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時事 2014年10月28日

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【時事ニュースを斬る】香港「雨傘革命」の考察

堀 明則(Hopewill Group)

今、香港で起きていること

「香港で今何が起きているの?」
「危なくないの?」
という質問が多く寄せられますので、今回は弊社香港オフィスからのレポートをお届けします。

香港では報道の通り、歴史的なデモが行われています。

学生から始まったこのデモは10万人を超える規模に膨れ上がり、香港島の金鐘(アドミラルティ)、銅鑼灣(コーズウェイベイ)、九龍側の旺角(モンコック)の3箇所で市民による座り込みが継続されています。
このエリアでは一部道路が封鎖されていますので、バス、タクシー、トラムなどの交通機関は一部麻痺していますが、MTR(地下鉄)は通常通り運行していますので移動で困ることは特にありません。

危険性についても、一時はデモの鎮圧のため、警察が催涙弾を発射するなど力で抑え込もうとし怪我人もでましたが、市民はやり返すことなく、あくまで平和的に主張を続けています。
市民がやっていることは、路上に座り込んだり、歌を歌ったり、演説をしたりするだけで、警察と対峙する際も手をあげて警察に対し危害を加えないことをアピールしています。

弊社の香港人女性社員も休日はデモに参加しており「少し恐いけど学生時代の仲間と香港の未来について語り合っている」とのこと。ただ両親からは中国に対し状況を悪化させると、反対をされているそうです。

市民は、警察が駆使する催涙スプレーから身をまもるために、傘をかかげたり、ゴーグルをしたり、マスクをしたり、サランラップを顔にまいたりしており、みんなが傘をかかげることから、「雨傘革命」(アンブレラ・レボリューション)と呼ばれるようになりました。

このデモは何を主張しているかというと、多くの方がご承知のとおり「真の普通選挙」です。
「真の」とはどういうことかというと、遡ること2007年、香港のリーダーである行政長官は「普通選挙」によって選出されること、2017年から「普通選挙」を実施することが決定されました。
香港の民主を望んできた市民はこの決定を喜んだわけですが、つい最近、「立候補者は中国政府が指定した愛国者であること」が
条件として入れられたことが、香港の今の状況へとつながってゆきます。とても曖昧な条件ですが、要するに、市民に投票権を与えるが、自由な立候補の権利は与えられないということです。
これでは市民が本当に「選択」をしていることにはなりませんので、「真の」普通選挙とはおせじにも言うことはできません。

一国二制度の中で、国際的な都市をつくりあげた香港は、民主的な発展を望んでいます。
特に、今の学生たちというのは、中国的教育をあまり受けずに育ってきた世代であり、「中国人」ではなく「香港人」というアイデンティティを強くもっています。
デモの様子を見ても「香港人」のアイデンティティというのを感じることができます。
記憶に新しい中国の反日デモの光景は、市民が暴動を起こし、ものを壊し、盗み、人を傷つけ、散々たるものでした。
それに対し、デモの内容が違うにせよ、香港人はやられてもやり返さず、ものは壊さず、助け合い、座り込みをし仲間と香港の将来を真剣に議論し合う、そして道路をしっかり掃除をします。

このデモによる香港の経済的損害は大きく、レストラン、小売、ホテル、交通機関などデモのおこなわれている地域での損害は、1日当たり5,000万ドル(約7億円)とも報道されています。えらい迷惑だとこのデモに反対している人もいます。香港は中国の一部であり、中国に活かされていることは誰もが知っている事実であり、これからも不変であり、対立するようなことがあってはいけません。
しかし、香港が香港であるために声をあげ、勇気ある行動をする若者の正義も重要です。

今回の行動が、中国、香港の共同発展の一歩になることを願ってやみません。

香港「雨傘革命」(アンブレラ・レボリューション)考察

今回の抗議行動における収拾の悪さは何か?

まずはここが重要なポイントになろうかと思います。
この収拾の悪さ、これはつまり抗議行動における行動参加者に対峙する対象が、香港政府ではなく、実のところは中国政府であるという点にあると考えます。
メディアに報じられない物までいれると、日々500件以上発生しているといわれる中国本土でのデモや抗議行動。
中国政府からしてみると、一国二制度とは言いつつも、中国の一部である香港でおきた抗議行動は、日産数百件に及ぶ抗議行動の中のひとつという捕らえ方もできるわけです。
もちろん、世界のメディアの関心は中国本土における抗議行動の比ではなく、「香港民主主義の凋落の瀬戸際か」などという見方で大きなスポットライトを浴びるにいたっているわけです。

中国政府は、武力や警察などによる強制的処理には未だ走らず、事態を静観するという姿勢を継続しています。商売人の街「香港」で商売を営む経営者や商店主から、抗議活動を行う人たちへの不満が生まれ、香港内を二分する議論が生まれ、
この議論こそが事態収拾の引き金になってくれよと言わんばかりです。

さて、この度の抗議行動の顛末はいかがになると考えるか?

様々な意見はあると思いますが、私の私見は以下の通りです。

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歴史の一幕として記録はされるものの、
抗議行動者が望んだ「民主選挙」の実施が行われることはない。
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1997年に香港がイギリスより中国に返還された時点で、ある程度の中国化は避けられないことは予測できたわけで、むしろ中国の一部になった後も現在に至るまで、高度な自治能力と、高度な社会インフラを保持してきた香港は、本当に優秀であると捉えるべきではないかと考えます。

それよりも問題は、中国がここ10余年の中で、急速に「資本主義化」してきており、このスピードコントロールに、中国共産党が手を焼いているということではないでしょうか。
中国は共産党一党支配ですので、民主化することはないわけですが、資本主義化だけがいびつに広がっているということが、大変な中国内ストレスになっているわけです。

冷静に考え、このような状況の中において、中国政府が「香港の民主選挙」に耳を貸せば、それこそ今度は中国内におけるバランスが崩れ、より大きな騒動につながりかねないですね。

香港はレッセフェールと呼ばれる「自己責任型社会システム」を貫いてきました。今後もこのスタイルは保持されてゆくでしょう。このレッセフェールは、香港に「競争社会」というひとつのストレスを持ち込んだかもしれませんが、同時に類まれなる社会・経済自由度を作り上げてきました。

これこそが香港の魅力であり、今香港が世界経済の一員として注力すべきは、中国返還後におきた政治的中国化の部分よりも、
返還後も極めて高い自治が評価されてきた世界的ブランドをいかに守ってゆくかということではないかと考えるのです。
返還後も変わらず、返還前にあった香港の社会・経済的魅力が保持され、さらには益々磨きがかかることにより、世界中からのその存在価値を認めさせることこそが、メディアに取り上げられることなく粛々と進む「レボリューション」になるのではないかと考えるのです。

中国側からの視点でみれば、香港が持つジレンマ以上に、中国が抱える共産党求心の低下の問題のほうがかなり大きいはずです。
改革解放後の工業経済特区に始まり、現在の金融経済特区にまでいたる、中国内にある虫食い自由区から、染み出しのように広がる資本主義的活動、その活動から発生する「民主主義」あるいは「自己主義」的な発想が、「社会主義国家中国」の存在意義そのものを揺さぶる因子であるはずです。

皆さんは、どのようにお考えになられますか?

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堀 明則ほり あきのり

(Hopewill Group)

幅広い事業範囲を武器に

日本企業、個人に対し、香港・シンガポールをハブとした、『日本からア

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