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海外ビジネス コラム

時事 2013年12月04日

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【特集 世界各国の税制度】ミャンマー進出成功のために知っておきたい「税制改革」

池田 尚功(株式会社セールスモンスター)

税制をテーマに日緬関係を紐解く

早いもので、今年2013年も、残すところ約1ヶ月となりました。
2011年3月に、テインセイン大統領率いる現・新政権が発足して以来、2年と3/4が経過しようとしています。
最近でも、日本関連のミャンマー展開や支援の話題や報道が尽きることがない事からしても、それだけ、我々日本人および日系企業のミャンマーに対する注目度が維持されている証しとも言えるのではないでしょうか。

ただし、前回も少し触れましたが、これだけミャンマーに関する情報や、取り扱う会社・メディアも増えてきているにも関わらず、各種商談において、現地事情や各種規制・取り扱いを誤認識されている場合も、未だに少なくないと感じます。
ミャンマー現地側の規制や取り決め、流儀や商習慣等が、多少理解しづらかったり、不明確な要素が未だに存在していることも起因しているようですが。

さて今回は、「税制」をテーマに、日緬関係事項についてふれてみます。

現在、どのような税制が現地で制定されているのか、また細則が発行および施行されるのかについては、日本政府関係機関も含め、多くの企業やメディアから情報提供されていますので、あえて割愛しますが、民政移管と称されている2011年3月以前からも、各種規制や税制の改定や制定、取り扱いの変更はありました。つまり、今に始まった話ではなく、ミャンマーが各種法令や税制・規制等の整備をミャンマー国民や内政、外交のため、また、ASEANおよび世界各国と同等に扱われることも意識し、常に、取り組んで着手し続けている表れだと思います。もちろん賛否両論はあるかと思いますが。

整備されつつある税制度について

例えば、民政移管前、2011年1月1日から、源泉徴収税(Withholding Tax、PAYG)が、開始されました。これは、ミャンマー側が外国から物品を輸入した場合、輸入者が輸出者にその対価を支払う際に、3.5%が源泉徴収されるという仕組みで、その他、ロイヤリティ・役務・サービス提供も対象とされました。輸出者が、二重課税防止協定(Avoidance of Double Taxation Agreements; ADTA)の締結国でなければ、当時の外為銀行(MFTBやMICB)が、3.5%を輸出者側の法人所得税として留保するとし、輸入者が代わりに納税義務を負うため輸出者には96.5%のみ支払われる仕組みです。当時、実際の運用は始まったばかりでかつ、不明確な点もあり、相当情報が錯綜し、混乱していたことを思い出します。
ただ、実際には当事者間で、その点も考慮し、価格交渉や各対処・対応をしていましたので、実際に我々日本人には、それほど意識されなかったような気もします。
もちろん、当時は、今ほどミャンマーへ渡航される日本人の方も多くなく、また、ミャンマーで事業展開なり、この源泉徴収税が関係するような商談や事業展開をされている日系企業も少なかったからとも言えます。

また、ミャンマー現地での製造展開として、よく活用される「委託加工形態CMP」についても、従来10%であった輸出税の、2011年7月に7%、2011年8月には2%、最終的に2012年4月からは0%という段階的な変移に伴い、CMP(*1)の輸出税も、以前の10%から、2011年8月に2%、2012年4月には0%の措置がとられました。2013年11月現在も、CMP開始後、3年間は0%が適用されたままです。ただし、品目(資源関係が主)によっては、輸出に関する商業税が課税されることもあります。

その他の法人税(所得税 Income Tax, 商業性Commercial Tax)、個人所得税なども、少しずつ改定および整備されつつあります。例えば、化粧品の商業税も、製品や分野毎に日本ほど細分化されていませんが、以前は商業税法で25%だった物が、現在では、10%(分類により20%)となっています。

また、現地の飲食店については、レシートのTaxの欄(CT商業税 / 現地流では、Government Taxとも言います)が、5%だったり、0%であったりと、統一されていないのが現状です。ちなみに、現行の税制では、5%です。これは、利用者から徴収し、適切に納税をしているか否かが関係しています。(「利用者への還元」として、「 0% 」としているオーナもいますが)

中には10%としている飲食店もあります。意図的なのか、若しくは、昔の税率10%のまま設定変更漏れなのかは不明ですが実在します。

税の取り扱いや対処について、現地人のプロに依頼し、委ねる事に

上記からしても、ミャンマーの税制は、今までも、これからも改定されますし、取り扱いの変更も生じ得るということです。日本の消費税のように。
また、日本と同様に、事前に周知徹底され、時間的な猶予が必ずある訳ではなく、「頻繁且つ急に」という表現ですら過言ではないとも感じます。

それと同時に、納税義務者の意識、認識・理解度、遵守も、少なからず影響しています。
以前は、特にローカル企業の場合、会社の決算・納税ですら、最終的には「役所と会計士の交渉にて」という現地の”やり方”も”風習”もありましたから、尚更です。

ちなみに、今年に入り、ローカル・外資問わず「会計や監査を厳格化する」という、政府機関からの内部通達もあるようです。まさに、各種税制および納税システム、法令の確立にむけ、整備真っ只中であると言えます。

最後に、ミャンマーは、今でも、後発開発途上国(LDC: Least Developed country) に認定されており、日本への輸入時に、品目毎に特恵関税制度が適用されますが、その一方、ミャンマーは法人税も、正直近隣他国に比べ決して安い訳でもなく、従業員の賃金も、以前の給与水準では採用すら困難な状況、また、現地の不動産・賃貸物件についても、坪単価や相場は、日本以上であり、価格高騰中である現実を、理解し念頭におくべきです。

その上で、「ミャンマーである必要」、「ミャンマーを選択する理由」、「ミャンマーでなければならない意義」「ミャンマーを活用する納得のいく意味」を見出せないと、有益な継続展開は見込めないのではないでしょうか。

最終的には、税の取り扱いや対処について、現地人のプロに依頼し、委ねる事になりますので、現状では税制が確立されていないことを、プラスの要因として捉えることができる「ゆとり」を、お忘れなく。

あくまで現行の税制や税率、法令は現時点の話であり、この先の見込みや、今後の動向は、常に変化する物として認識し、心情的にも、金銭的にも、いい意味での「ゆとり」を持って事に望むべきだと思います。

既に、事業展開等されている方々や、現地と商談されている方々は、この意味を容易に察して頂けるかと思います。ミャンマーですから。

(*1)「通常の物品貿易とは別に、縫製品などの委託加工形態による輸出入を行う場合がある(原材料を輸入し、ミャンマーで加工し、完成品を原則すべて輸出する、加工者はその委託加工賃を得るという形態)。ミャンマーでは、このビジネス形態を通常CMPと呼ぶ(Cutting, Making and Packingの略)。CMP形態の場合、事前にミャンマー投資委員会(Myanmar Investment Commission)に申請・承認を得た上で、企業登記手続きを行うことで、原材料輸入の免税を得ることができる」

このコラムの著者

池田 尚功

池田 尚功

(株式会社セールスモンスター)

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