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海外ビジネス コラム

時事 2014年01月15日

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【特集2013年総括2014年予測】コストダウンセンターから市場ニーズ獲得へ

福田 完次(株式会社グラブポット)

コストダウンセンターから市場ターゲットへの転換が加速した一年だった

中国との関係性においては、昨年暮れの靖国参拝以来、また大分落ち着きがなくなってきている今日この頃です。一昨年の尖閣国有化当初から指摘させて頂いている通り、尖閣の対応については仲裁が入る状況にならなければ双方とも引けませんので、当該エリアへの侵入も含め、尖閣をめぐる状況は10年単位で続くと指摘させて頂きました。併せて、どこかのタイミングでビジネスはビジネスとして進めて行こうという方向に必ずなるはずだということも書いておりましたが、昨年はまさにそういう一年ではなかったかと思います。

中国ビジネスを全体的に捉えれば、昨年はコストダウンセンターから市場ターゲットへの転換が加速した一年であったと考えます。中国内の人件費上昇や為替の変動により、もはや安い人件費を基礎とした世界の工場というビジネスモデルは中国では通用しなくなり、製造拠点としてはベトナムなどをターゲットに、実際のシフトやシフト準備が加速した昨年でした。もちろん、この流れは以前から明確であった訳ですが、実際の動きが加速したという意味では顕著な一年であったと考えます。

他方、中国市場をターゲットとする進出については、こういう政治背景もありながら、随分活性化したという印象があります。昨年は飲食業や販売業、サービス業などを中心に、これまで中国に出ておられなかった所の進出が数多く見られた年でした。ドラッグストアや携帯販売会社、ラーメン店やうどんのチェーン店、衣料品販売店など、数多くの市場ターゲットの日系企業のチャレンジが進んでいます。

人件費の高騰も価格に転嫁できれば良い訳ですし、日本側から見た場合には為替の変動が利益率を高めてもくれます。賃金が上がっていることから個人の購買力も上がっていますので、日系企業にもおおいにチャンスがあるという事だと思います。また、売上げベースで日本から見た場合は、単価も上がり為替換算でも上がるということですから、中国事業のウエイトは自動的に大きくなります(かつては大量に売っても大きな売上げになりにくかった訳ですが、既に上海などの物価は日本と遜色ありませんので、今は日本で売っているのと同じような売上げ効果が期待できます)。

また、市場ターゲットでの進出の場合、生産拠点を作るような、大きな資本投下を必要としない点もポイントです。最初の店舗で成功しなければ多店舗展開を見合わせれば済みますので、リスクはあるものの限定的で、工場撤収の様な大きなリスクがありません。最悪は不採算店を閉める+α程度の損失で済むことも重要です(手続きなどは煩雑で手間は掛かります)。

2014年は中国進出に力を入れる企業と他国にシフトする企業が明確になる

そういう昨年の中国ビジネスでしたが、今年度についてどうかといえば、新たに中国進出する企業あるいは更に力を入れる企業と、シフトする企業が更に明確になる1年と考えます。勿論、昨年来からの流れは変わらず、コストダウンセンターからの市場転換が益々深化する一年となります。

中国側から見た場合には、例え不仲の日本であっても外資の投資はウエルカムですし、撤退については出来れば認めたくない所です。撤退により労働市場がなくなることで国民の不満が政府に向くのも避けたいですし、税収の問題もあります。特に昨今は地方税が国税に切り替わり、その再配分が上手く進んでいない状況ですから、特に地方政府から見た場合に、外資投資は期待したいところです。政治の方針として、あくまで経済的な結びつきは別次元の話という建前となります。

また、米国の金融緩和縮小についても、中国内には相当の影響があり、欧米諸国の投資が大きく期待できない面も踏まえ、日本の投資を跳ね除けるという状態にはありません。そういう状況も含めて考えた場合には、政治的な問題はリスクではありますが、暴力的なデモなどの形を取ることはまず無いと考えます。そういうことを許すことに中国政府としてメリットがありません。

また、日本側から見た場合については、総合的なリスクも鑑み、コストダウンセンターとしては他国展開も視野に入れるということであり、中国内販売分の製造については、更なるロボット化や中国内陸部へのシフトなども進む年になろうかと思います。

また、日本市場だけでは成長に限界があるのは明白であり、どこの市場で売るのかというのが重要であることは変わりがありません。どこで作り、どこで売るのか、そういう戦略を、中国だけでやってきた所であっても中国という枠を超えて、改めて別の視点から見直すタイミングとも言えます。

勿論、中国内で売る製品は中国内で作るという考え方もありますし、FTAなどを活用して他国で作り中国に入れてくるという考え方もあります。そういう意味で、今年は当に『アジア全体の事業構築の視点から中国戦略を見なおす1年』になるのではと思っています。

長年アジア全体を見てきた私の感覚としては、中国からの製造拠点シフトについては、今少し時間が掛かると考えます。理由は品質とコストのバランスの問題です。ベトナム辺りに行けば、賃金は実質まだ中国の半分程度で製造が可能ですが、他方、人材レベルや品質という面では相当にハンデがあります。インフラについてもまだまだ未整備な部分が多く、現在の中国レベルの工場にするためには相当な労力を必要とします。

あるいはインドネシアなどを見れば、度重なる最低賃金の急激な引上げで、既に中国に近いところまで人件費は上がってきており、コストダウンセンターという見方をした時には有望ではありません(逆に市場には多いにチャンスがあると考えます)、カンボジアやミャンマーなど、コストダウンセンターとして大きな可能性がある国々もたくさんあると思いますが、ここでも中国レベルまでもってゆくためには相当な労力が必要であることは変わりがありません。

そういう面から見ると、コストダウン機能についても、他国シフトと中国内シフトの両方が選択肢になりますし、あるいは日本での手法を取り入れた、極端な機械化による中国内製造の継続という選択肢もあり得ます。但し、ポイントはあくまで世界の工場ではなく中国内で売るための工場という位置づけ。そうすると中国内で市場が取れない企業にとっては、中国に投資し続けるというのはリスクに比べてハードルが高すぎるということになるのかも知れません。

また、日本的なサービスや壊れない製品、あるいは先進的な環境技術や安全な食品には多くのニーズがあります。物価上昇や賃金が上がったことにより、以前より品質は良いが価格が高すぎるという日本製品のネックも解消しやすくなってきました。何れにしても、市場確保が最重要であり、それにより生産体制や生産する国なども変わります。まさに市場を中心に動く一年になろうかと考えます。また、市場確保の際に、単純な価格競争で勝つのは相当に難しい話ですので、やはりいつも指摘させて頂くことですが、ブランディング戦略が重要になります。

何れにしても、グローバル市場での活躍を目指されている日系企業各社様にとって今年が素晴らしい一年になりますよう祈念いたしております。

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福田 完次

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