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時事 2015年03月04日

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【ベトナムの真実】2015年のベトナムは…(続)

福森 哲也(株式会社リンクグローバルソリューション)

アセアンでは、2018年の域内関税の完全撤廃が、かなり現実的な目標になってきています。ベトナム・カンボジア・ラオス・ミャンマー以外の6ヶ国間では、既に関税撤廃(99%)が完了しています。『ベトナム他4ケ国でも関税が撤廃されると、モノの移動が更に活発化し、安価な労働力を武器にこの4ケ国にも恩恵が大きいはず』というような言い方がなされたりしています。

しかしながら、ベトナムにとってモノの移動の自由化は、本当に恩恵ばかりなのでしょうか? ベトナムの賃金水準は年々上昇を続けており、『既に管理職レベル以上では日本と比べても高水準にある』ことも指摘されています。2015年からの最低賃金は、最大で14.8%引き上げられ、2011年の倍になっています。安価な労働力を求めて域内分業(サプライチェーン)を検討する企業の目線で考えれば、カンボジアやミャンマー等とベトナムは違って見えるはずです。

サプライチェーンの肝の部分は工業国化で、ずっと先を行っているタイに置き、労働集約型の工程はベトナムよりは安価な(すぐに安価ではなくなるとは思いますが)カンボジア等に置く世界が、どんどん進んでいくような気がします。一時話題になった、“ジャパンパッシングならぬベトナムパッシング”が、静かに進展する可能性を感じざるを得ません。悪名高いベトナムの税関を改革・改善するよりも、タイとベトナム以外の周辺国間の通関手続きを簡素化・効率化する方がよっぽど現実的な気がしますし…。

ベトナムの(ベトナムに直接・間接に投資してきた外資にとっても)大誤算は、『2020年までに工業国化するという国家目標』が、遅々として進んでこなかったことです。2015年⇒2018年⇒2020年とモノの移動の自由化が進む中で、『タイと並ぶ陸のアセアンの工業国』として、背後に控えるカンボジア・ラオス・ミャンマーを後発国として活用して経済発展していくベトナムが、今、目の前にある筈だったのですが…。

周辺国、特にタイとの競争の視点の中で、育成すべき産業を見極めて重点的に国を挙げて支援し、外資を呼び込むことがこの10年間、全く出来てこなかったのが本当に痛いです。ベトナム版“失われた10年”と個人的には呼んでいます。
2014年のベトナムは、国会目標を上回る5.98%のGDP成長を達成し、為替や消費者物価指数の安定化にも成功しました。2015年は、ベトナム版“失われた10年”を取り戻すためのスタートの大事な年だと思います。

ただ、AECの進展、急激且つ予想外の原油安、着々と進められている中国の南下政策など、外部環境の荒波もどっと押し寄せてくる1年になります。『大メコン圏(GMS)+アジアインフラ投資銀行構想』などを積極的に仕掛ける中国と、南シナ海の領有権めぐり対立するベトナム。TPPも迷走をしており、頼みの米国は中東・テロで手一杯。タイ・シンガポール・マレーシアは、証券取引所の相互接続も開始し、AEC創設に歩調をあわせて株式市場の統合も進み始めています。国際市場として確固たる地位を築いているシンガポールと、アセアンの雄インドネシア、「大メコン圏証券取引所」を標榜し始めているタイ。ホーチミン・ハノイの証券取引所も大きな変革を求められるようになるはずです。

ベトナム版“失われた10年”を取り戻すため2015年が、ベトナムにとっても、ベトナムに関係する日本企業・日本人にとっても良い1年であることを心より願っています。3年続けさせていただいたこのコラムも今回で最終回です。この後は、CDIアジアビジネスユニットの小川プリンシパルに引き継ぎます。自ら手を挙げてCDIベトナムの立上げにホーチミンに来て、ベトナムだけではなく、タイ・インドネシア・マレーシア・シンガポール・ミャンマーなどのコンサルプロジェクトで活躍しています。多角的な、若者の視点も織り交ぜたコラムになるのではないかと思います。

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福森 哲也

(株式会社リンクグローバルソリューション)

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