可能性があるとも言われています。発効当初からのシンガポール、ブルネイに加え、ベトナム、マレーシアも正式な加盟交渉国に加わり、タイ、フィリピンも興味を示し、交渉参加への動きがあります。参加が消極的だとされていた、インドネシアも、最近になり交渉参加の可能性も示唆しだしているようです。

TPPにおいて、日本としては、知的財産や、市場アクセス等も要重視項目ですが、ミャンマーは農業立国であり、やはり「農業」が一つのキーワードになります。協定第13章にも記載されている、「一時的入国(商用関係者の移動)」や、「労働」も関係してくるでしょう。日本製品のミャンマーへの輸出は、TPPに関係なくニーズが高く、商いも増加傾向にありますので、価格や取引条件の調整や、近隣他国との競合をいかに回避するかの話になる気がします。

ちなみに、ASEAN10カ国の中で、TPPに交渉参加も参加意向の表明もしていないカンボジア・ラオスは、ミャンマーと共に、「後発開発途上国(LDC)に対する特恵関税制度(GSP:Generalized System of Preferences)」が適用されています。
つまり、ミャンマー、カンボジア、ラオス産品の場合は、特別特恵受益国として、貿易の関税も、TPPとは別建てで優遇されているのです。
また、「一時的入国(商用関係者の移動)」については、国家戦略室が公表した資料では、交渉の対象は専門家を含む商用関係者であり、いわゆる単純労働者は議論の対象となっていないとされているようですが、協定には明記されていません。今後、議論の対象となる懸念があると言えるでしょう。

ちなみに、現状では、外国人技能実習制度を活用されている農業従事者および関係者が多数いらっしゃいます。日本の公益財団法人国際研修協力機構(以下JITCO)によると、ミャンマーと日本は、この実習生制度に関して、ミャンマーの労働・雇用・社会保障省 労働局(DOL)と、討議議事録(R/D:Record of Discussions)を協議中で、早ければ今月末には、改訂R/Dの調印を終え、認定送出し機関も案内されるとのことです(未確定)。

数年前から、弊社も、ミャンマー側の送出し機関や人材関連機関とは面識がございますが、実際は入管手続きや、様々な法令、規定、賃金等の状況からしても、日本ではない他国への渡航(労働者として)を希望する者が多いようです。つまり、TPPにより、単純労働者などの規制が緩和されたからと言って、必ずしも日本への入国を志願するわけではなさそうであるとも言えます。
ただし、TPPは、ラチェット(ratchet)規定として、一度自由化・規制緩和された条件は、当該国の不都合・不利益に関わらず取り消すことができないとされているため、十分な検討や事前交渉調整が必須であることには違いありません。

アメリカ・中国がミャンマー争奪戦? 各国の思惑とミャンマーの立場

尚、ミャンマーとしては、TPPだけではなく、2003 年に中国の提唱により始まり、中国が注力している東アジアの広域経済圏構想「東アジア地域包括的経済連携Regional Comprehensive Economic Partnership(RCEP)」にも関係してきます。
我々、日本も加わっており、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの6カ国が、ASEANとの5つのFTAを束ねる連携構想で、2011年11月に、東アジア首脳会議(East Asia Summit:EAS)で提案、2012年11月の東アジア首脳会議(EAS)で、交渉開始の合意に至りました。

極論かも知れませんが、一部では、TPP(アメリカ)と、RCEP(中国)で、対ミャンマーへの連携構想合戦とも称されているくらいです。
確かに、ミャンマーは、2011年3月に現政府が、新政府として発足されましたが、新政府発足から、欧米による経済制裁緩和など、ミャンマーを舞台にした、アメリカと中国による水面下の駆け引きや交渉、また、背景や状況等が、類似しているとも感じます。
日本の面積の約1.8倍を有するミャンマー、ますます目が話せませんし、対ミャンマーとしては、やはり「功徳」の一言につきるかと。

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池田 尚功

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